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8話
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いよいよ挙兵へ向けての最後の段取りである。
領袖達は慌しく同志宅を行き来し、または斥候へ繰り出すものもあり。彼らに残された時間は残りわずかとなって、今より先は斃れるまで戦うべく戦場と相成る。
高津は種田少将宅など打つべく相手をよく知り、地形家屋の造りなどから打ちもらさぬ様にと向かい家の塀へ縋ってよく眼を凝らし辺りを窺っている。
「さて、どうしてくれようか・・・」
彼は任された大任を身命に代えても果たさんと意気込んでいた。
同じく高島中佐襲撃を請け負ったと聞く石原運四郎は何処にあったか。彼は秋月など様々な方面へ同志を回り、最後の打ち合わせに入っている。
敬神党の一挙に連動する一手は欠かせぬものとして、首魁太田黒らより厳命を受けての事であった。
着々と人士が打ち揃い、それぞれに会合成す場所へと集う時、既に日が暮れかかっていた。太田黒、斎藤両名他89名、首魁が姉・瀧子の嫁ぎ先である橋田家へ集結。食膳を共にし、集結場である愛敬宅(現熊本護国神社付近)へ向かう。上野、富永らは同志・鶴田伍一郎邸で食を摂って後、愛敬宅へ。他、石原、加屋、高津もまた、それぞれ加藤社や同志宅より愛敬宅を目指すのである。愛敬宅にて一党打ち揃うと、杯交わし、いよいよ皆兼ねてより整えておいた「勝」と書かれた章を肩口に結びつけ、大刀をしっかり差し立ち上がる。
太田黒は平服を纏い、その背に軍神八幡宮の御霊代を負うて将帥たる証とした。加屋もまた、平服のまま神前に供える白旗を取って襷十時に綾どり、事に臨んだのである。
皆個々に羽織袴に草鞋、具足のみ纏う、烏帽子直垂を纏い襷十字に甲斐甲斐しく打立てるなど様々な様相であるが、大小帯刀または薙刀槍を携えて集まる者はあれど、その中に銃器を構えている者は一人として在らぬ。まさに日本武士の戦いである。
暫くして、彼らはいざ宣戦を神前に唱えるべく藤崎宮(現・護国神社)へ向かいそこから各隊配置を伝達するのである。(細かな記名は省略する)
「第一隊は種田少将襲撃とし、これを高津、桜井以下6名とする」
「第二隊は高島中佐襲撃とし、これを石原、木庭以下5名とする」
「第三隊は与倉中佐襲撃とし、これを中垣、斎藤(熊次郎)以下8名とする」
「第四隊は安岡県令襲撃とし、これを吉村、沼澤以下5名とする」
「第五隊は太田黒議長襲撃とし、これを浦、吉永以下6名とする」
副帥・加屋は淡々と通達し、襲撃隊配置を報告するのみである。
「さて・・・それでは、城内本拠地への討入じゃが・・・」
城内は鎮台の本拠地であり、堅固な熊本城敷地内には小銃など打ち揃う近代兵器を装備した鎮西の兵が三千余・・・それ以上の数待ち受けている。同志達は緊張した面持ちでただ彼の声を聞いていた。
「まず、熊本城大砲営制圧は太田黒と不肖加屋をはじめとして、上野斎藤両先生、阿部等幹部を含め70余名の本隊とする。」
「次いで、同城内砲兵営制圧は富永、福岡、愛敬以下同じく70名で本隊別働隊とする。」
「・・・・以上が大まかな配置である。各人部隊長によく従って見事戦って頂きたい。」
加屋はそう言葉を締めくくると、太田黒をチラリと見る。
彼の言い終えるのを確認して頷くと、太田黒は同志を前に大きく宣誓する。
「我等は神兵ぞ!これより先は神のみぞ知る。皆一身を献げ奮戦すべし。」
一党が神がかりの決起はこれよりはじまるのである・・・・・・・。
領袖達は慌しく同志宅を行き来し、または斥候へ繰り出すものもあり。彼らに残された時間は残りわずかとなって、今より先は斃れるまで戦うべく戦場と相成る。
高津は種田少将宅など打つべく相手をよく知り、地形家屋の造りなどから打ちもらさぬ様にと向かい家の塀へ縋ってよく眼を凝らし辺りを窺っている。
「さて、どうしてくれようか・・・」
彼は任された大任を身命に代えても果たさんと意気込んでいた。
同じく高島中佐襲撃を請け負ったと聞く石原運四郎は何処にあったか。彼は秋月など様々な方面へ同志を回り、最後の打ち合わせに入っている。
敬神党の一挙に連動する一手は欠かせぬものとして、首魁太田黒らより厳命を受けての事であった。
着々と人士が打ち揃い、それぞれに会合成す場所へと集う時、既に日が暮れかかっていた。太田黒、斎藤両名他89名、首魁が姉・瀧子の嫁ぎ先である橋田家へ集結。食膳を共にし、集結場である愛敬宅(現熊本護国神社付近)へ向かう。上野、富永らは同志・鶴田伍一郎邸で食を摂って後、愛敬宅へ。他、石原、加屋、高津もまた、それぞれ加藤社や同志宅より愛敬宅を目指すのである。愛敬宅にて一党打ち揃うと、杯交わし、いよいよ皆兼ねてより整えておいた「勝」と書かれた章を肩口に結びつけ、大刀をしっかり差し立ち上がる。
太田黒は平服を纏い、その背に軍神八幡宮の御霊代を負うて将帥たる証とした。加屋もまた、平服のまま神前に供える白旗を取って襷十時に綾どり、事に臨んだのである。
皆個々に羽織袴に草鞋、具足のみ纏う、烏帽子直垂を纏い襷十字に甲斐甲斐しく打立てるなど様々な様相であるが、大小帯刀または薙刀槍を携えて集まる者はあれど、その中に銃器を構えている者は一人として在らぬ。まさに日本武士の戦いである。
暫くして、彼らはいざ宣戦を神前に唱えるべく藤崎宮(現・護国神社)へ向かいそこから各隊配置を伝達するのである。(細かな記名は省略する)
「第一隊は種田少将襲撃とし、これを高津、桜井以下6名とする」
「第二隊は高島中佐襲撃とし、これを石原、木庭以下5名とする」
「第三隊は与倉中佐襲撃とし、これを中垣、斎藤(熊次郎)以下8名とする」
「第四隊は安岡県令襲撃とし、これを吉村、沼澤以下5名とする」
「第五隊は太田黒議長襲撃とし、これを浦、吉永以下6名とする」
副帥・加屋は淡々と通達し、襲撃隊配置を報告するのみである。
「さて・・・それでは、城内本拠地への討入じゃが・・・」
城内は鎮台の本拠地であり、堅固な熊本城敷地内には小銃など打ち揃う近代兵器を装備した鎮西の兵が三千余・・・それ以上の数待ち受けている。同志達は緊張した面持ちでただ彼の声を聞いていた。
「まず、熊本城大砲営制圧は太田黒と不肖加屋をはじめとして、上野斎藤両先生、阿部等幹部を含め70余名の本隊とする。」
「次いで、同城内砲兵営制圧は富永、福岡、愛敬以下同じく70名で本隊別働隊とする。」
「・・・・以上が大まかな配置である。各人部隊長によく従って見事戦って頂きたい。」
加屋はそう言葉を締めくくると、太田黒をチラリと見る。
彼の言い終えるのを確認して頷くと、太田黒は同志を前に大きく宣誓する。
「我等は神兵ぞ!これより先は神のみぞ知る。皆一身を献げ奮戦すべし。」
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