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第三章 甘い香りとティータイム
001 小さなお客様
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朝食はメアリ特製のフレンチトースト。
これに合うのはやっぱり蜂蜜である。
セシルはいつもの倍くらいの蜂蜜をたっぷりとかけた。
今日は好きなだけ蜂蜜をかけていい。いつも冷たい視線を向けてくる無愛想なご主人様はいないのだから。
目の前にいるのは優しい眼差しをセシルに向けるメアリだけ。
「あ~。美味しい! あの人がいないと、いつもの倍くらい美味しいわ!」
「あらあら。セシルったら。いつもと同じ味のはずですよ?」
「うふふ。気分の問題です。あ~。今日は空気も美味しい!」
天気は快晴。目付きの悪いご主人様も、嫌みを言う赤髪の執事もいない。セシルの心の中もすっきりと晴れ渡る様な気分だった。
これが一週間も続くと思うと、自然と笑みが溢れた。
◇◇
庭で掃除をしていると、屋敷の方から甘い香りが漂ってきた。
これはメアリのクッキーに違いない。普段なら、こんな甘い香りがお茶の時間に漂っていたら、アルベリクは嫌な顔をするだろう。
しかし、今日はいない。明日もいない。言い様のない解放感にセシルは包まれていた。
セシルは庭に設置されたテーブルと椅子に目を向けた。今日はあそこでメアリとティータイムを楽しむ予定だ。いつもセシルを見張るように庭のテーブルに居座るアルベリクの姿はない。
セシルが夢のティータイムに思いを馳せていると、ティーセットを抱えたメアリが現れた。
「セシル。お茶の時間にしましょう」
「はい!!」
テーブルの中央に置かれた大皿には上品にならんだ沢山のクッキー。二人で食べるにはちょっと多いように感じたが、メアリはクッキーに釘付けのセシルに頬を緩ませ、紅茶を順にカップへと注いだ。
「さあ、召し上がれ」
「うわぁ~美味しそう」
「「「いっただっきまぁ~す」」」
セシルはクッキーを頬張り、その美味しさに悶絶した。そして、ふと疑問を抱いた。
今、自分と一緒に「いただきます」を言ったのはだれだろうか……と。
「美味しい~」
「やっぱり婆やのクッキーは世界一だよね!」
「「ね~!」」
セシルの向かいにはメアリが、そして両隣には見知らぬ子ども達が座っていた。金色の髪にエメラルドの瞳の子供が二人、クッキーを美味そうに口に運び、幸せそうに談笑している。
どちらも女の子みたいに可愛らしいが、服装からして男女であることが分かる。どこかで見たことがあるような顔だけれど……。
「あの……お二人は?」
「僕はレオン」「私はクロエ」
二人は同時に声を発した。重なりあった声はそっくりで、何と言ったのかは分からなかった。
メアリはそれを察したのか、二人をセシルに紹介してくれた。
「こちらはアルベリク様のご弟妹のレオン様とクロエ様です。お二人とも、こちらは新入りメイドのセシルです。仲良くしてあげて下さい」
「「はーい」」
「ねえ。セシル。クッキー食べたら、かくれんぼしよう」
「しよ~」
エメラルドの瞳をキラキラと輝かせて、二人はセシルにお願いする。アルベリクとは似ても似つかない真ん丸の大きな瞳に、輝く金髪。何とも愛らしいではないか。
「はい。良いですよ」
「「やった~」」
セシルは甘い香りにつられてやって来た二人のお客様のお相手をすることになった。
◇◇
木の影から双子はセシルを覗き見た。
セシルは今、庭の真ん中で大声で数を数えている。二人は顔を見合わせると、口元に悪戯な笑みを浮かべた。
「ねぇ。クロエ。あのメイド、バカそうだね」
「うん。レオン。あのメイド、バカだと思う」
「「ふふふ。どうやって遊ぼっか?」」
◇◇
セシルは庭で双子とかくれんぼ中である。オニはずっとセシルが担当しているため、色々と分かってきた。
双子は何故か二人で同じところに隠れる。木の後ろだったり大きな鉢の裏だったり、メアリの後ろだったり。
そして、身体のどこかが大体見えているのだ。
今回は、大きな鉢の左右から、それぞれのお尻が見えていた。
「みーつっけた!」
「「わぁ~。見つかっちゃったぁ~」」
見つかると二人は嬉しそうに天使のような笑顔になる。
可愛い。あのアルベリクの弟妹とは到底思えないくらいに。
「ねぇ。セシル。もう一回オニやって~」
セシルのスカートをギュッと掴んで甘えてくるのはレオンだ。クロエと顔はそっくりだが、レオンの方が男の子らしく活発である。
「今度は見つからないんだからね」
今、セシルに向かって可愛らしく宣戦布告したのはクロエだ。指示を出すのはクロエ、すぐ行動に移すのはレオンといった印象を受けた。
「よぉし。じゃあ数えるから隠れてね~」
「「はぁ~ぃ!!」
「いーち。にーい、……」
セシルが大きな声で数を数え始めたその横で、双子はヒソヒソ話をしていた。
「ねぇ。クロエ。そろそろやろう」
