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第4章
邂逅
しおりを挟む惨劇から10日過ぎた頃
リアムは森の中を彷徨っていた。
時折、頭に聞こえてくるヌクの言葉に耳も貸さないリアム
彼の体はネロを助ける為、最も激しく、欲しいと願った腕が
現世で具現化していたが、リアムは次の修行場へと向かう事を
拒否していた。
今の彼には力を欲する心の根源に迷いがあった。
己自身の不甲斐なさに、決断力のなさに、力の無さに……
弱さは己のにみならず人をも巻き込む、中途半端な
今の自分では、また大勢の命をも奪いかねない恐怖に
頭の中を掻きむしられる感覚に、更に頭痛が激しく襲う。
数キロ歩く度に吐き気に襲われ、足を度々止める姿は
痛々しかった。
冷たい雨が降り始め、体が冷えても尚、当て所なく目的もなく
彼はひたすらに歩いて行く。
この世界では 体を手に入れたリアムではあったが
思考は止まっていた。
腹が減れば、本能で鹿や兎を狩る。
慣れた手つきに思考は要らず、ひたすらに思考の全てを後悔に
費やした。
私は何も出来ない。
私が関わった人は不幸になる。
全ては私の至らなさが招く事。
人は信用できない
関わるのが怖い……
魔物が憎い
人が憎い
価値ある命とは……
価値の無い命とは……
そもそも価値なんてものは存在するのか……
正しい事は、正しい判断とは……
悪とは、善とは……
もがいた先に何か……あるのか……
そして……森の奥で倒れたリアムであった。
倒れゆく…間に彼の目に、居ないはずのネロの姿が見える
彼は幻影にひたすらに頭を垂れ、謝り続けながら
意識を失った。
ーー
次の日リアムは見知らぬベッドの中で目を覚ました。
やけに騒がしい会話が遠くから聞こえる。
彼が目を覚ますと、ベッドの横に1人の男がリアムを見ていた。
今のリアムは自暴自棄に陥っていた。
見知らぬ男に何をされようが抵抗する気力も無い。
リアム「お……れに、何か……よう……か……?」
焦る事もなく生気を感じない細い声で問う。
男 「お前の事は町で見ていた」
リアム 「……」
男「お前を助けたのは俺達だ、ついでにお前の変形した声帯も
普通に喋れるように治療しておいた。
何故かお前の足に付く鎖は取れなかったが、呪いの類だろう」
男「率直に言おう、お前、行くところが無いなら
我が組織に入れ、我が組織は殺し屋を生業にし……」
‼︎
すかさずリアムはベッドから飛び起き
男の首を力任せに締めた。
その目は真っ赤に、その怒りは傷ついた体から一瞬で湯気が
出る程にその激しい感情を男に向けた。
男「まっ……待て……」
リアム「語る……な」
‼︎
首に冷たい硬い感触にリアムは背後を向こうとしたが
リアムの左右、背後に黒装束の男たちがリアムの首に
いつの間にかナイフの刃を立てていた。
男「落ち着け、お前の町で襲撃した殺し屋とは違う」
「俺たちはみんな、お前と同じ人間でありながら、差別や
虐待により、一般社会から人として追い出された者達だ」
「ほとんが元、奴隷で構成されている」
「この世には裁かなければならない命がある、弱き者を
地獄から救う為、1人ではなし得ない事をするのだ」
「お前の戦いを見た、我ら生きる為に人を越えた存在と
なった者達、堕落や怠惰を貪る人間達とは違う
人を捨て人を救う闇の組織なのだ」
「この世には魔物が存在する。その力は人を遥かに超える者だ
唯一、対抗できる力を持った者達が、お前を含め、
人でありながら、人を越えた者、それを生む諸悪の根源たる
人間を抹殺する所業を持った殺人鬼と呼ばれる存在なのだ」
「しかし我等も類たるは人間、全ての人間を抹消するのが求める
ものでは無い。諸悪の元となる者を暗殺するのが目的だ、
その多くは野盗や政治家、貴族、時には傭兵として戦争に
