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本編↓
第34話 終焉。
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腹部に大きな穴を開けた獣族は自身の再生力を持ってしても修復する事は出来なかった。
少年の放った権威で形成された矢の残りカスのようなものが獣族の傷口に付着し再生を留めていた。
「貴様…!」
再生もできず更には止血もできずにいる獣族は大量出血での死を強制的に受け入れなくてはならない。
剣聖を含め誰もがそう思っていた。
「まだ…終わらねぇぞ…!」
途端、獣族が遠吠えを出す。その声は下界一面を駆け巡るかの如く大きく少年達は耳を塞がずにはいられなかった。
しばらくすると、遠吠えが収まり少年達は耳を塞いでいた手を離す。
「…ん?」
剣聖は微かに耳に届く低周波に嫌な感覚を覚えた。
一瞬なんの音か考え込んだが直ぐに答えがわかった。
「アイツから離れろ!恐らく奴は仲間を呼んだ…!」
少年は剣聖に言われるがままに獣族とは別の方向へ走って行く、その間剣聖は時間を稼ぐように地面を高速で切り裂き砂埃を起こし、それから逃げる。
無事二人は獣族から数十メートル距離をとった頃、沢山の獣族(人型以外)が砂埃を撒き散らし走って来た。
最初はこちらを襲って来るかと思ったがそうではないかった。
奴らは腹部に傷を負った獣族に一直線に走って行き腹部に空いた大きな穴に入って行く。
その間、獣族は一歩たりとも動かず自身の体を小刻みに揺らしていた。
「ビースト解放…!」
獣族がそう叫んだ時だった。
彼の身体中を駆け巡る血は速度を上げ自身の皮膚が赤くなる程までに体温を上げる。急激に血行を促進させた事により、体温は上がり更に身体能力も桁違いに跳ね上がっていた。
そして体温が上がった事により、傷口に侵入していた獣族達(人型以外)と少年の権威は溶かされ獣族は傷口を修復する。
「いよいよマズイんじゃないの?」
剣聖は獣族の更なる進化に焦りを感じていた。
ただでさえ苦戦し、押され気味だった戦況がこの進化により、更に押されると考えられるからだ。
「これは本気で行くしかなさそうですね」
少年と剣聖は決意を決めて獣族との距離を詰める。
獣族の体温は更に上がり続け、歩く場所は大地をも焦がす程。
そんな獣族の体温はとうに1000度を超えていた。通常1000度も体温があれば身体中の細胞を壊し死に至るのだが、彼は驚異的なまでの再生能力で自身が壊した細胞を修復していた。これは彼にしか出来ない芸当。
「さぁ…知力の限りを尽くして来い…」
剣聖は彼に効くかも分からない自身の短刀で攻撃を食らわす。
短刀自体は獣族に触れることで溶けることは無かったが問題は攻撃している本体にあった。
剣聖は自身の手が焦がれる感覚を覚えた。
ふと手を見ると赤くただれとても見せられる状況では無い。更に攻撃で負わせた傷口から飛び散る血が身体中にかかり火傷を負う。
剣聖はもはや痛みで立ち上がることさえ難しい状況に陥る。
「ぐっ…!すまねぇ…」
行動不能になった剣聖を放っておけばすぐに獣族がトドメを刺してしまう。
そう考え少年は戦う準備を開始しもう一度、弓矢を出すように頭に強く念じた。
だが、一向に出る気配はない。
そうしているうちに少年に向かい獣族は飛びかかってきた。それは止める事、そして反応する事さえ許さない速度で。
今の獣族の攻撃を食らうと傷だけでは済まず、深いやけども負い傷は永遠に治る事は無くなってしまう。
つまり、この一撃を受けるということは死を受け入れるということ。
だが、少年は瞬間的に動くことが出来ない。
ーー死んだ。
そう思った時。獣族は少年の上をそのまま通り過ぎ、その後ろの木にぶつかる。
ーー何が起こった?!
