SSSランクの女冒険者は、ちびっこに変化したドラゴンと共にたくさんの料理を堪能する旅に出る

下菊みこと

文字の大きさ
28 / 57

なす味噌

しおりを挟む
今日は強盗団の捕縛の依頼を受けた。随分と大きな組織らしい。一網打尽にするには骨が折れるからと、かなりの依頼料が発生するらしい。

私は依頼を受け、強盗団のアジトがある山全体に睡眠魔法をかける。他の人が居たらごめんなさい。かなりの魔力を使ったので魔力回復ポーションを飲み干す。その後風魔法で空を飛びアジトに潜入。また光魔法で山にいる強盗団の人間を一箇所に集めて拘束魔法で捉える。全員いるか人数を確認すると一人いない。光魔法で運ばれてこないということは、相当魔法が得意なんだろう。厄介だ。

アジトの奥から人が出てきた。手にはナイフ。でも、意外なことに彼は子供だった。そして、震えていた。

「…それを捨ててこちらへ来なさい。拘束はするけど、酷い扱いはしないわ。…依頼主がどう判断するかはわからないけど」

「…ぼ、僕は奴隷印を付けられているから、逆らえません。何かあればご主人様を守れと命じられています」

「貴方、魔法が得意なんでしょう?それでなんとかならないの?」

「奴隷印は永続魔法です。僕の力では無理です」

「でも、今も命令に抗っているんでしょう?」

「はい。だから、今のうちに逃げてください」

「奴隷印を見せて」

大人しく足裏の奴隷印を見せる少年に、光魔法を掛ける。奴隷印は私の魔力と引き換えに消えた。私は少年がどう出るかわからないから、魔力回復ポーションを速攻で飲み干した。

「…奴隷印が消えた?」

「ええ。ねえ、貴方。これで強盗団の人間は全員?」

「はい」

「貴方も拘束するけど良い?」

「…はい」

その後、風魔法で全員を運びつつ風魔法で下山した。

少年も含めて全員を依頼主に引き渡したが、その際に少年の奴隷印のことを伝えておいた。彼の罪が少しでも軽くなると良い。彼は毒気の抜かれたような表情で私に頭を下げて去っていった。彼は幸せになれるだろうか。

宿に戻ると、マジックボックスからなすを三本取り出して宿屋の主人に渡した。

「これでなす料理を作って欲しいの。お願い出来る?」

「もちろんいいぜぇ。任せな!」

「ありがとう。よろしくね」

「おうよー!」

宿の部屋で待つリオルは笑顔で出迎えてくれる。その笑顔に癒されて、一緒にベッドで二人並んでお昼寝してゆっくりと過ごして、駄菓子屋に行ったりのんびり買い物を済ませて宿に戻るとちょうど料理を作ってくれているところらしかった。宿の部屋で待っていると料理が運ばれてくる。

「お待たせしましたー!」

若い新入りっぽいお兄さんが料理を運んできてくれた。美味しそうななす味噌とライス、豆腐の味噌スープにお新香、焼き魚のセット。最高。

「ありがとう、そこのテーブルにお願い」

「はいよー」

お兄さんが下がると、リオルと一緒に手を合わせた。

「いただきます」

「いただきますなのじゃー!」

まずは焼き魚を一口。身が柔らかく大根おろしと醤油で食べると優しい味が口いっぱいに広がる。

「この魚、美味しいわね。大根おろしが良い仕事をしているわ」

「大根おろし、美味しいのじゃー!」

小骨を器用に避けつつ食べるリオル。器用ね。綺麗に魚を食べるから、感心する。私も器用に食べる方だと思うんだけど。

「なすも美味しいのじゃー!」

リオルの言葉になす味噌も食べてみる。美味しい。

「噛むとじゅわっと旨味が広がるわね」

「とろとろになっていて美味しいのじゃー!」

「お味噌が最高に合うわ」

「味噌スープとお新香も美味しいのじゃー!」

食器を下げにきたお兄さんにお礼を言うと嬉しそうに笑う。お兄さんも料理に参加したらしい。宿屋の主人は料理の腕が有名で、修行させてもらいつつ働いているとか。大変なのね。

翌日の朝、宿を出る際にお代を払うとご飯代は割高だったがその分宿代が安くとんとんだった。ご飯が有名なお店だもの、仕方がないわね。むしろ宿代が安すぎるし、良いお店だったわ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】花咲く手には、秘密がある 〜エルバの手と森の記憶〜

ソニエッタ
ファンタジー
森のはずれで花屋を営むオルガ。 草花を咲かせる不思議な力《エルバの手》を使い、今日ものんびり畑をたがやす。 そんな彼女のもとに、ある日突然やってきた帝国騎士団。 「皇子が呪いにかけられた。魔法が効かない」 は? それ、なんでウチに言いに来る? 天然で楽天的、敬語が使えない花屋の娘が、“咲かせる力”で事件を解決していく ―異世界・草花ファンタジー

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...