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第1部
③
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そんな声がして振り向くと、顔をほとんどショールで覆った男性がいて、ショールをとり少しずつ顔を覗かせる。
「エリアス王子」
周りで様子を見ていた女の子達が
「レーゲンブルクのエリアス王子よ!」
「やっぱり素敵・・・!眼福!」
ときゃあきゃあしだした。
エリアスの美形ぶりは大きくなってますます拍車がかかったわ。
舞の世界のアイドルみたいに有名で、絵姿なんかも流行っているけど、ロートブルでも人気とは。
私は、
「王子もロートブルへきていたのですか?」
「ああ、休暇も兼ねてはいるが、この国の王族の方々との集まりもあってね…、ロートブルの福祉関係も興味があるんだ。
私も一緒に行って良いか?」
「もちろんです。一緒に参りましょう」
私はそう言うと、ぞろぞろと2台の馬車を連ねてソアレスの家へ向かうことになった。
ソアレスの家は街の外れの小さな一軒家だった。
ソアレスが馬車から飛び降りると、家の中に入っていく。
家の中は一間のみで、すごく狭い。
私は舞の世界を朧気に覚えていてこの狭さに驚きはしなかったが、キースは無言で目を見開いている。
エリアスは口元を控えめに隠す。
腐ったような匂いが充満しているのだ。
床にかガリガリに痩せた幼児と、まだハイハイくらいの赤ちゃんがうつ伏せに倒れている。
急いで屈んで首元を探り、ホッとした。
「息はあるわ。かなり衰弱している…、ムスタファ、買ってきたリンゴジュースをとって。
あと、パンかゆを作れるかな」
ムスタファが大きな体をあちこちぶつけながら、火の魔鉱石を懐から取り出し調達した材料で慣れた感じで料理し始める。。
ムスタファ、家では結構料理するのかな。。
私はまず赤ちゃんをそっと抱き上げた。
子供達は少しずつパンかゆを口にして落ち着いてきたので、ソアレスに詳しく事情を聞く。
ソアレスの母は女一人で子供達を育てていたが、男ができるとわずかの金と食料を置いて子供を放っておいてしまい、それでも2、3日でいつも戻ってきていたが、段々と日が長くなり今回は1週間も帰ってこない。
金も食料も尽きてソアレス達はどうしてよいか分からず、長男としてなんとかしなければ、と外に出て、屋台の食べ物に手をだしてしまったらしい。
この世界の家には必ず設置してある魔鉱石のおかげで、水と暖房は確保してあってよかったわ。
私は少し考えて、
「ロートブルの孤児院に連絡して、三人を保護してもらいましょう。
母親は虐待罪で逮捕しなければ。
ムスタファ、お願いできる?」
「かしこまりました。アイシャ様」
ムスタファとキースの護衛騎士がそろって動き出した。
「母ちゃん、捕まるのか?」
ソアレスが顔を青くして問う。
「そうよ。子供を放っておくのは罪だからね。
ソアレスが動いてくれなければ、三人とも命を落としてたよ、頑張ったね。ソアレス。
でもね、こういう時は、周りの大人に頼っていいんだよ」
そう行ってソアレスの頭を撫でた。
ソアレスは涙目になりながら小さく頷く。
エリアスが、
「そうだぞ。このロードブルの孤児院は、広い屋敷で広ーい庭もある。
子供達が大勢いて、飢えることもないし学校も行かせてくれる。
院長も立派な方だ。もう、大丈夫だぞ」
と微笑んだ。
子供達にはこんな優しい笑顔になるのね、と私は珍しいものを見たようにじっと見つめてしまった。
様々な手続きをムスタファ達が済ませ、ソアレス達はほとんど着の身着のままで、孤児院からきた係員に連れられていった。
最後に、「お姉ちゃん、ありがと…」と呟いて。
母親は捜索中だが、恐らく早々に捕まるだろう。
子供をほっておいて男をとるような女は、子を育てる資格なんてないよね、厳罰にしてほしいわ、と私は心の中で憤慨した。
その帰り道、キースはふーっとため息をついて
「アイシャは凄いな。
僕はどうすれば良いか、どう声をかければよいか分からなくて、全く動けなかったよ。
恥ずかしい」
「そんな事ないよ、それが普通だよ。
私は・・ソアレスの必死な顔を見て、何も考えず動いちゃったの」
舞の世界でも、育児放棄された子供が病院へ入院したことがあり、気になってしまったのだ。
「アイシャ殿、本当に素晴らしい対応だった」
エリアスが微笑みながら、
「今日、たまたま孤児院を見学させてもらっていてね、レーゲンブルクでも参考にしたいところが沢山ある、いい施設だったんだ。
…あの子達もきっと、今より幸せに暮らせる」
「はい、そうなるよう、願っています」
にっこりと微笑む。
一瞬、眩しそうな顔をしたエリアスが、少しクセのあるプラチナブロンドをかきながら、
「…ところで、アイシャ殿、もし良かったら、明日、乗馬でもどうだろうか」
と少し俯きがちに言う。
「申し訳ありません。明日は用事があって」
モナハンとそりをする約束だ。
「そ、そうか、じゃあ、明後日はどうだ?」
「すみません、明後日も用事がありまして…」
キースと釣りに。
「…そうか」
なんだか、エリアスと出かけたくないように聞こえてないだろうか、そんな事はないのだと伝えようとしたところで、通信機がなった。
お母様からだ。
「少々、失礼します」
と少し離れてお母様と話す。
この件についてムスタファから連絡があったらしく詳しく聞きたいので早く帰ってこいとのこと。
怒ってはいない感じだけど、心配したよね、多分。
二人に帰ると伝えてそのままムスタファと馬車に乗る。
