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第1部
知らない人に告白されたんだけど
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『これから第三十回平井高等学校入学式を始めます』
見た感じ五十代の男教師が登壇し、開会の言葉を述べて一礼。
彼の頭の中央が少し寂しくザビエルのようになっていた。これは俺達へのささやかなサービスということなのだろうか?
ただ、壇上の光に反射させるのは勘弁して欲しい。どこからともなく笑いが込み上げてくるから。
「くくっ」
早速後ろから笑い声が聞こえてきたよ。
早く入学式終わってくれないかな……
始まった直ぐにこんなことを思うのもあれだけど、怠いもんは怠い。
その中でも、特に怠そうなもの第一位
『学校長、祝辞』
が来た。
『この桜が咲き誇る季節、今年も多くの新入生達が入学……』
ゆっくりとした足取りで登壇した校長らしき人物は、壇上に設置された机の上に置かれたマイクを手に取り、延々と語り始める。
まずい、話が長すぎて眠気が襲ってきた……
まだ入学式は始まったばかりだと言うのに……
それから、瞼の重さと格闘し続けること数分。
『来賓の方や保護者の方々の御理解のおかげで……』
まだ話が続いてる……
そして相変わらず話にオチが見えない。
もう俺の横に座っている奴とか爆睡しちまってるよ。
いっそのこと俺も寝るか?
もう限界。
そんなどうでもいいことを考えていると、
『これで祝辞とさせて頂きます』
この一言で長い話を締め括り、校長は壇上から階段を使って降りたではないか。
礼はもちろんのこと、マイクもしっかり机の上に置いて。
どうやら終わってくれたようだ。
そんなこんなで式は進んでいき、新入生代表の挨拶となったようだ。
『新入生代表。武田・薫』
新入生代表として壇上に登ったのは赤い瞳をした美少女であった。確かクラスメートである。
『暖かな春の訪れとともに、私たちは平井高等学校の入学式を迎えることとなりました。本日はこのような立派な入学式を行っていただき大変感謝しています。』
めったにお目にかかれない美少女の出現に一瞬で今まで蓄積していた眠気が吹き飛んだ。
それも俺だけじゃなく、他で爆睡していていたクラスメート達も。
腰の所まで伸びた黒髪に赤い瞳で顔は人形のように整っているが、自信に満ちており、俺達と何か違う。例えるなら猫の集まりに虎が混じっているような感じ。
この子が俺の人生に大きく関わってくるとはこの時思いもしなかった。
☆☆☆☆
エミリア視点
五十代の男教師が登壇し、開会の言葉を述べて一礼するが、大半の学生と同じようにあたしも興味はない。
考えなければならない事は今日の朝、誠に少し冷たく当たった事だ。中々気づいてくれなかった事に少しイラっとしてしまった。反省はしているけど、でもいい加減気づいてくれても良くない?と思うあたしは贅沢なんでしょうか?
後でフォローを入れとく必要はあるだろうけど、まああせる必要はない。すでにレールはしき終えている。
後は誠から告白させるか私からするか程度の差でしかない。もし、これに割って入ろうとする泥棒猫がいれば説得して退いてもらう。二年前と同じように。
まあ、出来れば誠から告白させたいなと思っていると
『新入生代表挨拶武田・薫』
と声がかかる。
武田・薫……どこかで聞いた事がある名前だけど……
壇上に上がった武田・薫の姿もどこがで見覚えがある。あれは確か……
「誠が大怪我した時の……」
思い出してみれば五年前の誠に見舞いに来ていた少女の面影がある。
「てっきりあれで済ませると思っていたのだけど……まさかこう言う事になるなんてね。流石にこれは想定していなかったな。」
思わず呟いてしまったが、幸い声が小さかったため誰にも聞かれていなかった。
(あたしの勘違いだったら良いけど警戒しておくに越した事はないか……)
あたしはそう心の中で呟きながら壇上に立つ敵かも知れない新入生代表を睨み付けた。
エミリア視点終了
☆☆☆☆
長い入学式もやっと終わり、それからクラスに戻ってから担任からの連絡事項も終わってお開きになった。
俺は陽平とともにエミリアと合流し、下駄箱につくと一旦エミリアと離れ、靴を取り、シューズを入れようとした瞬間手紙が入っていた。
「お、ラブレターか?」
陽平が微笑を浮かべながら声をかけてくる。
「どうせ、お前宛か、いたずらだろう。お前の所と俺の所となりだし」
「流石にラブレターで相手間違えないだろう?」
陽平が苦笑を浮かべながら答えるの聞きながら、俺は手紙を読む。
『放課後、屋上で待ってます。』
と書かれていた。
「本当にラブレターっぽいじゃん。」
陽平が笑いながら言うと、エミリアが近づいてきた。
「どうしたの?」
エミリアが近づいてきて俺が持っていた手紙のぞきこむ。
それを見た陽平があちゃーと言う表情をする。
「これ、もしかして誠宛?」
「みたい」
俺が答えるとバカと小声で言いながら陽平がつついてくる。
何?