参加する事もしばしばある、対象の幅は広い」
「お前は人が憎かろう、魔物が憎かろう。
各地域、お前が相手にした魔物も最近では頻繁に目撃されている
その討伐も我らの仕事の一環である」
我等の目的はこの国の改革だ、人が人で暮らせる世の中に
する事を最大の目的をして活動している」
「お前の名は少年がリアムと呼んでいたな
リアムよ我らと来い!お前に求めるものがあるならば」
リアム「……」
「おっと紹介が遅れたな、私の名はドルフ・アルドルア
アルと呼んでくれ、そして組織の名は『鴉のついばみ』だ」
《リアムが入団した暗殺ギルド『鴉のついばみ』はこの世界
において数多くあるギルドの中でも1位、2位を争う強さを
誇り、かつ、その活動や人員などに於いて殆どの情報が不明な
暗殺ギルドであった》
自暴自棄に捕らわれていた彼は世界に絶望し、自分を憎み
人を憎み、社会を憎んだ彼はギルドの活動目的が少なからず今の
行き場のない怒りを鎮める目的に身を任せ
闇の組織に入団する事となった。
ーー月日は流れ2年
暗殺者になる為に厳しい訓練が毎日行われた。
この時代、町や村、規模に関わらず混沌の時代、生き抜く
強さは現代の比ではなかった。
村人でさえ、己や家族、権力を守るために。
人間の常識を越えた所にある強さを身につける為に
組織は、あらゆる任務を遂行する為に暗殺術から初まり隠行
盗賊術、更には魔物に対抗できるだけの力をつけるのだ。
誰でも訓練に耐えれる訳ではなく、一握りの者だけが、訓練を
乗り切り組織の一員となる。
逃げる者、耐えられない者、見限られた者は全て、組織の秘密
保持の為に消される者が大半であった。
その過酷な訓練の中でもリアムは群を抜いて成果を上げていた。
元々の身体能力の高さ、精神力の高さに加え葛藤を打つ消すか
の様に鬼気迫る訓練を更に自ら課し、まるで自ら己を殺す様な
鬼気迫る修行に明け暮れた。
その中でもリアムは会話をせず仲間を作る事も無い彼に嫉妬と
妬みを感じる者も少なからずいた。
この訓練に耐えても成績の悪い者は例に漏れず、訓練中で
あっても昼夜問わず、寝る時すら教官に殺害されるからだ。
模擬対戦でリアムに当たった者は運が悪く、彼の前では健闘は
なくその醜態をさらす事に命の危険を感じる者も多く、
その日の内に消される者もかなりいた。
ーー
「ガチャ……」
骸骨の仮面を被った男がリアムの部屋に入ってきた。
「俺は仲買人……お前に指令が下った。
此処から西へ30キロ程行った場所にあるコントール山に拠点を
持つ盗賊団《キラーブッシュ》構成員約30名と、その首領
ビルド・ホーキング抹殺せよ」
「お前にこれを渡しておく……」
そういうと仲買人は青白く光る小さな石をリアムに渡した。
『囲いの石』と言うものだ。
「扱いには注意しろ、これはこの世界には無い鉱石で造られた
物だ。中には囲いの魔力が封じ込められている」
発動には対象の者に強く恨みを持つ者の血が必要だ、その血が
恨みを持つ対象と所持するお前をある空間へと一定の時間
閉じ込める事が出来る代物だ。
「その空間は恨みを持つ者の世界観が色濃く出現し、その石を
持つお前に力を貸してくれる」
「忘れるな、暗殺者と言えど一人で30人を相手に戦えると思うな
烏合の衆ならともかく、徒党を組む盗賊団では分が悪い。
その石を使い事を有利に運ばないとお前に勝機は無い」
《囲いの闇石ーー《鴉のついばみ》のS級暗殺者のみに所持を
許された鉱石、発動には空間を保持する為の恨みの想念と
対象の血が大量に必要となる為、発動者は生を放棄する事となる。
また、その空間から脱出するに当たっても恨まれた側の大量の
血を空間内にある祭壇に捧げなければ解除する事は出来ない》
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