全く状況の整理がつかない少年だったが、何となく理解した。
結論から言えば自滅。
獣族は体温を限界まであげた事により再生能力も限界まで上げている状況にあった。そこに剣聖が数々の傷を作った事により、細胞の修復に力を注いでいた再生能力が傷の修復に力を使うことが出来ず傷口から流れ出た血で貧血になり死にかけた時、体が傷の方が危ないと判断し体温を上げるのをやめて傷の修復に力を注いだ。だが、体温が冷めるのは遅く、その余熱で細胞を焼き尽くしたという事だろう。
そして、死んだ。
「よ…かった」
少年は一息つき、剣聖の元へ駆け寄った時だった。
「本当に良かったのかなぁ?」
禍々しいオーラに身を包んだ従属とはまた別の何かが少年の眼前に立っていた。
「まさか…魔族…!いやそんな…違う世界に住んでるはず…」
少年は居るはずもない存在を目の当たりにして戸惑う。
魔族は元々この世界に存在していたが、ここ数十年でパッと姿を消した。噂によれば違う世界に住みついたとの話だったが…
「契約してた奴が死んだでしょ?だから」
「まさかじぃじ」
「名前は確か、ハヤミだったかな」
少年の放った権威で形成された矢の残りカスのようなものが獣族の傷口に付着し再生を留めていた。
「貴様…!」
再生もできず更には止血もできずにいる獣族は大量出血での死を強制的に受け入れなくてはならない。
剣聖を含め誰もがそう思っていた。
「まだ…終わらねぇぞ…!」
途端、獣族が遠吠えを出す。その声は下界一面を駆け巡るかの如く大きく少年達は耳を塞がずにはいられなかった。
しばらくすると、遠吠えが収まり少年達は耳を塞いでいた手を離す。
「…ん?」
剣聖は微かに耳に届く低周波に嫌な感覚を覚えた。
一瞬なんの音か考え込んだが直ぐに答えがわかった。
「アイツから離れろ!恐らく奴は仲間を呼んだ…!」
少年は剣聖に言われるがままに獣族とは別の方向へ走って行く、その間剣聖は時間を稼ぐように地面を高速で切り裂き砂埃を起こし、それから逃げる。
無事二人は獣族から数十メートル距離をとった頃、沢山の獣族(人型以外)が砂埃を撒き散らし走って来た。
最初はこちらを襲って来るかと思ったがそうではないかった。
奴らは腹部に傷を負った獣族に一直線に走って行き腹部に空いた大きな穴に入って行く。
その間、獣族は一歩たりとも動かず自身の体を小刻みに揺らしていた。
「ビースト解放…!」
獣族がそう叫んだ時だった。
彼の身体中を駆け巡る血は速度を上げ自身の皮膚が赤くなる程までに体温を上げる。急激に血行を促進させた事により、体温は上がり更に身体能力も桁違いに跳ね上がっていた。
そして体温が上がった事により、傷口に侵入していた獣族達(人型以外)と少年の権威は溶かされ獣族は傷口を修復する。
「いよいよマズイんじゃないの?」
剣聖は獣族の更なる進化に焦りを感じていた。
ただでさえ苦戦し、押され気味だった戦況がこの進化により、更に押されると考えられるからだ。
「これは本気で行くしかなさそうですね」
少年と剣聖は決意を決めて獣族との距離を詰める。
獣族の体温は更に上がり続け、歩く場所は大地をも焦がす程。
そんな獣族の体温はとうに1000度を超えていた。通常1000度も体温があれば身体中の細胞を壊し死に至るのだが、彼は驚異的なまでの再生能力で自身が壊した細胞を修復していた。これは彼にしか出来ない芸当。
「さぁ…知力の限りを尽くして来い…」
剣聖は彼に効くかも分からない自身の短刀で攻撃を食らわす。
短刀自体は獣族に触れることで溶けることは無かったが問題は攻撃している本体にあった。
剣聖は自身の手が焦がれる感覚を覚えた。
ふと手を見ると赤くただれとても見せられる状況では無い。更に攻撃で負わせた傷口から飛び散る血が身体中にかかり火傷を負う。
剣聖はもはや痛みで立ち上がることさえ難しい状況に陥る。
「ぐっ…!すまねぇ…」
行動不能になった剣聖を放っておけばすぐに獣族がトドメを刺してしまう。
そう考え少年は戦う準備を開始しもう一度、弓矢を出すように頭に強く念じた。
だが、一向に出る気配はない。
そうしているうちに少年に向かい獣族は飛びかかってきた。それは止める事、そして反応する事さえ許さない速度で。
今の獣族の攻撃を食らうと傷だけでは済まず、深いやけども負い傷は永遠に治る事は無くなってしまう。
つまり、この一撃を受けるということは死を受け入れるということ。
だが、少年は瞬間的に動くことが出来ない。
ーー死んだ。
そう思った時。獣族は少年の上をそのまま通り過ぎ、その後ろの木にぶつかる。
ーー何が起こった?!
全く状況の整理がつかない少年だったが、何となく理解した。
結論から言えば自滅。
獣族は体温を限界まであげた事により再生能力も限界まで上げている状況にあった。そこに剣聖が数々の傷を作った事により、細胞の修復に力を注いでいた再生能力が傷の修復に力を使うことが出来ず傷口から流れ出た血で貧血になり死にかけた時、体が傷の方が危ないと判断し体温を上げるのをやめて傷の修復に力を注いだ。だが、体温が冷めるのは遅く、その余熱で細胞を焼き尽くしたという事だろう。
そして、死んだ。
「よ…かった」
少年は一息つき、剣聖の元へ駆け寄った時だった。
「本当に良かったのかなぁ?」
禍々しいオーラに身を包んだ従属とはまた別の何かが少年の眼前に立っていた。
「まさか…魔族…!いやそんな…違う世界に住んでるはず…」
少年は居るはずもない存在を目の当たりにして戸惑う。
魔族は元々この世界に存在していたが、ここ数十年でパッと姿を消した。噂によれば違う世界に住みついたとの話だったが…
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