複数異能持ちとか言われてるらしいけど俺の異能は『不幸』だけ~世界一不幸な男は沢山の異(常な)能(力)を持っているようです~

落胆

文字の大きさ
24 / 26
第一章 特別推薦入試編

第二十四話

しおりを挟む
 「うぅ……」

 「あら、ようやく気が付いたのね、黒幕野郎」

 意識を取り戻すと、心底面倒くさいという様子の、何処か聞き覚えのある女の声が耳に入ってきた。
 そして、俺の事を黒幕野郎などと呼ぶ奴を、俺は一人しか知らない。

 「エセ名探偵……」

 「どうやらもう一回気絶したいようね……」

 「ちょっと待て、すてーいすてーい」

 俺は射殺さんばかりの視線で見下ろしてくるエセ名探偵ことシャーロット・テイラーを制止する。
 ……ってちょっと待て?
 シャーロットが?
 そう言えば、ここはベッドどころか建造物のけの字すら感じない筈の島なのに、俺の頭を包むこの柔らかい感触は何だ?
 
 「ねぇ、目が覚めたのならさっさと起き上がってくれないかしら……」

 シャーロットの言葉を聞いたその瞬間、俺の思考は完全に停止した。
 そして一秒以内に脳を再稼働させて言葉をはじき出した。

 「ごちそうさまでした」

 「……ふんっ!」

 パァン!

 魔獣島の夜の空に乾いた音が響いた。
 ほっぺ痛い……。
 

 *


 俺はジンジンと疼く頬の痛みを感じながら、先ほどからずっとムスッとした顔のシャーロットと向かい合っていた。

 「……で、お前はあそこで何してたわけ?」

 「……あなたと同じよ、Sランククエスト、『魔獣島迷宮を攻略せよ』を受注したの……結果はあのざまだけどね」

 ムスッとした顔を更に顰めて言うシャーロット。
 あのざまってのは俺が気絶した原因となったあれの事か。
 まぁあの事案についてはあの柔らかい太ももに免じて許してやろう。
 俺の心の広さ海の如し。
 てか俺が受注したクエスト、『魔獣島迷宮を攻略せよ』って言うのか、初めて知った。
 
 「でも、寄りにもよってあなたなんかとかち合う事になるとはね。全く、運が無いわ……」

 「え、そこまで言う?」

 「あなた、別れ際にあんな礼儀もへったくれも無いような言葉を吐かれたら、いくら寛大な心を持つ私でも、多少口が悪くなってしまうのは当然の事でしょう?」

 「多少……まぁでも……」

 多少、程度では収まらない口の悪さだが、言わんとしている事は解る。
 思えば、触れられたくない事に触れられたからと言ってあんなに突き放すような話し方をしたのは流石に拙かったか。
 シャーロットは理由は歪でも、態々俺に会いに来てくれたわけだし、あの態度は悪かったかもしれない。
 だが、シャーロットには一つ不審な点がある。
 何故俺が学園島を受験する事を知っていたのかだ。
 間違いなく何らかの異能の力によるものだろう。
 そして、そこまでして成し遂げたい目的とは何なのか。
 それが分からない限り、俺はシャーロットを信用することは出来ないし、ましてや秘密にしたいことを話そうとは思わない。
 なので、流石にシャーロットの問いに答えるつもりは無いが、ここは一度、素直に謝っておこう。
 俺はシャーロットの目を見る。

 「あれに関しては本当にすまなかった」

 俺が頭を下げて言うと、シャーロットは「ふんっ」とそっぽを向いた後、ジト目で俺の方を流し見た。

 「……私の問いに対して答える気は……無いようね」

 「ああ、それは、すまん、言いたくない」

 俺が再度のシャーロットの質問に対して答えると、シャーロットは自分の長い髪を呻きながらわしゃわしゃと搔き乱しはじめた。

 「お、おい、どうしたんだ……?大丈夫か……?」
 
 「うぅー!あぁ!もう!そんなに知られたくないことなら普通にそう言いなさいよ!別にあの質問は……その、なんていうか……最後の疑問を解決して!自分に自分の間違いを認めさせるためだけの質問だったんだから別に教えてくれないなら教えてくれないでそれでよかったのに!」

 沢山の魔獣が住む森にも関わらず顔を真っ赤にして叫ぶシャーロット。
 え、なに、つまりあの質問に答えるか答えないかは大した問題では無かったという事、なのか?
 じゃあシャーロットが俺に会いに来た目的って言うのは何なんだ?

 「じゃあ、お前は一体何の用事があって俺を探していたんだ?」

 俺は戸惑いつつ聞き返す。

 「えっと、私も順序を間違ったって言うか、その、あの、えと……」

 「おーい、大丈夫かー?」

 何をてんぱっているのだか分からないが、何かを言いたいらしいと察した俺は声をかけてみる。
 すると、シャーロットは何かを小声で喋った。

 「……な……い」

 「なんて?」

 声が小さすぎて聞越えなかったため聞き返すと、シャーロットは意を決したように息を深く吸い込んで言った。

 「だから……冤罪を掛けてごめんなさいって、言いたかったの!」

 「え」

 「あなたの冤罪が証明されたって聞いた後、自分の推理が間違っていると認められなかった私は、私の持つ全ての力であなたをクロだと証明しようとしたわ!そのために、あなたが関わったらしき事件、容疑を掛けられた事件、全て調べた!何故か情報が隠匿されていたけど、徹底的にやった……でも、どの事件を調べてもあなたを黒だと証明する証拠は一つも見つからなかった。だから認める事にしたの、あなたはシロだって……って、何よその顔」

 呆然としていると、赤い顔のままむすっとした表情をしたシャーロットがキッと睨んでいる。
 ただ、その目には普段のような鋭さは無い。
 どちらかと言うと不安やら申し訳なさと言った感情がありありと浮かんでいた。
 これは一体どういう事だ?
 つまりシャーロットは俺に冤罪を掛けた事を謝罪する為に俺に会いに来たという事なのか?

 「ぶわははははっははっはははははは!」

 「ちょっ、なんで笑うのよ!私が謝りに来たって言うのがそんなにおかしいっていうの!?」

 「いやすまん!ちょっと自分の馬鹿さ加減に笑えてきてな!そうか!謝りに来ただけか!そうだよな!当たり前の事だよな!はははっ!笑いが止まらねえ!」

 「もうっ!笑わないでよ!」

 そう、すこし考えてみれば何も不思議な事は無かった。

 「それで、どうなのよ……」

 もじもじしながら訪ねるシャーロット。
 悪い事をした、だから謝りに来てくれた。
 謝りに来てくれた子が、ちょっとプライドが高くて、素直じゃないだけで、何らおかしい事なんてなかったのだ。
 疑うべきところなんて、何もない。
 なら、俺がすべきは少なくとも疑う事などでは無い。
 
 「気にしてねーよ」

 俺がそう言うと、シャーロットは安心したようにホッと息をついたように見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

学生学園長の悪役貴族に転生したので破滅フラグ回避がてらに好き勝手に学校を魔改造にしまくったら生徒たちから好かれまくった

竜頭蛇
ファンタジー
俺はある日、何の予兆もなくゲームの悪役貴族──マウント・ボンボンに転生した。 やがて主人公に成敗されて死ぬ破滅エンドになることを思い出した俺は破滅を避けるために自分の学園長兼学生という立場をフル活用することを決意する。 それからやりたい放題しつつ、主人公のヘイトを避けているといつ間にかヒロインと学生たちからの好感度が上がり、グレートティーチャーと化していた。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...