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第4章 ゴーレム大地を駆ける

第60話 ゴーレムと磁石の力

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「リニアモーターカー……? 何ですかそれは?」

 マホロがきょとんとした目をして首をかしげた。
 やはり、この世界では馴染みのない言葉か。
 まあ、俺も言葉くらいで仕組みはあやふや、実物を見たこともないんだが……。

「リニアモーターカーは簡単に言うと磁力で走る列車さ。磁石の反発する力と引き合う力、両方を交互にこう……いい感じに繰り返すことで加速し続けるんだ。俺が元々いた世界でも、まだ普及し切っていなかった最先端の乗り物だね」

「すごい……っ! それをガンジョーさんは作れるんですね!」

「むむむ……ああ! 作ってみせるさ!」

 理屈はわかっているんだ。
 磁石によって物が弾かれたり、引っ張られたりする様子を見て来ているから。
 それが強い磁石になればなるほど強い力を生み出し、物体を加速させるっていうのも感覚として理解出来る。

 出来ないことはリニアモーターを実際に作ることだけ……!

「ガイアさん、リニアモーターの作り方……知ってますか?」

〈知りません〉

 あ、終わった……。
 ガイアさんは何でも知ってるわけじゃない。
 特にこの世界に存在しない物に関する知識は……。

〈ですが、磁力を利用した加速装置は創造クリエイト可能です〉

「あ、それで全然OKです!」

 要するに速く移動出来れば何でもいいんだ。
 俺の元いた世界にあった技術を完全に再現する必要なんてない。
 この魔法がある世界では特に!

「何を用意すればその加速装置を作れそうですか?」

〈レールに強力な磁力を付与するため、レールそのものを構築する素材に等級C以上の雷魔鉱石と地魔鉱石を必要とします〉

「灯台の時みたいに、雷魔鉱石だけでは強力な磁力を扱うことは出来ないんですね」

〈レールはラブルピア中央にある地の魔宝石の魔力圏ゾーンを抜けてジャングルまで伸びるので、その地属性魔力の恩恵を受けられません。なので灯台のエレベーターとは違い、磁力を生み出すのに地属性の魔力が必要になります〉

 地属性と雷属性の融合――それが磁力。
 地の魔宝石の力を借りられないなら、レールそのものに地属性魔力も仕込んでおかないといけないってことだな。

〈そして、メタルゴーレムを車両を牽引する動力源にする場合は、ボディを超魔動磁石にする必要があります。事前に体内収納ストレージに等級A以上の雷魔鉱石を収納してください〉

「トロッコと同じように、俺が先頭車両になる場合……か。それが一番シンプルだし、制御も直感的だし、今回も俺が体を変形させて先頭になろうかな」

「ガンジョーさんと一緒に列車に乗れないのは残念ですけど……ガンジョーさんが引っ張ってくれるなら私も安心して乗り込めます!」

 マホロもこう言ってくれていることだし、俺が先頭に立つことは確定だな。
 トロッコとは比べ物にならないであろう加速を、一番前で体験することになる……!

〈現在、ラブルピアの魔力圏ゾーンに等級Aの雷魔鉱石が存在します。メタルゴーレムの超魔動磁石化はすぐにでも行えます。しかし、レールの創造クリエイトに必要な等級C以上の雷および地魔鉱石は不足しています。廃鉱山へ向かい、採掘することをおすすめします〉

 今まではあくまでもガス事故で亡くなられた方の亡骸を回収するついでに、目についた鉱石類を持って帰っていたに過ぎない。
 今度は目当ての物を定めて採掘に向かう……か。

「ありがとうございます、ガイアさん。まずはレールの素材を集めようと思います。俺の体の超魔動磁石化は……レールとか車両とかが完成してからにしましょう」

 俺の体に変化が起こると、それに適応するのに時間がかかる可能性もあるからな。
 ちゃんと準備をした後に、満を持して体を超魔動磁石化しようじゃないか。

「まあ、それはそれとして等級Aの雷魔鉱石だけは先に持っておこうかな」

 俺は雑多に魔鉱石が詰め込まれている霊園前のトロッコから、一番力の強い雷魔鉱石を呼び寄せる。
 何かを作る時と同じくわざわざトロッコに近づく必要はない。
 命令を出せばふわっと空を飛んで手元にやって来る。その光景はまさに魔法だ。

「ガンジョーさん、カッコいいです! 私も命令一つで物体を呼び寄せたいです!」

 マホロは目をキラキラと輝かせ、腕をバタバタさせる。

「そ、そう? 便利だとは思うけど、カッコいいかい?」

「カッコいいです! だって、ガンジョーさんなら……」

 そう言ってマホロは俺から少し離れた位置の地面に愛用のショベルを突き刺した。

「これを無言でスッと呼び寄せられるんですよね!?」

「ああ、出来ると思う」

 マホロがショベルから離れたことを確認し、俺は心の中でショベルを呼び寄せる。
 すると、地面からズボッと抜けたショベルが回転しながら宙を舞い、俺の手の中に収まった。

「「おー!」」

 俺とマホロの声がハモる。
 確かにこれは使い慣れた武器を呼び寄せる手練てだれの魔法使いみたいでカッコいい!

「ガンジョーさん、カッコいいでしょう!?」

「ああ、確かにカッコいい! でも、掴みそこねると体に突き刺さりそうだし、マホロはやめといた方がいいと思うよ。気持ちはよ~くわかるんだけどね」

 正直、ショベルなどの金属製品を呼び寄せるだけなら、磁力を使った何かしらのアイテムをガイアさんに作ってもらえば今でも実現は可能だと思う。

 ただ、マホロは俺みたいに鋼鉄の体じゃなくて、ぷにぷにの柔らかい肌だからな。
 カッコよくて面白くても、危険なおもちゃは持たせたくないという親心に似た感情が湧く。

「むぅ~……わかりました。怪我をしたらガンジョーさんを悲しませてしまいますからね」

「ふふっ、マホロは賢い子だ。そのうち危なくない範囲でショベルの機能を強化しよう」

「本当ですか!? やったー! 私、楽しみに待ってます!」

 ずっと俺が作ったショベルを大切にしてくれてるからな。
 たまにはマホロのためだけにゴーレムの力を使ってもバチは当たらない。

「さて、ちょっくら廃鉱山に行って雷魔鉱石を採掘して来るよ」

「ガンジョーさん、いってらっしゃい!」

 マホロに見送られて、俺は霊園完成後初めて廃鉱山に向かった。
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