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雨宿りさせてください2
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「では、店じまいをしたら案内しますね。それまでゆっくり待っててください」
外に出されることもなく、手慣れた様子で店じまいをする晴明をおぼろげに雨霧は眺めていた。
「そろそろ外に出ましょう」
晴明の声とともに重たい身体を雨霧は動かし、子供みたいについてくる姿が微笑ましかったのか、くすりと笑う。
ガチャリと音とともに雨宿りをしたバーは閉じられた。朝焼けが眩しい午前四時。雨の後の澄んだ空気が肺の包み込み、心地よい気だるさが眠気を誘う。
「では、行きましょうか
」
「はい、よろしくお願いいたします」
水溜まりを踏まないようについていくと、見上げるのが疲れてしまう立派なマンタワーションに、ぽかんとしている霧雨に晴明は気づく。
「ここ一人で住むには大きいですよね。だから、誘ったんです」
悪戯ぽく笑う晴明に声が出ないからかコクコクと頷く雨霧を見て、ツボに入ったのか声を出して笑う。少し恥ずかしさが芽生えたが、なぜか悪い気がしなかったのは晴明の素を見れた気がしたからだろうと雨霧は思った。
「すみません。笑いすぎましたね」
「いえ、大丈夫です」
その言葉に安堵を見せる晴明は案内しますねと微笑めば、マンションの中へと入っていく。
中も管理が行き届いたもので、汚れは見当たらない。本当にこれからここに住むのかと自分のことながら、雨霧は他人事のように感じていた。
「自分の家のようにくつろいでね」
「お邪魔します」
扉を開けた先は一人では大きすぎる部屋。清潔感があり、窓際に観賞植物が置かれて生活感がないわけでもない。ただ男性が住むにはあまりにも綺麗だと雨霧は思った。
「彼女さんはいらっしゃるのですか?」
「いいえ、お恥ずかしい話ですがこの歳で付き合ったことありません」
我ながら無神経だったかもと思いながらも、聞きたくなり尋ねた雨霧に嫌な顔もせず恥ずかしそうに告げた後、お風呂を沸かしに行く。
それを聞いて、心のどこかで安堵をする自分にどこか恥じる雨霧。そもそも彼女がいるならば常連とはいえ、他人を住まわせるなんてしないだろう。
そもそも何故住まわせてくれるのか。同情かもしれない。お人好しかもしれない。なにか目的があるとか。巡る言い訳と疑問が脳を満たしている。まとわりつく気持ち悪さを感じていると穏やかな声が響く。
「お風呂沸きましたので、先にどうぞ。寒いでしょう」
「あっ……。ありがとうございます。お言葉に甘えて」
思考を絶たれたことにより、自分は濡れたままだということに気づいた雨霧は逃げるように、案内されたお風呂場へと向かっていく。お風呂場に着くとタオルと自分と同じぐらいの服が置かれている。
「下着は買って使ってないやつなので安心してください。濡れた服は洗濯機に入れてくださいね」
疑問を浮かべるよりも先に言ってくれたので疑わずに済んだ。
服自体は晴明のモノだろう。身長は172cmの自分とさほど変わらないから合うだろう。水を含んだ服を言われた通り裏返さずに洗濯機に入れたら中へと入る。
お風呂場も清潔感に溢れており、綺麗なことから晴明は綺麗好きなのだろう。好感が持てるなと思いながら頭や身体を洗い、入浴剤を入れたからか白いお風呂に浸かる。お花のいい香りが緊張していた身体がほつれていく感覚に実家を思い出した。
「気持ちよかったです。ありがとうございます」
「良かったです。これからどうします?寝る場合は、寝室案内しますよ」
そう晴明に言われると急に眠気が襲うが、自分がベットで寝るなどいいのだろうかと悩んでいるとそれに察したのか晴明が口を開く。
「私はまだやることがありますし、気になさらず」
「じゃあ、お言葉に甘えて。本当にありがとうございます」
寝室を案内させて入ると、やはり一人で寝るには少し大きめの黒いベットにシンプルな作業用の机と椅子。ちょっとした小物が置かれていた。
「おやすみなさい。いい夢を」
扉が閉まると重たい体を引きずって、ベットに寝転がるといつもと違い香りに夢じゃないかと雨霧は考えた。玄関にあった綺麗な革靴。他の男と寝ていた恋人。住むところがなくなった自分に手を差し伸べてくれた晴明。今日一日色々ありすぎて疲れてしまったのだろう。ほんのり香る不安を胸に秘めて、瞼を閉じた。
