平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です

モモ

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第1部 第2章

王太子と王太子妃、病弱な国王と会談する(上)

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 ナーロッパ歴1056年11月14日10時。

 控え目な紫色のドレスに着替えたアリシアは、ホルステン宮内廷へとアルベルトとアルベルトの侍従武官2名と共に国王の侍従に案内されながら内廷にある国王の館に向かっていた。

 王宮にもいくつかの館があり、内廷は国王等の王族の生活の屋敷がいくつか置かれている。

 渡り廊下を通っていると、アリシアの目に中庭が映る。

 アリシアから見ても中庭はとてもきれいだった。植物の良さをきちんと出しながらも、全体的なバランスを壊さないように植えられている。ホルステン宮の庭師は中々腕が良い。

 渡り廊下を過ぎ、館内に入ると、また長い廊下が続く。
 ピルイン家の館より広い。
(小国とは言え侮れない経済力を持っているのが、こう言う所からも良く解るわね。民を虐げてもいなさそうですし……)
 アリシアが内心で感心していると、
「アリシア、此度のフリーランスの侵攻に対し勝てるでしょうか?」
 とアルベルトが若干不安そうに尋ねて来る。
「アルベルト様はフリーランス一カ国を恐れられているのでしょうか?それともフリーランス以外の旧フラリン王国の属国らが参戦する可能性を恐れられているのでしょうか?」

「後者です。フリーランス王国のみなら恐れませんが、流石に旧フラリン属国らが参戦するとしたら最大3万以上の兵力となります。さらにデーン王国が加わればそれ以上の兵力となる。帝国もこちらの大幅な譲歩を引き換えに援軍を出してくれると思ってはいますが……」
 アルベルトの答えにアリシアは美しい手を顎に当てた後
「アルベルト様、むしろそちらの方が楽に勝てますよ。」
 と答える。
「どういう事です?そうなればこちらでは対抗出来ない大軍勢ですが」

「アルベルト様、頭(かしら)がいない軍勢等所詮は獣の群れのようなものです。たとえ大軍であったとしても獣の群れであればいくらでも狩りようはあります。」

「頭がいない軍勢か……」
 とアルベルトが呟く。確かにフラリン王国存在時であればフラリン王国が統率するであろうが、フラリン王国が滅亡した今、旧フラリン属国らを指導する国家は現状存在しない。

「それに今回は旧フラリン属国6カ国が参戦する可能性は極めて低いかと思います。時期的に申し上げて最大3カ国と言った所でしょうね。」
「時期……そうか。フラリン王国が崩壊して2ヵ月ぐらいしかたっていない。」
 盟主国を失ったフラリン王国の属国らが2ヵ月程度で統一した行動等起こせるわけがない。冷静に考えれば解る事であるが、隣国が自国に対し侵攻準備を整えていると言う報告にアルベルトは普段の冷静さを欠いていた事を自覚した。
(所詮私もまだ未熟な青二才と言う事か。こんな簡単な事に気づけないとは……)
 アルベルトが心の中で自省しているとアリシアが
「そういう事です。ですので、敵戦力は最大3カ国連合2万強とデーン王国の戦力が未知数と言った所です。ゆえにデーン王国の方をまず切り崩すべきかと思います。」
  と続ける。

「切り崩すですか?オレンボー辺境伯の方は取引で無力化を考えていますが……」

「成程」
 そうアリシアは頷いた後
(流石、交易国家の王族。こういう損得勘定は早いですね。)
 と心の中で感心するが口にしたのは別の事であった。
「交渉材料は穀物ですか?」
 アリシアの問にアルベルトは
「そのように考えています。ユクド半島は数年飢饉が続いており、オレンボー辺境伯には十分な交渉価値があると考えています。問題はデーン王国中央にどこまでやる気があるかですが……」
 と答える。
「現状デーン王国王宮は第1王子派と第2王子派の次期王位争いで手一杯です。他国に侵攻する余裕はないと思いますが、万が一どちらかの派閥が侵攻を考えていたとしてももう一方の派閥を買収し牽制すれば宜しいかと。気にすべきはオレンボー辺境伯との取引です。」

「アリシアはどのぐらいの条件を出せば良いと思いますか?」

「わたくしであれば出せるだけ出します。ただし、オレンボー辺境伯軍の出兵と言う条件付きではありますが……」

「成程。これで少しでも兵力を確保しようと言う訳ですか……ただ、出す兵力で条件を付けないとこちらの損が無視できない事になる可能性もありますし……重臣らも反発するでしょう。」
 アルベルトは心の中で
(聡明であると思っていたが……こんな簡単な計算も出来ないとは。所詮は女の浅知恵か……)
 と落胆したが、アリシアが口にした言葉は彼の想定から大きく外れていた。
「出す軍の規模などはっきり言ってどうでも良い事です。重要なのはオレンボー辺境伯が軍を出したと言う事実とリューベック軍と共に戦い、共に血を流し、共に恩賞(褒美)をもらうと言う過程です。これらを得るためであれば例え1万ソリドゥス(ナーロッパで一番使われている金貨の単位)をオレンボー辺境伯に支払ったとしても安い買い物です。」

 アルベルトは首を傾げる。
 確かにオレンボー辺境伯を買収する事には価値がある。オレンボー辺境伯の参戦を防ぐ事により2正面作戦を避けられ、フリーランス王国の国境方面に戦力を集中できる。さらにオレンボー辺境伯軍を援軍として得られればこちらの戦力はより増える。しかし、それに例えであったとしても1万ソリドゥスの価値があるかと言われると……
(そこまでの価値はない。いや、ちょっと待て。オレンボー辺境伯が軍を出したと言う事実とリューベック軍と共に戦い、共に血を流し、共に恩賞(褒賞)をもらうと言う過程が重要?アリシアが見ているのはこの戦争だけの戦略的価値ではなくその先で起こるであろう事態。そういう事か……)

 アルベルトは何を狙っているのか理解した。
「成程。確かにこのための布石と考えれば1万ソリドゥス以上の成果は出せる。どう転んだとしても」
 アルベルトが出した答えにアリシアは満足そうに頷いた。

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