なんかエリアスの表情が固いような…、
やはり印象が悪かったよね…と思いながら、私は帰途へ着いたのだった。
「エリアス王子」
周りで様子を見ていた女の子達が
「レーゲンブルクのエリアス王子よ!」
「やっぱり素敵・・・!眼福!」
ときゃあきゃあしだした。
エリアスの美形ぶりは大きくなってますます拍車がかかったわ。
舞の世界のアイドルみたいに有名で、絵姿なんかも流行っているけど、ロートブルでも人気とは。
私は、
「王子もロートブルへきていたのですか?」
「ああ、休暇も兼ねてはいるが、この国の王族の方々との集まりもあってね…、ロートブルの福祉関係も興味があるんだ。
私も一緒に行って良いか?」
「もちろんです。一緒に参りましょう」
私はそう言うと、ぞろぞろと2台の馬車を連ねてソアレスの家へ向かうことになった。
ソアレスの家は街の外れの小さな一軒家だった。
ソアレスが馬車から飛び降りると、家の中に入っていく。
家の中は一間のみで、すごく狭い。
私は舞の世界を朧気に覚えていてこの狭さに驚きはしなかったが、キースは無言で目を見開いている。
エリアスは口元を控えめに隠す。
腐ったような匂いが充満しているのだ。
床にかガリガリに痩せた幼児と、まだハイハイくらいの赤ちゃんがうつ伏せに倒れている。
急いで屈んで首元を探り、ホッとした。
「息はあるわ。かなり衰弱している…、ムスタファ、買ってきたリンゴジュースをとって。
あと、パンかゆを作れるかな」
ムスタファが大きな体をあちこちぶつけながら、火の魔鉱石を懐から取り出し調達した材料で慣れた感じで料理し始める。。
ムスタファ、家では結構料理するのかな。。
私はまず赤ちゃんをそっと抱き上げた。
子供達は少しずつパンかゆを口にして落ち着いてきたので、ソアレスに詳しく事情を聞く。
ソアレスの母は女一人で子供達を育てていたが、男ができるとわずかの金と食料を置いて子供を放っておいてしまい、それでも2、3日でいつも戻ってきていたが、段々と日が長くなり今回は1週間も帰ってこない。
金も食料も尽きてソアレス達はどうしてよいか分からず、長男としてなんとかしなければ、と外に出て、屋台の食べ物に手をだしてしまったらしい。
この世界の家には必ず設置してある魔鉱石のおかげで、水と暖房は確保してあってよかったわ。
私は少し考えて、
「ロートブルの孤児院に連絡して、三人を保護してもらいましょう。
母親は虐待罪で逮捕しなければ。
ムスタファ、お願いできる?」
「かしこまりました。アイシャ様」
ムスタファとキースの護衛騎士がそろって動き出した。
「母ちゃん、捕まるのか?」
ソアレスが顔を青くして問う。
「そうよ。子供を放っておくのは罪だからね。
ソアレスが動いてくれなければ、三人とも命を落としてたよ、頑張ったね。ソアレス。
でもね、こういう時は、周りの大人に頼っていいんだよ」
そう行ってソアレスの頭を撫でた。
ソアレスは涙目になりながら小さく頷く。
エリアスが、
「そうだぞ。このロードブルの孤児院は、広い屋敷で広ーい庭もある。
子供達が大勢いて、飢えることもないし学校も行かせてくれる。
院長も立派な方だ。もう、大丈夫だぞ」
と微笑んだ。
子供達にはこんな優しい笑顔になるのね、と私は珍しいものを見たようにじっと見つめてしまった。
様々な手続きをムスタファ達が済ませ、ソアレス達はほとんど着の身着のままで、孤児院からきた係員に連れられていった。
最後に、「お姉ちゃん、ありがと…」と呟いて。
母親は捜索中だが、恐らく早々に捕まるだろう。
子供をほっておいて男をとるような女は、子を育てる資格なんてないよね、厳罰にしてほしいわ、と私は心の中で憤慨した。
その帰り道、キースはふーっとため息をついて
「アイシャは凄いな。
僕はどうすれば良いか、どう声をかければよいか分からなくて、全く動けなかったよ。
恥ずかしい」
「そんな事ないよ、それが普通だよ。
私は・・ソアレスの必死な顔を見て、何も考えず動いちゃったの」
舞の世界でも、育児放棄された子供が病院へ入院したことがあり、気になってしまったのだ。
「アイシャ殿、本当に素晴らしい対応だった」
エリアスが微笑みながら、
「今日、たまたま孤児院を見学させてもらっていてね、レーゲンブルクでも参考にしたいところが沢山ある、いい施設だったんだ。
…あの子達もきっと、今より幸せに暮らせる」
「はい、そうなるよう、願っています」
にっこりと微笑む。
一瞬、眩しそうな顔をしたエリアスが、少しクセのあるプラチナブロンドをかきながら、
「…ところで、アイシャ殿、もし良かったら、明日、乗馬でもどうだろうか」
と少し俯きがちに言う。
「申し訳ありません。明日は用事があって」
モナハンとそりをする約束だ。
「そ、そうか、じゃあ、明後日はどうだ?」
「すみません、明後日も用事がありまして…」
キースと釣りに。
「…そうか」
なんだか、エリアスと出かけたくないように聞こえてないだろうか、そんな事はないのだと伝えようとしたところで、通信機がなった。
お母様からだ。
「少々、失礼します」
と少し離れてお母様と話す。
この件についてムスタファから連絡があったらしく詳しく聞きたいので早く帰ってこいとのこと。
怒ってはいない感じだけど、心配したよね、多分。
二人に帰ると伝えてそのままムスタファと馬車に乗る。
なんかエリアスの表情が固いような…、
やはり印象が悪かったよね…と思いながら、私は帰途へ着いたのだった。
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