白百合は白百合でも、温室ではなく山で逞しく咲き誇るタイプです

下菊みこと

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白薔薇様の赤藤様イジメ

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白薔薇様に呼び出されて頬を叩かれてから一日。今日はどんなバトルが繰り広げられるかなとワクワクしながらもうお昼も過ぎて、私は趣味の読書に明け暮れる。

「ユリ様、なんだかんだで皇帝陛下と上手くいっているようでなによりです」

「え?なんで?」

「そりゃあ、ユリ様は白百合の妃なのですから…」

「そうじゃなくて。なんでラン様と上手くいってるって思ったの?」

「まあ!皇帝陛下を『ラン様』と呼ぶ事を許されているのですか?愛称で呼び合うなんて、やはり仲が良いのですね!よかった!」

「まあ、読み友だから…多少は仲が良いのかな?」

「…読み友?」

「ラン様に後宮物語を貸してるの」

「え!?」

「誤解のないように言っておくと、夜の営みはないよ?」

「…はー。そうですか」

あからさまに落胆するメアリー。ごめんね。

「それで?なんでそんな勘違いしてたの?」

「だって、皇帝陛下は赤薔薇様や白薔薇様、赤百合様の時でさえ最後までお部屋にとどまることはなく、比較的すぐに帰っていたそうですよ?それなのに我が主人の時は朝まで一緒で、朝食も一緒に取ったんですよ?期待するじゃないですか」

「あー…」

「しかも、白薔薇様に叩かれたことを気遣ってハンカチまで。洗う時にすごく緊張したんですから」

「そっかぁ…」

なるほどなるほど。白薔薇様が激昂するわけだ。

「後宮物語とか読んでる時も思ったけど、そういう話、どこから漏れるんだろうなぁ…」

「私じゃありませんよ!?」

「わかってるわかってる」

「まあ、おそらく他の使用人達でしょうね。壁に耳あり障子に目ありです」

「障子にメアリー?」

「目あり!です!」

「あはは!」

なんだかんだでメアリーと話している時が一番落ち着く。

「それにしても、白薔薇様に目を付けられたら大変ですから…誤解ならそうと仰った方がいいのでは?」

「いやぁ、他のお妃様方と違ってプラトニックな関係ですって自慢しているように聞こえたらそれこそ終わりジャーン」

「あー…」

メアリーは小さな頃から一緒にいたからたまに私と反応が似てる。

…と、メアリーと話しつつ読書していたらなにやら事件が起きた模様。

「きゃー!」

「なんてこと!」

なんだなんだと部屋の外に飛び出したら、ちょうど廊下で白薔薇様の使用人が壺を落として割っていて、赤藤様の使用人が顔を真っ青にしていた。あー、そういうパターン…。一緒にいた赤藤様も顔色が悪い。可哀想に。その後「どうしたの?…まあ!」とわざとらしく出てくる白薔薇様。やっぱり白薔薇様は後宮向きな方だ。…正直首を突っ込むのは面倒くさいけど、怖いもの見たさ半分、部屋から出てしまった以上見てないフリは出来ないのが半分。私は声をかける。

「どうしました?」
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