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1st STAGE じゃじゃ馬娘とドラゴンゾンビ

Data.12 雷の守護者

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 天井の一部と共に降下してきた<雷の守護者サンダーガーディアン:Lv30>から、私はとっさに距離をとった。
 四本の腕、四本の脚、頭部には雷の様にギザギザとした角がこれまた四本。
 四方どこから見ても正面の様に見えるデザインだ。
 そういえば、さっき倒したシルバーゴーレムは、裏表がわからないデザインだったなぁ。

「恐れることはない……。我はお主に危害を加えるつもりはない……。むしろ、力を与えようというのだ……」

 雷の守護者サンダーガーディアンは不動でそう語りかけてくる。
 その言葉、信じるしかないわね。
 流石に今の装備とスキル、しかもソロで12レベル差を覆せるとも思えない。

「力とは……何を与えてくれるのでしょうか……」

「我が与えられる物は武器、もしくは防具だ……。しかし、何でもという訳ではない。我は雷の守護者。炎の剣や水の杖をくれと言われても対応に困る」

 なかなか流暢りゅうちょうな語りで予防線を張ってきたなぁ。

「では武器でブーメランをください。属性は雷でいいです」

「まてまて、そんなにあっさり決めてもよいのか……? 与えられるのは一つだけだ……」

 丁寧な守護者だ……。

「私はブーメランを極めるという目的がありますので、すごい武器が貰えるのならばブーメラン一択なんですよ。それに、さっき一つ壊れてしまいましたし……」

「そうか……ならばブーメランにしよう。どんなブーメランがよいかな?」

 どんな……か。
 今持ってる『目覚めのブーメラン』は、いわゆる「く」の形のブーメランだ。
 十字型のクロスブーメランや円形のサークルブーメラン、他にもゲームだからこそ飛ぶ珍しい形のブーメランもありそうだ。
 悩んでしまうなぁ……。

「……悩むのならば、今の倒したい敵でも申してみよ」

 気も効く守護者だなー。
 お言葉に甘えて私は今置かれている状況を話した。
 イスエドの村の防衛とか、死して蠢く者の洞窟アンデッドケイブの攻略、ドラゴンゾンビの討伐までほとんど全てを。

「なんと……ドラゴンゾンビが出たか……。ふむ、敵はゾンビやスケルトンなど、脆いが数の多い相手か……。ならばちょうど良い武器がある」

 雷の守護者サンダーガーディアンは四本の腕を頭の上に掲げ、雷の球体をバチバチと生成した。

「……私の考えたブーメランを与えるが、良いか? もう一度言うが、アイテムは一つしか与えられんぞ? 返品は受け付けていない」

 この予防線と確認の嵐。
 これが守護者たる由縁か……。
 私は少し真顔になりながらも、それでいいと伝えた。

「よしならば与えよう……新たな力を!」

 生成された雷の球体が膨らんで、バリバリという落雷の様な音と共に弾けた。
 その中から現れたのは、深い紺色のボディに黄色のラインが入ったシャープな「く」の字ブーメランだった。

超電磁ちょうでんじブーメラン……電気と磁石の力を持っている」

 私は超電磁ちょうでんじブーメランを両手で受け取り、ステータスを確認する。

 ◆武器詳細
 ―――基本―――
 名前:超電磁ブーメラン
 種類:ブーメラン
 レア:☆30
 所有:マココ・ストレンジ
 攻撃:45
 耐久:35
 ―――技能スキル―――
 【磁力制御】Lv5
 【雷の円陣】Lv3
 ※残りスキルスロット:3
 ―――解説―――
 雷の力を宿した折り畳み式ブーメラン。
 使いやすく、応用も効くスマートな作りになっている。

 ほ、☆30!?
 『目覚めのブーメラン』の2倍あるじゃない!
 スキルも二つ付いてて、素のステータスも高い。
 こんなに良い物が貰えるとは……。
 スキルもチェックしよ。

 ◆スキル詳細
 【磁力制御】
 『超電磁ブーメラン』と装備者の間に磁力を発生させる。
 レベルが上がるほど制御できる磁力の大きさがアップする。

 えーと、これはどういう意味があるのだろうか。

「それはお主とブーメランを磁石の様な関係にするスキルだ。わかりやすく例を挙げるならば、投げる際には反発させ、戻ってくる際には引かれ合う力を使う。これでブーメランの勢いはまし、同時に威力も増すという訳だ……。受け止める際にもう一度反発を一瞬はさめば、勢いを殺して安全に受け止めることも可能だな……。理解できたか?」

「は、はい」

 とりあえず、ブーメランの威力を強化できるスキルというワケだ。
 軌道も投げてから多少調整出来るようになりそうだし、後でいろいろ試さないとね。
 ということで次へ。

