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後日談
【後日談11】帰宅2(セブ視点)
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肩を抱いたままハバトを家奥に引き摺り込むと、体重の軽い彼は蹈鞴を踏んでよろける。それを強引に寝室の壁に縫い付けて衝動のままに口付けた。彼からすれば不意打ちだっただろうが、私を受け入れ慣れているハバトは、とろりと目を閉じた。一分も逃さぬよう、彼のその艷やかな表情をじっと見つめる。合間に、はふりと息を吐く様が一際愛らしい。
甘い甘い口内を深く十分に堪能してから、そっと唇を離して強く抱き寄せる。このひと月足らずの間、想い恋焦がれた愛おしい少年が今腕の中にあることに胸が打ち震える。
「嫉妬していたのか?」
柔らかな赤毛に口付けてから、腕の力を緩めてその顔を覗き込めば、また愛らしく口を尖らせていた。
「……誕生日、一番にお祝いしたかったです」
目を逸らしたままぼつりと溢された言葉に、真っ先に浮かんだのは次月末のハバトの生日だったが、それのことでないことは直ぐに察せられた。彼の生日は疾うに仕事の調整も祝いの準備も密かに済ませている。
「それは、私のか?」
逸らされていた儚げな薄茶の瞳が遠慮勝ちにこちらに向けられた。私を魅了して止まない拙さの残るテノールが「…うん」と小さく答えた。
「これから祝ってくれ。君が望むものを用意しよう」
私が提案した途端、ハバトの色の薄い唇が更に尖った。お気に召さなかったらしい。ハバトの望みは何だろうと思案しながら、尻に敷かれるとはこういうことを言うのだろうかと考える。もしそうならば、それはとても幸福なことのように思う。ハバトの笑顔の為に苦心することは、私にとっては何とも楽しく悦ばしい。
「違います。俺じゃなくてセブさんが欲しいものを知りたいんです。何が欲しいですか?」
そんなもの、ハバト以外に私が欲するものなどない。だが、今それを口にしてしまえばまるでハバトの身体目的のようで少しばかり躊躇われた。私が真に欲しいのは、身体だけではないのだから。
「君から祝いの言葉を貰えればそれで十分喜ばしい」
「それはダメ」
間髪入れず却下された。口を拗ねさせたまま、私の腕の中で身動いだハバトが、おっとりと垂れた眦を懸命に眇めて睨みつけてくる。手に負えない愛らしさだ。
「…おめでとうって、もう他の人にいっぱい言われたんでしょ」
「他の人間からいくら祝われても何も意味もない」
「……他の人と違うものをあげたいんです。でも、セブさんはいろんな人から、いろんなもの贈られてるみたいだから、何をあげたらいいのかわかんなくなっちゃって…」
“私への贈り物”と聞いて思いつくものはエドワーズ士長に処理を任せた迷惑な送付物等だが、そんな不用品とハバトからの贈り物が同列になるわけがない。
「屋敷で見たのか?」
僅かにトパーズの瞳を揺らしてから、また「ごめんなさい」と申し訳無さそうに頷いた。
ハバトの細い腰に手を添えて導き、寝台の縁にゆっくりと腰掛けさせる。恭しく伴侶の手を取り、その眼前で片膝をついた。この世の何よりも大切な存在だというのに、当人にその自覚が足りず困ったものだ。
「ハバト。残念ながら、私には新たに欲しいものなど一つもない。ハバトが私の為に選んでくれるものならどんなものでも嬉しいが、それは君が私を想ってくれることが嬉しいのだ。それ以上に私が望むものなど何もないよ」
よく伝わるよう、真っ直ぐハバトの目を見て、指先まで丁寧に握り込む。私のものと比べると小さいが、節くれ立った指と、骨張った甲をした、紛うことなく男の手だ。それが遠慮勝ちに握り返してくれる。目の縁を赤らめたハバトが、その涙で揺らめく瞳を細めて、それはそれは艷めかしく笑った。
「ふふ。じゃあ、俺がセブさんのして欲しいことなんでもしてあげるって言ったら、他の贈り物より嬉しいですか?」
「ああ。最高の贈り物だ。何でもしてくれるのか?」
「うん。もちろん。えっと、えっちなことでもいいです」
「……それは、恐ろしく魅力的だな」
雀斑の幼げな頬が淡く朱に染まっている。潤んだ瞳に濃い睫毛が影を作っている。小作りな唇から、薄い舌が微かに覗く。愛らしく、愛おしく、煽情的だ。
酷く喉が渇く。私の目は今さぞギラついていることだろう。
「んふふ。よかったです。でも、セブさんごめんなさい。あのね…」
今にも襲い掛からんとする私の手の中から、するりと白い手が抜き取られた。ここに来てのお預けはなかなかに残虐だな、などと情けないことを考えていると、予想に反してハバトの手が私の頬に伸びてきて、手ずつな口付けが落とされた。
「………セブさんの為にって言ったのに、俺が…して欲しくなっちゃった」
恐ろしい。どうやら、我が伴侶は本気で私を殺しに来ているらしい。奥歯を噛み締めたが、喉奥から堪えきれなかった獣じみた唸声が漏れた。