と陽平の方に視線を向けようとすると、いつもより冷たいエミリアの声が聞こえてきた。気のせいだと思いたい
「よかったね、誠『君』。行こうか、陽平。誠君に悪いし」
どうした、お前普段俺に君つけしないだろう。しかも、やけに君を強調しているし……
「お前、空気読めよ。」
陽平がつついてくるが、
「陽平行くよ」
とエミリアに呼ばれ、ため息つきながら俺から離れていく。
「フォローしとくからうまくやれよ。はあ?少しはこちらの苦労も少し考えてほしいぜ。」
フォロー、苦労、何の話だよと思いながら二人を見送る。
これ、行かないといけないパターンだよね。
俺はため息をつきながらシューズに履き替え、俺は屋上にむかった。
☆☆☆☆
屋上にはきれいな頬をピンク色にそめた美少女が、赤い瞳で緊張しながらも俺を見ていた。
武田・薫。俺と同じクラスで新入生代表として挨拶した女の子。
遠くから見ても美人だったけど、近くで見ると見惚れてしまう程の美人だ。
「好きです。私と付き合ってください。」
どこかで似たような声を聞いた覚えがあるような。確か……
駄目だ、思い出せそうで思い出せない。俺が一生懸命考えていると……
「あの?」
武田さんの声で我に帰った。
う~ん、急に告白されてもね……はっきり言って困るんだけど
「ごめん。君の事良く知らないし……」
としか言い様がない。
「そう……なるわよね」
武田さんが泣きそうな表情になる。
女性泣かすのも後味悪いな。
面倒くさいけど仕方ないか
「じゃあ、とりあえず友人からで」
とフォローを入れる事にする。
俺がそう言うと、武田さんは嬉しそうに頷く。
「そうですね。まずは友人から始めましょう。そして、いつかあなたを必ず振り返らせて見せますから」
見た感じ五十代の男教師が登壇し、開会の言葉を述べて一礼。
彼の頭の中央が少し寂しくザビエルのようになっていた。これは俺達へのささやかなサービスということなのだろうか?
ただ、壇上の光に反射させるのは勘弁して欲しい。どこからともなく笑いが込み上げてくるから。
「くくっ」
早速後ろから笑い声が聞こえてきたよ。
早く入学式終わってくれないかな……
始まった直ぐにこんなことを思うのもあれだけど、怠いもんは怠い。
その中でも、特に怠そうなもの第一位
『学校長、祝辞』
が来た。
『この桜が咲き誇る季節、今年も多くの新入生達が入学……』
ゆっくりとした足取りで登壇した校長らしき人物は、壇上に設置された机の上に置かれたマイクを手に取り、延々と語り始める。
まずい、話が長すぎて眠気が襲ってきた……
まだ入学式は始まったばかりだと言うのに……
それから、瞼の重さと格闘し続けること数分。
『来賓の方や保護者の方々の御理解のおかげで……』
まだ話が続いてる……
そして相変わらず話にオチが見えない。
もう俺の横に座っている奴とか爆睡しちまってるよ。
いっそのこと俺も寝るか?
もう限界。
そんなどうでもいいことを考えていると、
『これで祝辞とさせて頂きます』
この一言で長い話を締め括り、校長は壇上から階段を使って降りたではないか。
礼はもちろんのこと、マイクもしっかり机の上に置いて。
どうやら終わってくれたようだ。
そんなこんなで式は進んでいき、新入生代表の挨拶となったようだ。
『新入生代表。武田・薫』
新入生代表として壇上に登ったのは赤い瞳をした美少女であった。確かクラスメートである。
『暖かな春の訪れとともに、私たちは平井高等学校の入学式を迎えることとなりました。本日はこのような立派な入学式を行っていただき大変感謝しています。』
めったにお目にかかれない美少女の出現に一瞬で今まで蓄積していた眠気が吹き飛んだ。
それも俺だけじゃなく、他で爆睡していていたクラスメート達も。
腰の所まで伸びた黒髪に赤い瞳で顔は人形のように整っているが、自信に満ちており、俺達と何か違う。例えるなら猫の集まりに虎が混じっているような感じ。
この子が俺の人生に大きく関わってくるとはこの時思いもしなかった。
☆☆☆☆
エミリア視点
五十代の男教師が登壇し、開会の言葉を述べて一礼するが、大半の学生と同じようにあたしも興味はない。
考えなければならない事は今日の朝、誠に少し冷たく当たった事だ。中々気づいてくれなかった事に少しイラっとしてしまった。反省はしているけど、でもいい加減気づいてくれても良くない?と思うあたしは贅沢なんでしょうか?
