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頑張っている番にご褒美

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数日間で読み書きが出来るようになったアナトールは、次は簡単な計算…足し算や引き算を覚えているらしい。まだまだ一の位でも暗算は難しいようだが、足す、引く。その概念は分かったようで、少しずつ覚えていっている。

頑張っているアナトールのために、何かご褒美をあげたい。しかし、ものを貢ぐだけでは面白みがない。心を込めた、何か。出来ることはないだろうか。

「…ということで、ジェローム先生。何か良い案はありませんか?」

「ふふ、本当に彼が大切なのですね」

「それはもう。愛おしくて愛おしくて、たまらないんです」

「そうですか。…私は人族なので、運命の番というものがよくわからないのですが。彼は、人族なのにエリアーヌ様と同じだけの熱量を感じますね」

「え?」

どういう意味だろうか。

「ラファエル先生から聞く限り、勉強への熱量も相当なもの。そして、エリアーヌ様への感情もかなりの熱量だと察せられます」

「そ、そうでしょうか!?」

う、嬉しい!

「ええ。勉強への熱量も、エリアーヌ様への熱量も。エリアーヌ様のそれに、負けないほど…あるいは、上回るほどかと」

「…っ!」

嬉しくて小躍りしてしまいそうなのをぐっと堪える。とても嬉しい。私のアナトールへの気持ちは、世界の誰にも負けないほど。でも、それと同じか上回るほどにアナトールが私を愛してくれているなんて…!

「ふふ、愛されていますね」

微笑ましそうなジェローム先生。ジェローム先生が先生で良かった!良かった!

「で、良い案とのことですが」

「は、はい!」

気持ちを一旦落ち着けて、先生の話を聞く。

「やはり、目に見えてわかる愛情表現がよろしいかと。彼の境遇を聞く限り、そういうものが彼には必要です」

「な、なるほど」

目に見えてわかる愛情表現。と言っても、私はいつも大好きとか愛しているとか口に出して言ってしまう。

「言葉にしてはいるんですが、それ以上に出来ることは…ハグとか、キスとか?」

「いえ、それより…頭を撫でて差し上げる、などの方が勉強を頑張っている彼へのご褒美としては適切でしょう」

「なるほど…!」

アナトールへの頭ナデナデ!私は嬉しいし、アナトールも嬉しいし、一石二鳥!

「ありがとうございます、ジェローム先生!とても良い案を考えていただけて、とっても助かりました!」

「ええ」

「いきなりこんなお悩み相談をしてすみません。今日も勉強をたくさん教えてください!よろしくお願いします!」

「はい、お悩み相談はいつでも承りますよ。では、授業を始めますね」

こうして私は、早速アナトールへのご褒美を用意することが出来た。
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