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各隊勇んで出陣と相成るや、藤崎の宮は少しずつだが元の静けさを取り戻しつつあった。先ほどまでの志士らの熱気が嘘のように、冷たく強い風が吹き荒れている。
「新開、我々もあと少ししたら出陣しましょう」
本隊二陣を指揮する富永守国である。彼は参謀としての能力を以って第二部隊長たる地位に望まれた。そんな彼だが不幸にも体調思わしくなく、この寒さからか風邪を患っていた。
「うん、そうだな。彼らが市中へ到着するという頃合を見計らってこちらも別々に打って出よう。」
「種田、高島らに逃げでもされては厄介ですからね」
太田黒、加屋両帥は共に中軍として参じ、大砲を要する陣営への斬り込み決行部隊を率いるものである。歩兵営同じく、厳しい前線指揮官としてやや緊張の色もにじみ出ていた。
「あとは、高津や石原らがうまくやってくれれば良い事。我々も遅れを取らぬ様頑張らねばなりませんな」
後ろから、一党の長老格であり皆が敬慕する上野、斎藤両氏が近寄ってくる。皆その声を聞き、そして先に出陣した彼らの姿を追い城下へと視線を向けたのである。
一方、高津隊は足早に、暗い路地を目標へ向かって駆けていた。 種田少将はかなりの手達。万が一、彼の抵抗にあって仕損じれば全てが水泡と帰す。
そうなれば、自分たちだけではない・・・石原ら襲撃部隊や、敵本陣と対峙する本隊の同志が窮地にやられる事は必死。高津は自らの刀を握り締め、我が一刀に己が全てを賭けて本願成就に望まんと気持ちを新たに進軍を進めたのである・・・。
高津、桜井以下、少数の襲撃隊はいよいよ種田邸を確認。彼らは互いに無言のまま視線を交わすと、柄に手を添え高津の指示通りに動き、静かに塀や柵を越え邸内侵入を図る。
燭を頼りに種田少将の寝所を捜索すれば、一つ小さな蝋燭の明かりが浮かび上がる。
間違いない、標的を見つけたりと、一隊は足を忍びながらゆっくりと寝所の明かりを目指した。
四方に散り、気配を殺すと静寂の中に種田少将と彼が東京より請け連れてきた愛人小勝の微かな寝息だけが聞こえている。全体を見るとなんとも闇の儀式が如く薄気味悪い印象すらある。
「国賊起きよ!」
高津は怒声を発しながら寝所へ乱入しその頭部目掛けて刃を振り下ろした。
その声に微かな気配に種田は瞬時に枕もとの刀を取って受け流すと、飛び起きて応戦の構えをとる。
数合程、種田の応戦あって、負傷者を幾人か出しながらそれでも高津らは引く事なく戦い数回目にして漸く疲れを見せた彼に、隊士であった桜井が一刀を振り切り苦戦の後に首級を取るに至る。
ほんの僅かな時間だが、彼ら一隊には長く厳しいものであった。横で小勝は怯えた眼を動かぬ主人から話す事も出来ず、ただ高津ら一隊の去るのを見送る他無かったのである・・・・・・。
種田邸から素早く退去して後、高津隊は同じく、高島中佐襲撃を請けた石原隊と合流し彼らと共に行動する事となる。
「援護ありがたい、いち早く始末をつけ本隊の方へ合流しよう」
石原運四郎は示現流の達人であるが、少人数部隊であったが為、高津らの協力を有難く受け共に目標へと走って向かった。
その時、熊本城から大きな爆音と共に、赤い火の手があがったのである・・・・・・
「新開、我々もあと少ししたら出陣しましょう」
本隊二陣を指揮する富永守国である。彼は参謀としての能力を以って第二部隊長たる地位に望まれた。そんな彼だが不幸にも体調思わしくなく、この寒さからか風邪を患っていた。
「うん、そうだな。彼らが市中へ到着するという頃合を見計らってこちらも別々に打って出よう。」
「種田、高島らに逃げでもされては厄介ですからね」
太田黒、加屋両帥は共に中軍として参じ、大砲を要する陣営への斬り込み決行部隊を率いるものである。歩兵営同じく、厳しい前線指揮官としてやや緊張の色もにじみ出ていた。
「あとは、高津や石原らがうまくやってくれれば良い事。我々も遅れを取らぬ様頑張らねばなりませんな」
後ろから、一党の長老格であり皆が敬慕する上野、斎藤両氏が近寄ってくる。皆その声を聞き、そして先に出陣した彼らの姿を追い城下へと視線を向けたのである。
一方、高津隊は足早に、暗い路地を目標へ向かって駆けていた。 種田少将はかなりの手達。万が一、彼の抵抗にあって仕損じれば全てが水泡と帰す。
そうなれば、自分たちだけではない・・・石原ら襲撃部隊や、敵本陣と対峙する本隊の同志が窮地にやられる事は必死。高津は自らの刀を握り締め、我が一刀に己が全てを賭けて本願成就に望まんと気持ちを新たに進軍を進めたのである・・・。
高津、桜井以下、少数の襲撃隊はいよいよ種田邸を確認。彼らは互いに無言のまま視線を交わすと、柄に手を添え高津の指示通りに動き、静かに塀や柵を越え邸内侵入を図る。
燭を頼りに種田少将の寝所を捜索すれば、一つ小さな蝋燭の明かりが浮かび上がる。
間違いない、標的を見つけたりと、一隊は足を忍びながらゆっくりと寝所の明かりを目指した。
四方に散り、気配を殺すと静寂の中に種田少将と彼が東京より請け連れてきた愛人小勝の微かな寝息だけが聞こえている。全体を見るとなんとも闇の儀式が如く薄気味悪い印象すらある。
「国賊起きよ!」
高津は怒声を発しながら寝所へ乱入しその頭部目掛けて刃を振り下ろした。
その声に微かな気配に種田は瞬時に枕もとの刀を取って受け流すと、飛び起きて応戦の構えをとる。
数合程、種田の応戦あって、負傷者を幾人か出しながらそれでも高津らは引く事なく戦い数回目にして漸く疲れを見せた彼に、隊士であった桜井が一刀を振り切り苦戦の後に首級を取るに至る。
ほんの僅かな時間だが、彼ら一隊には長く厳しいものであった。横で小勝は怯えた眼を動かぬ主人から話す事も出来ず、ただ高津ら一隊の去るのを見送る他無かったのである・・・・・・。
種田邸から素早く退去して後、高津隊は同じく、高島中佐襲撃を請けた石原隊と合流し彼らと共に行動する事となる。
「援護ありがたい、いち早く始末をつけ本隊の方へ合流しよう」
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