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第一章 特別推薦入試編
第二十三話
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「”目的地周辺です。案内を終了します。ここまでの所要時間は一時間五十六分です。お疲れさまでした”」
「お、おう、有難う……?」
「”マニュアル通りに話しているだけなので気にしないでください”」
「それはそれで何か嫌だなっ!」
途中、突然崖が崩れたり、人工知能の指示通りに飛び降りた先に魔獣が寝ていて追いかけっこに発展するなど、肝の冷えるイベントもあったが何とか大きな怪我をせずにここまで来る事が出来た。
それにしてもこの人工知能、上げて落とすとは、なかなか人の心の動きを良くわかっている。
流石は麗華のつくった人工知能だ。
「流石……なんだけどさぁ」
出来るならその素晴らしい機能をもっと有効的に、いや、友好的に使ってもらいたいものである。
まぁ、それはそれとして。
「人工知能さんや、俺はこれからどうすればいい?」
「目の前のもの見たうえで本気で言っているんですか?」
「……」
はい、図星です。
ごめんなさい。
実は俺、今から俺が何をすればいいのかなんとなく分かっているのだ。
「この扉の中入れって事だよなぁ」
というのも、俺の目の前には、淡く輝く白い奇妙な扉があった。
奇妙、と言うのも、この扉は扉だけなのだ。
扉という物に本来付属しているべき建物が無い。
暗い森の中、ぽつりと存在する向こう側のない扉。
これを奇妙と呼ばずして何というのだろう。
「”わかっているならさっさと扉を開けばいいじゃないですか”」
「いや、そんな簡単に出来る事じゃないだろ……?ほら、心の準備とかさ……?」
俺がこんなにビビるのには理由がある。
さっきからこの扉を開こうと思うたびに『虫の知らせ』がうるさいほどに反応するのだ。
「”ビビるくらいだったらSランククエストなんて最初から受けなければよかったじゃないですか”」
「仕方ないだろ!?気になっちゃったんだから!」
「”……あなた、本当は人間じゃなくて犬かなにかなんじゃないですか?”」
「ちげぇよ!酷くね!?」
なんだよその質問!
感情と行動が直結してるのがそんなに駄目ですか!?えぇ!?
「ふぅ……」
俺は気持ちのリセットの為一度深呼吸をした。
感情のコントロールは得意なのだ。
「まぁでも、いつまでもここでびくびく震えてても埒が明かないか」
「”そうです、速くしないと■■■■■■■■■■■■■■■■■?”」
「今なんて?」
人工知能の発する音声が話の途中で突然砂嵐に変わった。
「どうしたんだ?おい、まさか壊れたか?」
「”いえ、壊れてはいません。私は脆弱なあなたの脳みそとは違い、とても頑丈ですから”」
「……今の暴言はスルーしてやるから一つ目の質問だけに答えてくれ、簡潔に」
俺が人工知能に対して問うと、人工知能は一瞬の逡巡の後に答えた。
「どうやら今の私の言葉は禁止ワードだったようです」
「禁止ワード?」
「はい、試験の内容に抵触する発言等、試験の進行、並びに学園長の嗜好に反する発言は禁止ワードとして今のように制限されてしまうようです」
試験の進行と学園長の嗜好を並列に考えるという点は理解できないが、まぁ意味はわかった。
「ちなみに、今の発言は何に抵触したんだ?」
「”おそらくそれも教えられないと思いますけど”」
「えー」
まぁでも、さっきの人工知能の発言で、速く進まないと俺が何かしら不利になるという事は解った。
「迷ってる時間は無い、か」
「”そういう事です”」
さて。
「すぅ……」
再度大きく息を吸って目を瞑り。
「ふぅ……」
吸い込んだ空気を吐き出すと同時に目を開き、扉のドアノブに手を掛ける。
「開けるぞ……」
「”はよ”」
もはや敬語ですらない返答をスルーして、俺は未知の扉を開いた。
――瞬間。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「は、え、ちょまっ、ブベラベッ!」