後でフォローを入れとく必要はあるだろうけど、まああせる必要はない。すでにレールはしき終えている。
後は誠から告白させるか私からするか程度の差でしかない。もし、これに割って入ろうとする泥棒猫がいれば説得して退いてもらう。二年前と同じように。
まあ、出来れば誠から告白させたいなと思っていると
『新入生代表挨拶武田・薫』
と声がかかる。
武田・薫……どこかで聞いた事がある名前だけど……
壇上に上がった武田・薫の姿もどこがで見覚えがある。あれは確か……
「誠が大怪我した時の……」
思い出してみれば五年前の誠に見舞いに来ていた少女の面影がある。
「てっきりあれで済ませると思っていたのだけど……まさかこう言う事になるなんてね。流石にこれは想定していなかったな。」
思わず呟いてしまったが、幸い声が小さかったため誰にも聞かれていなかった。
(あたしの勘違いだったら良いけど警戒しておくに越した事はないか……)
あたしはそう心の中で呟きながら壇上に立つ敵かも知れない新入生代表を睨み付けた。
エミリア視点終了
☆☆☆☆
長い入学式もやっと終わり、それからクラスに戻ってから担任からの連絡事項も終わってお開きになった。
俺は陽平とともにエミリアと合流し、下駄箱につくと一旦エミリアと離れ、靴を取り、シューズを入れようとした瞬間手紙が入っていた。
「お、ラブレターか?」
陽平が微笑を浮かべながら声をかけてくる。
「どうせ、お前宛か、いたずらだろう。お前の所と俺の所となりだし」
「流石にラブレターで相手間違えないだろう?」
陽平が苦笑を浮かべながら答えるの聞きながら、俺は手紙を読む。
『放課後、屋上で待ってます。』
と書かれていた。
「本当にラブレターっぽいじゃん。」
陽平が笑いながら言うと、エミリアが近づいてきた。
「どうしたの?」
エミリアが近づいてきて俺が持っていた手紙のぞきこむ。
それを見た陽平があちゃーと言う表情をする。
「これ、もしかして誠宛?」
「みたい」
俺が答えるとバカと小声で言いながら陽平がつついてくる。
何?
と陽平の方に視線を向けようとすると、いつもより冷たいエミリアの声が聞こえてきた。気のせいだと思いたい
「よかったね、誠『君』。行こうか、陽平。誠君に悪いし」
どうした、お前普段俺に君つけしないだろう。しかも、やけに君を強調しているし……
「お前、空気読めよ。」
陽平がつついてくるが、
「陽平行くよ」
とエミリアに呼ばれ、ため息つきながら俺から離れていく。
「フォローしとくからうまくやれよ。はあ?少しはこちらの苦労も少し考えてほしいぜ。」
フォロー、苦労、何の話だよと思いながら二人を見送る。
これ、行かないといけないパターンだよね。
俺はため息をつきながらシューズに履き替え、俺は屋上にむかった。
☆☆☆☆
屋上にはきれいな頬をピンク色にそめた美少女が、赤い瞳で緊張しながらも俺を見ていた。
武田・薫。俺と同じクラスで新入生代表として挨拶した女の子。
遠くから見ても美人だったけど、近くで見ると見惚れてしまう程の美人だ。
「好きです。私と付き合ってください。」
どこかで似たような声を聞いた覚えがあるような。確か……
駄目だ、思い出せそうで思い出せない。俺が一生懸命考えていると……
「あの?」
武田さんの声で我に帰った。
う~ん、急に告白されてもね……はっきり言って困るんだけど
「ごめん。君の事良く知らないし……」
としか言い様がない。
「そう……なるわよね」
武田さんが泣きそうな表情になる。
女性泣かすのも後味悪いな。
面倒くさいけど仕方ないか
「じゃあ、とりあえず友人からで」
とフォローを入れる事にする。
俺がそう言うと、武田さんは嬉しそうに頷く。
「そうですね。まずは友人から始めましょう。そして、いつかあなたを必ず振り返らせて見せますから」
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