「…いつもより酷くしてしまいそうだ」
「いいですよ。俺はあなたのものだから」
嬉しそうに目を細めるハバトが愛おしくて胸が熱くなる。
私だけのものだ。ハバトは私の唯一で、私の幸福で、私の全てだ。
甘い甘い口内を深く十分に堪能してから、そっと唇を離して強く抱き寄せる。このひと月足らずの間、想い恋焦がれた愛おしい少年が今腕の中にあることに胸が打ち震える。
「嫉妬していたのか?」
柔らかな赤毛に口付けてから、腕の力を緩めてその顔を覗き込めば、また愛らしく口を尖らせていた。
「……誕生日、一番にお祝いしたかったです」
目を逸らしたままぼつりと溢された言葉に、真っ先に浮かんだのは次月末のハバトの生日だったが、それのことでないことは直ぐに察せられた。彼の生日は疾うに仕事の調整も祝いの準備も密かに済ませている。
「それは、私のか?」
逸らされていた儚げな薄茶の瞳が遠慮勝ちにこちらに向けられた。私を魅了して止まない拙さの残るテノールが「…うん」と小さく答えた。
「これから祝ってくれ。君が望むものを用意しよう」
私が提案した途端、ハバトの色の薄い唇が更に尖った。お気に召さなかったらしい。ハバトの望みは何だろうと思案しながら、尻に敷かれるとはこういうことを言うのだろうかと考える。もしそうならば、それはとても幸福なことのように思う。ハバトの笑顔の為に苦心することは、私にとっては何とも楽しく悦ばしい。
「違います。俺じゃなくてセブさんが欲しいものを知りたいんです。何が欲しいですか?」
そんなもの、ハバト以外に私が欲するものなどない。だが、今それを口にしてしまえばまるでハバトの身体目的のようで少しばかり躊躇われた。私が真に欲しいのは、身体だけではないのだから。
「君から祝いの言葉を貰えればそれで十分喜ばしい」
「それはダメ」
間髪入れず却下された。口を拗ねさせたまま、私の腕の中で身動いだハバトが、おっとりと垂れた眦を懸命に眇めて睨みつけてくる。手に負えない愛らしさだ。
「…おめでとうって、もう他の人にいっぱい言われたんでしょ」
「他の人間からいくら祝われても何も意味もない」
「……他の人と違うものをあげたいんです。でも、セブさんはいろんな人から、いろんなもの贈られてるみたいだから、何をあげたらいいのかわかんなくなっちゃって…」
“私への贈り物”と聞いて思いつくものはエドワーズ士長に処理を任せた迷惑な送付物等だが、そんな不用品とハバトからの贈り物が同列になるわけがない。
「屋敷で見たのか?」
僅かにトパーズの瞳を揺らしてから、また「ごめんなさい」と申し訳無さそうに頷いた。
ハバトの細い腰に手を添えて導き、寝台の縁にゆっくりと腰掛けさせる。恭しく伴侶の手を取り、その眼前で片膝をついた。この世の何よりも大切な存在だというのに、当人にその自覚が足りず困ったものだ。
「ハバト。残念ながら、私には新たに欲しいものなど一つもない。ハバトが私の為に選んでくれるものならどんなものでも嬉しいが、それは君が私を想ってくれることが嬉しいのだ。それ以上に私が望むものなど何もないよ」
よく伝わるよう、真っ直ぐハバトの目を見て、指先まで丁寧に握り込む。私のものと比べると小さいが、節くれ立った指と、骨張った甲をした、紛うことなく男の手だ。それが遠慮勝ちに握り返してくれる。目の縁を赤らめたハバトが、その涙で揺らめく瞳を細めて、それはそれは艷めかしく笑った。
「ふふ。じゃあ、俺がセブさんのして欲しいことなんでもしてあげるって言ったら、他の贈り物より嬉しいですか?」
「ああ。最高の贈り物だ。何でもしてくれるのか?」
「うん。もちろん。えっと、えっちなことでもいいです」
「……それは、恐ろしく魅力的だな」
雀斑の幼げな頬が淡く朱に染まっている。潤んだ瞳に濃い睫毛が影を作っている。小作りな唇から、薄い舌が微かに覗く。愛らしく、愛おしく、煽情的だ。
酷く喉が渇く。私の目は今さぞギラついていることだろう。
「んふふ。よかったです。でも、セブさんごめんなさい。あのね…」
今にも襲い掛からんとする私の手の中から、するりと白い手が抜き取られた。ここに来てのお預けはなかなかに残虐だな、などと情けないことを考えていると、予想に反してハバトの手が私の頬に伸びてきて、手ずつな口付けが落とされた。
「………セブさんの為にって言ったのに、俺が…して欲しくなっちゃった」
恐ろしい。どうやら、我が伴侶は本気で私を殺しに来ているらしい。奥歯を噛み締めたが、喉奥から堪えきれなかった獣じみた唸声が漏れた。
「…いつもより酷くしてしまいそうだ」
「いいですよ。俺はあなたのものだから」
嬉しそうに目を細めるハバトが愛おしくて胸が熱くなる。
私だけのものだ。ハバトは私の唯一で、私の幸福で、私の全てだ。
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