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籠城後編
籠城⑦
しおりを挟む焚き木の灯りを頼りに近く落ちていた本を読む
隣には気を未だ失ったハクが居た。
クリス「そろそろペットボトルが冷える頃か」
お湯を沸かしペットボトルに入れ替え看病を続ける
「食料が少ないな……何かハクに流し込める様な
食い物を探さないと」
次の日の朝になるとクリスは食べ物を探しに民家を
離れた、体を温める焚き木にペットボトル
病人を抱えての遠距離移動は出来ない、
焚き木が消え難い様に細工するのに時間がかかり
時間は昼3時を過ぎていた。
慌て支度をするクリス
「焚き木が消えるまでには帰らないと」
自分でも少し笑った、人の為にこんなに努力する事
なんて家族や恋人位しかないと思っていた。
「でも悪くない……うん……悪くない」
民家に侵入するも破壊や既に荒らされ物資は
ほぼ残ってはいなかった。
「人が多く生き残る時間の猶予はもう少ないな」
出来上がった食べ物や食料はもうほとんど無く
交配した野生化した野菜等も最早
スーパーで見る様な立派なものは既に殆どが消滅
していた。
彼は数少ない畑を諦め民家を中心に回った、
それは何故か、意味があった。
種の交配を防ぎ、尚且つ育つ野菜、それは家庭菜園
だった、鉢に植えられているモノなら当時の野菜が
手に入るアイツに栄養価の高い飯が作れる
そう思っての事だった。
『キィ……』
民家の玄関の門を開ける
田舎風建築だ、庭もあった、雑草がボウボウと
生えるも草を掻き分け探す
「……あった!」
「トマト!それにカボチャじゃねーか!」
「なになに?何か書いてあるな……」
「品種?名前か……」
掌サイズの可愛いカボチャ
「……坊ちゃん」
思わず腹を抱えて笑うクリス
「ククク……アイツに似合い過ぎる!坊ちゃんが
坊ちゃんを救うのか」
「坊ちゃん用カボチャポーション!」
手に取ったカボチャは小さいが立派なものだった、
カボチャは栄養価も高く病人食や離乳食でも
使われる。
「……それもこんなに立派に」
それは正解だった。完全に無事な部屋でのものなら
枯れているのは当然だが雨風が注ぐベランダや
庭での捜索は難航したものの充分な野菜が取れた。
クリス「此処に住んでた誰かは知らねぇが……
感謝する」
もうこの世には居ない可能性が高い見知らぬ住人に
手を合わせ感謝を込めて野菜を収穫した。
次々と民家を周り充分な量の野菜を手に入れた。
最後に一件立ち寄ったクリス、其処には米袋が
大量にあるのを発見する。
「おおおっ!米だ!」
駆け寄り膝をつき貪る様に袋を開けて
手に取り匂いを嗅ぐ……
「カビてねぇな……今、食中毒は絶対に避けなきゃ
ならねぇからな」
丁寧に手で取り虫が湧いてないかを見る。
「虫もOK……だな」
「これだけありゃ……アイツに美味しいもん作って
やれる」
そう思うだけで心が躍る彼であった。
『コト……』
その時
その時、微かな物音と背後に人の気配を感じた
クリスは即座に物陰に隠れた。
(人か……?ゾンビか……獣だと厄介だぞ……)
片手にナイフを握りしめ夕暮れで差し込む光を
遮る影、それを頼りに気配の元を辿る。
クリス「……」
何時もより慎重なクリスだった、今自分が
殺られればハクも同じ道を辿る
自分自身の事よりもハクの事を心配しての行動
だった、その思いの行動はより安全に配慮し
彼自身の危機からの生存確率を上げる。
何かあって殺し合いになったとしても勝負に
勝っても自分も傷付けばハクも同じ道を辿る。
ギシギシと音がする。
一定間隔の音……歩幅感覚に答えは人間だ
しかし歩幅は狭い、そして遅い……
「歩が遅い……それに歩幅が小さい、慎重だから?
では無いな……年寄りか?」
手持ちの小さな鏡に埃をかけ光が反射しないよう
気を配りその様子を伺った。
そしてその正体は年老いた老婆だった。
クリスはナイフを納め壁を優しく2回叩いた
「コンコン……」
老婆に人間が居ると教える為、そして挨拶の合図を
する事で警戒心を極力減らす為の行為だ。
老婆はその音に気付いた
老婆「……誰か居るんかえ?」
クリス「こんにちは、怪しい者ではありません、
敵意もありません、今から姿を現しますが、どうか
怖がらないでいて欲しい」
丁寧に優しくクリスは言った。
礼儀のある優しい言葉に老婆も少し安心したようだ
老婆「解りました、出てきていいですよ」
クリスは相手に敵意がない事を示す為両手を挙げ
立ち上がる。
老婆「まぁまぁこんな所で何してんだい」
クリス「すいません食べ物を探していました、
貴方の家ですね?此処は、さっき米を見つけて」
老婆「古米だね、置いてあるよ、私も其れを取りに
来たんだよ……」
クリスは老婆に走り寄り足元に跪き老婆に懇願した
クリス「すいません!知り合いが……ハクが!
病気で!どうか……どうか米分けて貰えませんか!
お願いします!お願いします!彼の分だけで
いい!……お願い……します」
老婆から見たクリスは背中を丸めこの老人から
無理やり取ろうと思えば取れる状況だったにも
関わらず懇願する彼の本当は大きいが小さく見える
背中にそっと手を置き語りかけた。
老婆「私は照子て言うのよ……貴方の大事な友達が
これを必要とするなら持っていっても構わないわよ
ホラ、立ちなさい男の子がこんな老婆の足にすがる
なんて余程大事な人なんでしょうに……」
老婆の優しい手がクリスの背中に伝う
顔を上げたクリス顔を見た照子は驚いた。
照子「まぁ!アンタ顔色が悪いわよ!それに
ガリガリに痩せてまぁ……」
クリスは自分の食料を殆ど手に付けずハクに
食べさせていた。
照子「思いやりのある子なんだね……アンタは」
老婆はクリスの頭を優しく包み込む様に抱きしめた
クリス「……暖かい」
照子「そうだわ、此処の近くに人が集まる集会所が
あるからアンタとアンタの友達も
連れてらっしゃいよ」
クリス「……いいのか!」
照子は優しく微笑んだ。
安堵とはこう言った事なのかと初めて知るクリス
過去1人で戦ってきた彼にとって安堵とは自分の
命が危険になって危機を回避できた時の感覚だった
だが今の安堵はそれとは違ったものだった。
クリス「……感謝します」
何度もお礼を言った、照子が呆れる位に
しかし日が沈みそうな時間にクリスは一旦、ハクの
元に戻らねばならない、照子さんも夜は危険が伴う
地図を渡されたクリスは足早に戻り、夜が開け次第
照子さんのいる集会所へ向かう事にした。
そして夜を迎える……
何物かが2人の居る民家に近付いていた
軽くゾンビをなぎ払い近づく影が一つ……
【今日のポイント】
カボチャ
カリウム、リン、マグネシウム
(体内では作れない)
ビタミンA 、aカロテン、βカロテン、
βクリプトキサンチン
ビタミンB群B1、B2、B6、葉酸、ナイアシン
パントテン酸、ビオチン
消化には悪いが栄養価も高く、胃腸を刺激しない
消化が悪いとはいえ逆に栄養を体が吸収する時間
ができる為、離乳食や病人食で使われる。
プランターでも栽培出来る。
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