外に出されることもなく、手慣れた様子で店じまいをする晴明をおぼろげに雨霧は眺めていた。
「そろそろ外に出ましょう」
晴明の声とともに重たい身体を雨霧は動かし、子供みたいについてくる姿が微笑ましかったのか、くすりと笑う。
ガチャリと音とともに雨宿りをしたバーは閉じられた。朝焼けが眩しい午前四時。雨の後の澄んだ空気が肺の包み込み、心地よい気だるさが眠気を誘う。
「では、行きましょうか
」
「はい、よろしくお願いいたします」
水溜まりを踏まないようについていくと、見上げるのが疲れてしまう立派なマンタワーションに、ぽかんとしている霧雨に晴明は気づく。
「ここ一人で住むには大きいですよね。だから、誘ったんです」
悪戯ぽく笑う晴明に声が出ないからかコクコクと頷く雨霧を見て、ツボに入ったのか声を出して笑う。少し恥ずかしさが芽生えたが、なぜか悪い気がしなかったのは晴明の素を見れた気がしたからだろうと雨霧は思った。
「すみません。笑いすぎましたね」
「いえ、大丈夫です」
その言葉に安堵を見せる晴明は案内しますねと微笑めば、マンションの中へと入っていく。
中も管理が行き届いたもので、汚れは見当たらない。本当にこれからここに住むのかと自分のことながら、雨霧は他人事のように感じていた。
「自分の家のようにくつろいでね」
「お邪魔します」
扉を開けた先は一人では大きすぎる部屋。清潔感があり、窓際に観賞植物が置かれて生活感がないわけでもない。ただ男性が住むにはあまりにも綺麗だと雨霧は思った。
「彼女さんはいらっしゃるのですか?」
「いいえ、お恥ずかしい話ですがこの歳で付き合ったことありません」
我ながら無神経だったかもと思いながらも、聞きたくなり尋ねた雨霧に嫌な顔もせず恥ずかしそうに告げた後、お風呂を沸かしに行く。
それを聞いて、心のどこかで安堵をする自分にどこか恥じる雨霧。そもそも彼女がいるならば常連とはいえ、他人を住まわせるなんてしないだろう。
そもそも何故住まわせてくれるのか。同情かもしれない。お人好しかもしれない。なにか目的があるとか。巡る言い訳と疑問が脳を満たしている。まとわりつく気持ち悪さを感じていると穏やかな声が響く。
「お風呂沸きましたので、先にどうぞ。寒いでしょう」
「あっ……。ありがとうございます。お言葉に甘えて」
思考を絶たれたことにより、自分は濡れたままだということに気づいた雨霧は逃げるように、案内されたお風呂場へと向かっていく。お風呂場に着くとタオルと自分と同じぐらいの服が置かれている。
「下着は買って使ってないやつなので安心してください。濡れた服は洗濯機に入れてくださいね」
疑問を浮かべるよりも先に言ってくれたので疑わずに済んだ。
服自体は晴明のモノだろう。身長は172cmの自分とさほど変わらないから合うだろう。水を含んだ服を言われた通り裏返さずに洗濯機に入れたら中へと入る。
お風呂場も清潔感に溢れており、綺麗なことから晴明は綺麗好きなのだろう。好感が持てるなと思いながら頭や身体を洗い、入浴剤を入れたからか白いお風呂に浸かる。お花のいい香りが緊張していた身体がほつれていく感覚に実家を思い出した。
「気持ちよかったです。ありがとうございます」
「良かったです。これからどうします?寝る場合は、寝室案内しますよ」
そう晴明に言われると急に眠気が襲うが、自分がベットで寝るなどいいのだろうかと悩んでいるとそれに察したのか晴明が口を開く。
「私はまだやることがありますし、気になさらず」
「じゃあ、お言葉に甘えて。本当にありがとうございます」
寝室を案内させて入ると、やはり一人で寝るには少し大きめの黒いベットにシンプルな作業用の机と椅子。ちょっとした小物が置かれていた。
「おやすみなさい。いい夢を」
扉が閉まると重たい体を引きずって、ベットに寝転がるといつもと違い香りに夢じゃないかと雨霧は考えた。玄関にあった綺麗な革靴。他の男と寝ていた恋人。住むところがなくなった自分に手を差し伸べてくれた晴明。今日一日色々ありすぎて疲れてしまったのだろう。ほんのり香る不安を胸に秘めて、瞼を閉じた。
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