 ◆スキル詳細
 【いかずち円陣えんじん
 スキルを所持するものの周りに雷で出来た円を発生させ、それに触れたものや内部に入ったものを感電させる。また『麻痺状態』にすることもある。
 レベルが上がるほど威力と効果範囲、麻痺させる確率がアップする。
 最大持続時間:40秒
 リキャストタイム:60秒

 ふむ、この場合は『超電磁ブーメラン』の周りに最大40秒間雷を発生させるという事ね。
 ブーメランの範囲攻撃性能をアップさせる良いスキルだわ。

「雷の円陣……ほとんどの者はその範囲攻撃適性の高さに目をつける。それは間違ってはいないが、満点ではない。このスキルは範囲をせばめることにより、円形の壁や盾としても使えるのだ……。試しにブーメランを折りたたみ、左腕に装備してるといい……」

 私は言われた通りにブーメランの「く」の字の開いている部分を閉じるように折り畳み、左腕に磁力でくっ付ける。
 そして、【雷の円陣】を小さな円をイメージしながら発動させた。

 バチバチバチバチッ!

 おおっ!
 左手に装着されたブーメランを中心に、ほとばしる雷の円盾が発生した。
 今は上半身を覆うくらいの大きさだけど、慣れればもっと小さくピンポイントなシールドにもできそうだ。

「こんなすごい武器……ありがとうございます」

「私の得意とする電磁力は、飛び道具向きなのでな。お主がブーメランを選んだからこそ、すごい武器になったとも言える。まあ、最強の武器ではないがな……」

「ちなみに最強って?」

「超電磁砲……レールガンとも言うか。磁力の力で弾を打ち出す武器だ。弾の問題はあるが、威力は高いし、射程も長い。そちらの武器が良かったか?」

「いえ」

「……良い覚悟だ。私もとりあえず村へ動向しよう。よいか?」

「こっちは良いですけど、ここを動いても問題ないんですか?」

「今のままでは特に人もこないのでな……。それにこのままでは、こちらにドラゴンゾンビの軍勢が押し寄せてくる可能性もある。さあ、最低限の確認は済んだ。移動を始めよう……」

 そう言うと、雷の守護者サンダーガーディアンは放置されていたシルバーゴーレムのドロップ品を私に持たせる。
 そして、今度は私をヒョイっと持ち上げ自らの肩に乗せた。

「あの、私まだシルバーゴーレムを倒したスキルすら確認できてないんですけど……」

「そこで存分にするが良い。別に我が怒ることはない。何はともあれ、移動を始めるのだ……」

 そんなに急ぐ事態なのか。
 まあ、私もイスエドの村に残したアチルが心配だ。
 靴も壊れてるし、移動は任せて、スキルや装備を眺めるとしよう。
 まずはアレよね!

 ◆スキル詳細
 【猛牛ブルブーメラン】
 猛牛の突進かの様な勢いでブーメランを突撃させる。
 レベルが上がるほど威力と速度、射程距離がアップする。
 リキャストタイム:3分

 猛牛ブルブーメラン……語感も良いしカッコいいスキル名だ……。
 我ながらあっぱれ。
 ただリキャストが長いね。3分とは。
 これしか有効打がない相手に外すと、3分間攻撃を耐え忍ばなくてはならない。
 使いどころを見極めることが必要な、まさに私の必殺技だ。

「……あの、あんまり進んでなくないですか?」

「……そうだろうか? 部屋中央より数メートルは進んでいるぞ?」

 確かに部屋中央より数メートルは進んで、ボス討伐と同時に部屋の端っこに出現した帰還の魔法円に近づいてはいるみたいだけど……。

「そういえば、だ……。お主はなぜシルバーゴーレムのレベルが20ではないのか……疑問に思わんか? このダンジョンの最大レベルは20であるはずなのに……」

 露骨に話を逸らしてきた……。
 まあ、その話も興味があるから乗るけど。

「ゴールデンゴーレムがレアでいるとか……ですか」

「……正解だ。そいつは強くないが、倒すと『金魔石』という質の良い魔石を落とす。これが人間の間ではとても貴重なようだな。流石のお主も一度の探索で出会える運はなかったようだな」

「……あの、遅くないですか?」

「……この世界では完璧を目指すのは難しい。攻撃力が高い者の守備力が低くなったり、守備力が高い者は機敏さを失ったり……。つまりはそういう事だ」

「…………」

 「遅い」と自分で断言する気はないようだ。
 まあ、移動を急ぐ意味はわかったわ。
 純粋に時間がかかるからだとはね……。

 これでは通常の冒険に連れて行くのは困難だ。
 守護者ガーディアンらしく、拠点を守るのがお似合いね。
 ……まさか婆さん、これがわかっていて私をここに送り込んだのかな?
 村をこれからも守る戦力が欲しくて……。

 私も強くなれたし、頼られるのも悪い気はしないけど、ただ一つ。
 あの婆さんは策士だなぁ……。
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