死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。

乞食

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貧民街編

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シャーリーが働く娼館は、貧民街の中でも、更に奥まった所に建てられている。だが、その建物は王都に建設されていてもおかしくないほど絢爛で、シャーリー曰く、この娼館は、娼館の中でも一等の、所謂高級娼館というやつらしい。
プリシラが子供たちを引き連れて娼館の扉をノックすると「早かったのねぇ~」と先ほどとは違う、薄い服に身を包んだシャーリーが現れた。子供達は開いた扉の隙間から中へと入り込み、「シャーリー姉ちゃん! お菓子どこ~?」と尋ねる。

「いつもの二階の部屋よ」
とシャーリーが微笑むと、子供達は我先にと階段を駆け上がった。

「今から仕事?」
プリシラがシャーリーのきらびやかな衣装を見て尋ねる。

「そうなのよぉ~、全くタイミング悪いんだからぁ~。」
シャーリーが頬を膨らませる。

「お茶とお菓子、冷めちゃうから先に食べてていいわよぉ。仕事が早く終わったら、私も行くわぁ。そうそう、多分部屋にやり手婆がいるかもしれないけど、気にすることないわぁ。貴女、あの人のお気に入りだから」
じゃあねぇ~、とシャーリーは手をひらひら振って奥の部屋に進んだ。
確かに、プリシラはやり手婆のお気に入りだ。プリシラが貧民街の美化や食生活に努めた結果、貧民街の治安や、健康状態が改善し、娼婦が死ぬことも少なくなり、客の程度も上がった。そのため、プリシラはやり手婆にいたく気に入れられていた。だが、それだけの理由ではない。プリシラは、街の人に自分は貴族だと言っていないが、やり手婆は多分気付いている。そのため、やり手婆は貴族であるプリシラから金を引き出そうと躍起になり、しきりに男娼や友人を紹介しろとせがむのだ。プリシラはやり手婆の金に貪欲な姿勢は嫌いではなかったが、いかにせんしつこすぎる。そういった経緯もあり、プリシラはやり手婆が少し苦手であった。


部屋に辿り着くと、子供達は既にお菓子を食べ終え、部屋にいる童女や他の娼婦たちと遊んでいた。もちろん、やり手婆もいる。

「あら~、久しぶりだね」
やり手婆が前歯のかけた口元でニヤリと笑う。
「……どうも」
プリシラは外行き用の笑みを浮かべて、自分に用意された分のお茶菓子に手を付けた。皿には茶色のプルプルしたものと、ふわふわとした茶色の生地に紫色の物体が挟まれている奇妙なお菓子だ。プリシラは食べ物は視覚から入る。そのため、プリシラはお菓子に興味を失い、手前に用意されたフォークでそれらを丁寧に切り分けた。プリシラがお菓子を等分している最中も、やり手婆は話しかけてくる。プリシラは、それらを軽くいなした。

「考えてくれたかね?」
「はぁ、何をですか?」
「前に言ったじゃないか。あんたも娼婦、やってみないかって」

(知らないとは言えど、公爵令嬢の私に娼婦の勧誘をするなんて、とんだ無礼者ね)
「……お金に困っていないので大丈夫です」
「まあ、そうとは言わず一度くらい考えてみてくれてもいいじゃないか」
「……シャーリーからも、この娼館は一等の物だと聞かされています。私になんてとても務まらないでしょう。それに、シャーリーや他の優秀な娼婦がいれば足りるのでは?」

シャーリーは娼婦の中でも一、二を争うほど人気だと聞いている。彼女がいる限り、この娼館も安泰だろう。

「まあ、確かにシャーリーも人気だけどねぇ。もっと人気の子がいたのよぉ……まあ、言い値でお貴族様に身請けされたんだけど」
「自分のせいじゃないですか」 

思わずじとっとした目でやり手婆を見る。

「でもあんたが娼婦になれば、あの子以上に人気になる」
私が保証するよ! と、息を巻いて言われ「そうですか」とプリシラは続く言葉を流し聞きする。
よし、切り分けられた。

プリシラは童女と娼婦を手招きする。ついでに貧民街の子供達も来たが「貴方たちはさっき食べたばかりでしょう」と手で除ける。

「人数分切り分けたから食べていいわよ」
プリシラは等分に切り分けられたお菓子を差し出す。
「いいんですか?」
娼婦と童女は困ったように顔を見合わせ、それから代表の一人がプリシラに語りかけた。

「お家でもう甘味を食べてきたの。だからほら、どうぞ」
遠慮はいらないわ、とプリシラがお菓子を突き出すようにして、ようやく彼女たちはお菓子に手を付けた。

「美味しい!」
童女がにぱっと笑った。
「そう、良かったわ」とプリシラが微笑むと、プリシラは自身の袖が引っ張られるのを感じ後ろを振り向いた。
「ねーちゃんのケチ!」
貧民街の子供だ。

(あんたはさっき食べたでしょう)
プリシラは怒りのあまり額に青筋を立てたが、流石にこの状況を見かねたやり手婆が、子供の頭をスパンと叩いてくれた。


 
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