「うん。レオン。そろそろやろう」
声を殺して笑い合い、二人は庭で一番大きなナラの木へと駆けていった。
これに合うのはやっぱり蜂蜜である。
セシルはいつもの倍くらいの蜂蜜をたっぷりとかけた。
今日は好きなだけ蜂蜜をかけていい。いつも冷たい視線を向けてくる無愛想なご主人様はいないのだから。
目の前にいるのは優しい眼差しをセシルに向けるメアリだけ。
「あ~。美味しい! あの人がいないと、いつもの倍くらい美味しいわ!」
「あらあら。セシルったら。いつもと同じ味のはずですよ?」
「うふふ。気分の問題です。あ~。今日は空気も美味しい!」
天気は快晴。目付きの悪いご主人様も、嫌みを言う赤髪の執事もいない。セシルの心の中もすっきりと晴れ渡る様な気分だった。
これが一週間も続くと思うと、自然と笑みが溢れた。
◇◇
庭で掃除をしていると、屋敷の方から甘い香りが漂ってきた。
これはメアリのクッキーに違いない。普段なら、こんな甘い香りがお茶の時間に漂っていたら、アルベリクは嫌な顔をするだろう。
しかし、今日はいない。明日もいない。言い様のない解放感にセシルは包まれていた。
セシルは庭に設置されたテーブルと椅子に目を向けた。今日はあそこでメアリとティータイムを楽しむ予定だ。いつもセシルを見張るように庭のテーブルに居座るアルベリクの姿はない。
セシルが夢のティータイムに思いを馳せていると、ティーセットを抱えたメアリが現れた。
「セシル。お茶の時間にしましょう」
「はい!!」
テーブルの中央に置かれた大皿には上品にならんだ沢山のクッキー。二人で食べるにはちょっと多いように感じたが、メアリはクッキーに釘付けのセシルに頬を緩ませ、紅茶を順にカップへと注いだ。
「さあ、召し上がれ」
「うわぁ~美味しそう」
「「「いっただっきまぁ~す」」」
セシルはクッキーを頬張り、その美味しさに悶絶した。そして、ふと疑問を抱いた。
今、自分と一緒に「いただきます」を言ったのはだれだろうか……と。
「美味しい~」
「やっぱり婆やのクッキーは世界一だよね!」
「「ね~!」」
セシルの向かいにはメアリが、そして両隣には見知らぬ子ども達が座っていた。金色の髪にエメラルドの瞳の子供が二人、クッキーを美味そうに口に運び、幸せそうに談笑している。
どちらも女の子みたいに可愛らしいが、服装からして男女であることが分かる。どこかで見たことがあるような顔だけれど……。
「あの……お二人は?」
「僕はレオン」「私はクロエ」
二人は同時に声を発した。重なりあった声はそっくりで、何と言ったのかは分からなかった。
メアリはそれを察したのか、二人をセシルに紹介してくれた。
「こちらはアルベリク様のご弟妹のレオン様とクロエ様です。お二人とも、こちらは新入りメイドのセシルです。仲良くしてあげて下さい」
「「はーい」」
「ねえ。セシル。クッキー食べたら、かくれんぼしよう」
「しよ~」
エメラルドの瞳をキラキラと輝かせて、二人はセシルにお願いする。アルベリクとは似ても似つかない真ん丸の大きな瞳に、輝く金髪。何とも愛らしいではないか。
「はい。良いですよ」
「「やった~」」
セシルは甘い香りにつられてやって来た二人のお客様のお相手をすることになった。
◇◇
木の影から双子はセシルを覗き見た。
セシルは今、庭の真ん中で大声で数を数えている。二人は顔を見合わせると、口元に悪戯な笑みを浮かべた。
「ねぇ。クロエ。あのメイド、バカそうだね」
「うん。レオン。あのメイド、バカだと思う」
「「ふふふ。どうやって遊ぼっか?」」
◇◇
セシルは庭で双子とかくれんぼ中である。オニはずっとセシルが担当しているため、色々と分かってきた。
双子は何故か二人で同じところに隠れる。木の後ろだったり大きな鉢の裏だったり、メアリの後ろだったり。
そして、身体のどこかが大体見えているのだ。
今回は、大きな鉢の左右から、それぞれのお尻が見えていた。
「みーつっけた!」
「「わぁ~。見つかっちゃったぁ~」」
見つかると二人は嬉しそうに天使のような笑顔になる。
可愛い。あのアルベリクの弟妹とは到底思えないくらいに。
「ねぇ。セシル。もう一回オニやって~」
セシルのスカートをギュッと掴んで甘えてくるのはレオンだ。クロエと顔はそっくりだが、レオンの方が男の子らしく活発である。
「今度は見つからないんだからね」
今、セシルに向かって可愛らしく宣戦布告したのはクロエだ。指示を出すのはクロエ、すぐ行動に移すのはレオンといった印象を受けた。
「よぉし。じゃあ数えるから隠れてね~」
「「はぁ~ぃ!!」
「いーち。にーい、……」
セシルが大きな声で数を数え始めたその横で、双子はヒソヒソ話をしていた。
「ねぇ。クロエ。そろそろやろう」
「うん。レオン。そろそろやろう」
声を殺して笑い合い、二人は庭で一番大きなナラの木へと駆けていった。
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