魔女が死にました

下菊みこと

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魔女リーナの素晴らしい日常

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リーナはお屋敷の仕事用のお部屋に移ります。その時、からん、からんとお屋敷のドアがベルを鳴らして開きます。

レンがお客様を案内してきます。今日のお客様は村人数人でした。

「こんにちは。今日はお薬かしら?」

「は、はい!いつものをよろしくお願いします、魔女様!」

村人数人のうち、若い男はみんなリーナの美しさに頬を染めます。そしてレンに睨まれてしゅんとします。

「しかし、魔女様が来てくれて本当に助かりました」

「あら、そう?」

「ええ、先代にこんな美しい…いやいや、こんなに素晴らしいお孫さんがいたとは知りませんでしたが、私達は先代に頼りきりでしたから」

「この村には医師もいませんからね」

レンはうんうんと頷いています。

「ああ、それは…たしかに、魔女がいないと不便ね」

「ええ。だからありがとうございます、魔女」

「どういたしまして。それを言うなら、私に魔女の知識を与えてくれたレンにも言ってあげて」

「ああ、本当に君には世話になってばかりだなぁ。ありがとう、レン君」

「俺は俺の仕事をするだけだ」

「ははは、相変わらずだな」

そうして、薬を渡すと村人数人は帰って行きました。レンは見送りに行った後、すぐにリーナの元に戻ってきます。

「またツケにしてやるのか」

「だって、あの人達お金がないのでしょう?仕方がないわ。それに、レンのおかげで必要なものはほとんど全て自分で作れるもの。お肉やお魚だって、あのおばあちゃんお手製の魔法の冷蔵庫があれば買わなくても済むし」

「本当にお人好しだな、お前たちは」

「ふふ。ええ、おばあちゃんの孫だもの」

「はぁ…まったく」
 
レンはリーナの頭を雑に撫でます。リーナは嫌がるそぶりは見せません。

「少しは自分のことを考えろ」

「考えているわよ、ただ優先していないだけ」

「リーナ」

「うふふ。だから、私の代わりにレンが私を優先してね?」

「…はぁ」

こうして今日のお仕事は終わりました。二人は夕食をとって、お風呂に入って、それぞれの部屋に戻って眠ります。

リーナはようやく、魔女としての日常に慣れてきました。元々才能があったのか、錬金術や魔法も得意です。国でもっとも優れた魔女になりました。あとはたまに来る不可思議な事件の依頼と、その突飛な解決方法にさえなれれば、本当の意味で完璧な魔女となることでしょう。レンにはそれが楽しみで、レンにはそれが生き甲斐になりつつあります。

さて、そんなこんなで今日も魔女リーナの素晴らしい日常は過ぎていきました。
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