日常を返品してもらえませんか?

夏目きょん

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一章:22時10分更新

第10話:明かされるあの時・・

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「う…う。ん…。ここ…は?」

目が覚めるとミクが椅子に腰をかけて眠っていた。
おそらく、あの時からずっと寝ずに看病をしていたのだろう。
そう思うと、なんとも言えない罪悪感、に襲われた。

「ん、ん。あ!ひ、陽向!?め、目が覚めたの!?ぐ、具合は大丈夫?!」

陽向が起きると、その音でミクが起きた。

「出会った時と変わらないね、君は。」

陽向は複雑な感情に襲われ
自然と涙が眼に浮かぶ。

「な、なんで泣いてるの!?」

「君が優しすぎるからだよ。」

満面の笑みで言う。

しかし

眼には涙が浮かぶ。
そんな不思議な光景。

「え、え?!ど、どーゆーこと!?」

「なんでもないよ」

そんな言葉は照れ隠し。
できれば一回で伝わってほしい。
そう陽向は心の底から願う。

「お!陽向!目が覚めたか!ごめんな。俺、お前に無理させちゃって…。」

敬太が帰って来た。
敬太は陽向が目を覚ましたことにとても喜んでいる。

「いやいや、俺、努力家だからさ!それで俺無理しちゃっただけ!気にするな!」

陽向は涙を拭い、下手くそながら嘘をついた。
 
「おう。ありがとうな。話は変わるが、今日は最終日だ。つまり今日はお前に魔法マジックを覚えてもらう!その為に今日は知人を連れて来た。入って来て下さい。」

ドアに敬太が手をかける。
陽向は警戒していた反面ワクワクしていた。

しかし

その気持ちは次の瞬間、打ち砕かれる。

「よう!久しぶりだな」

そこにいたのは、紛れもなくあの人だった。

「なんで、お前が…。」

そこにいたのは、全身黒色で深く帽子を被った男だった。
男は、帽子を脱ぐ。

「お前とは失礼だな、これからお前の師匠になるんだぞ?」

初めて会った時とは明らかに違う。

「、、、」

陽向は男のギャップに驚きを隠せない様子。

「なんで黙り込んでんだ?」

「いや、前に会った時こんなテンションじゃなかったよなぁーと思って…。」

今の気持ちを率直に伝えてみた。

すると

考えもしなかった答えが返ってくる。

「あぁ~それはあれだ。なんだぁ。あれ。ギャップ萌えってやつだ」

陽向は正直、意味がわからなかった。
あの時
恐怖でしかなかった男が、
シャレを言っているのだから。

「うん。全く萌えなかったけど、なんか俺とまた会うって思ってたような言い方だけど、なんでまた会うって思ったの?」

陽向はさりげなく男の正体を探る。
何者なのか。それが知りたい一心だった。

「まず、敬語な。そこ大事だから。また会うと思ったのはあれだ。お前のこと現実からこっちに連れて来たろ?その時お前動けたろ?あれはお前が俺と同じ、透明魔法クリアマジックだから動けたんだ。だからいずれ魔法マジック覚えることになったら俺に頼るだろうなぁっていうアレだ。」

あの時
動けたのはそのおかげだったのか。そんな事を思い出しながら陽向は納得していた。

「なるほど…確かにそうなら今までの辻褄があう。それはそうと細かいやつだなぁ……です」

陽向はタメ口で言ってしまったが、先ほどのやり取りを思い出し、最後に慌てて『です』を付ける。

「おし、その調子で敬語使えよ!」

馬鹿なのかふざけているだけなのかは
陽向にはわからない。

「お前、ですとかます付ければなんでも満足かよ」

「敬語を使え」

「めんどくせぇ……です」

「ま、それはそうと魔法マジックを教えるぞ。部屋じゃアレだから外に出るぞ!」

陽向は少し、この男に慣れ、悪ふざけをしてみた。

しかし

軽く流されてしまう。

「あ、うん。はい。敬太、ミク、今までありがとうね!2人のおかげで今日、魔法を習得することができる…!感謝だよ!」

言葉では伝え切れない様な、有り難さをハイタッチを交えて伝えた。

「う、うん!?頑張ってね!」「こちらこそ悪かったな。頑張ってこい。」

2人のエールが陽向の背中を押す。

「うん!」

そして
陽向と男は外へ移動した。

「いいか、透明魔法クリアマジックってのは、覚えるのは簡単だ。しかし、その代わりMPエルグを多く使う。」

敬太から軽く聞いていたのであまり驚きはしなかったが、少し心配になり、聞き返す。

「あの、俺大丈夫ですよね?」

「その点は抜かりなく確認済みだ。安心してくれ」

「よかったぁー!」 

陽向は安心感に満ち、思わず声をあげた。

「ただし」

男は真顔で陽向を見る。

真面目な話かもしれない。

そう思い

陽向は息をのむ。

「、、、」

「俺は1000MPエルグは軽くある。だが、お前は200MPエルグ程しかない。だからお前には回数制限をつけなくてはならない。仮にお前がその回数を上回るような事があれば、お前はこの前味わったオーバーマジックの2倍程苦しい痛みに襲われることになる。そうならないためにも回数は守ってな!」

この男がただ者じゃないってことはわかった。

しかし

オーバーマジックの2倍程の苦しさと言うのは受け止め難い。

それもそうだ、あの時の苦しさは口では言い表せない程の物だった。
それを上回る事など考えたくもない。
そう陽向は思っていた。

「あ、はい!」

元気な返事の反面、辛い思いをしたくない。
そんな自分がいる事に陽向は気づいていた。



そして、刻々と時間は過ぎてゆき、時間制限タイムリミットの時間になる。
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