女の悲鳴、頬に肘鉄、顎に衝撃。
乱れた銀色の長髪を目の端に捉えつつ、俺は意識を失った。
「お、おう、有難う……?」
「”マニュアル通りに話しているだけなので気にしないでください”」
「それはそれで何か嫌だなっ!」
途中、突然崖が崩れたり、人工知能の指示通りに飛び降りた先に魔獣が寝ていて追いかけっこに発展するなど、肝の冷えるイベントもあったが何とか大きな怪我をせずにここまで来る事が出来た。
それにしてもこの人工知能、上げて落とすとは、なかなか人の心の動きを良くわかっている。
流石は麗華のつくった人工知能だ。
「流石……なんだけどさぁ」
出来るならその素晴らしい機能をもっと有効的に、いや、友好的に使ってもらいたいものである。
まぁ、それはそれとして。
「人工知能さんや、俺はこれからどうすればいい?」
「目の前のもの見たうえで本気で言っているんですか?」
「……」
はい、図星です。
ごめんなさい。
実は俺、今から俺が何をすればいいのかなんとなく分かっているのだ。
「この扉の中入れって事だよなぁ」
というのも、俺の目の前には、淡く輝く白い奇妙な扉があった。
奇妙、と言うのも、この扉は扉だけなのだ。
扉という物に本来付属しているべき建物が無い。
暗い森の中、ぽつりと存在する向こう側のない扉。
これを奇妙と呼ばずして何というのだろう。
「”わかっているならさっさと扉を開けばいいじゃないですか”」
「いや、そんな簡単に出来る事じゃないだろ……?ほら、心の準備とかさ……?」
俺がこんなにビビるのには理由がある。
さっきからこの扉を開こうと思うたびに『虫の知らせ』がうるさいほどに反応するのだ。
「”ビビるくらいだったらSランククエストなんて最初から受けなければよかったじゃないですか”」
「仕方ないだろ!?気になっちゃったんだから!」
「”……あなた、本当は人間じゃなくて犬かなにかなんじゃないですか?”」
「ちげぇよ!酷くね!?」
なんだよその質問!
感情と行動が直結してるのがそんなに駄目ですか!?えぇ!?
「ふぅ……」
俺は気持ちのリセットの為一度深呼吸をした。
感情のコントロールは得意なのだ。
「まぁでも、いつまでもここでびくびく震えてても埒が明かないか」
「”そうです、速くしないと■■■■■■■■■■■■■■■■■?”」
「今なんて?」
人工知能の発する音声が話の途中で突然砂嵐に変わった。
「どうしたんだ?おい、まさか壊れたか?」
「”いえ、壊れてはいません。私は脆弱なあなたの脳みそとは違い、とても頑丈ですから”」
「……今の暴言はスルーしてやるから一つ目の質問だけに答えてくれ、簡潔に」
俺が人工知能に対して問うと、人工知能は一瞬の逡巡の後に答えた。
「どうやら今の私の言葉は禁止ワードだったようです」
「禁止ワード?」
「はい、試験の内容に抵触する発言等、試験の進行、並びに学園長の嗜好に反する発言は禁止ワードとして今のように制限されてしまうようです」
試験の進行と学園長の嗜好を並列に考えるという点は理解できないが、まぁ意味はわかった。
「ちなみに、今の発言は何に抵触したんだ?」
「”おそらくそれも教えられないと思いますけど”」
「えー」
まぁでも、さっきの人工知能の発言で、速く進まないと俺が何かしら不利になるという事は解った。
「迷ってる時間は無い、か」
「”そういう事です”」
さて。
「すぅ……」
再度大きく息を吸って目を瞑り。
「ふぅ……」
吸い込んだ空気を吐き出すと同時に目を開き、扉のドアノブに手を掛ける。
「開けるぞ……」
「”はよ”」
もはや敬語ですらない返答をスルーして、俺は未知の扉を開いた。
――瞬間。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「は、え、ちょまっ、ブベラベッ!」
女の悲鳴、頬に肘鉄、顎に衝撃。
乱れた銀色の長髪を目の端に捉えつつ、俺は意識を失った。
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