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第四章 二人きりでの馬車の旅
004 洋服と短剣
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翌日。メアリが持っていた紙袋からは大量の衣類が出てきた。メアリはそれをセシルのベッドに次々と出しては並べていく。
「このシャツにはこのスカートでしょ。それから見て。この服はフリルが可愛らしいの。後はこれも……」
鼻歌混じりに服のコーディネートを説明していくメアリ。その服は町娘が着るよりも上等な服で、メアリが着るには少し小さいように思えた。
「あの。これ、どうしたんですか?」
「えっ。もちろん買ってきたのよ。それから寝る時の服が……あらやだ。レクトが持ってた荷物の方だわ。ちょっと待っていて、すぐ戻るから」
「はい……」
メアリは部屋を出る間際に、セシルに振り向き嬉しそうに言った。
「あ。良かったらどれか着て見せて頂戴? ふふふっ」
「へ?」
去り際にメアリは何と言いった?
セシルは自分の耳を疑った。
「もしかして、私の服?」
恐る恐る胸にシャツを当てると丁度良かった。
可愛い。こんな服を着るのは初めてだ。
動きやすそうだし、これを着たら町へお出掛けしたくなるかも。
でも、これって高いのでは?
それに何でこんなに沢山?
そういえば、昨日レクトに採寸された。
「お前、少しは成長したな」なんて言っていたから、メイド服をお直ししてくれるのかと思っていたけれど、もしかしてこの大量の服のせいだったのではないだろうか。
「おーい。セシル~?」
噂をすれは本人の登場だ。
「ど、どうぞ!?」
「失礼しま~す。あのさ──」
「ねえ。この服なに!?」
「えっと~。アル様から聞いてないのか?」
セシルは首を縦に何度も振った。
レクトは話すべきか少し戸惑っている様子で、手に持っていた小さな短剣で頭をかいている。そして短剣を見てハッと何か思い出したようだ。
「あ、そうだ。これ、セシルにやるよ」
「えっ。短剣?」
レクトは自慢気に短剣を鞘から抜いて見せた。
果物ナイフ程度の大きさの短剣だ。
「ああ。護身用の短剣。屋敷の外へ行く時は必ず装備しておくんだぞ」
「あ、ありがとう。私に扱えるかな……」
「どうかな。無理はするなよ。まあ、俺とアル様が一緒だから」
「一緒?」
「あ、そうか聞いてないんだったよな……まぁ。言ってもいいよな――セシルも一緒に行くことになったんだよ。北の訓練所にさ」
「え、えええー。私が? 何で?」
「詳しくは聞いてないけど、社会勉強……とか? 後さ、屋敷に置いていきたくないんだと思うよ」
「へぇ~。なんでだろう。でも、ちょっと楽しみだなぁ」
お留守番も楽しみだったけれど、屋敷からも出られるし、北ってどこまで行くんだろう。
「まあ、むさ苦しいところだけどな……。だから、その服はお前のだぞ。俺はお前が婆様と買いに行けばいいってアル様に言ったんだけど、危なっかしいからって。俺と婆様で行ってきたんだ」
「ありがとう。あ、そうだ。メアリさんがまだ荷物があるって言って、取りに行ってくれてるの」
「はぁ? 先にそれを言えよ」
レクトが慌てて振り向き廊下へ飛び出した時、丁度メアリが山のような荷物を持って扉の近くまで歩いてきていた。
「ああっ。婆様、そんなの俺が持つからっ」
「あらあら。ありがとう。もう少しだからいいわよ──きゃっ」
メアリは部屋に入ろうとして、段差に足をとられて小さな叫び声をあげた。メアリの持っていた紙袋は投げ出されセシルの頭上にネグリジェが降り注いだ。
「婆様!?」
「メアリさん!?」
メアリが気になるがセシルは服で何も見えなかった。
服をどけ視界が開けると、扉の前で膝をつき、上半身をレクトに支えられたメアリの姿があった。
「あらあら私ったら、あっ……」
笑っているので大丈夫そうかと思った矢先、メアリは立ち上がろうとして硬直した。
「婆様?」
「うーん。ちょっと腰が……」
「えっえっ。動かさない方がいいですか?」
「そ、そうね……ちょっと、座りたいかな……」
セシルも一緒にメアリを支え、その場にゆっくり腰を下ろさせるとレクトは立ち上がる。
「アル様を……。って今いないか……。爺様を呼んできますね!」
「あっ。あの人は忙しいからっ」
「じゃあ。爺様に誰か人を貸してもらってきます。セシル、婆様と待ってて」
「うん!」
レクトは本館へ通じる外廊下へ向かって走っていった。
「メアリさん。大丈夫ですか? 寄りかかって良いですからね」
ゆっくりと深呼吸を繰り返すメアリに、セシルは上半身を支えるように抱きつき、腰にそっと手を回した。メアリはセシルの小さい肩に首を預けた。
「ええ。ありがとう。私も歳ね……恥ずかしいわ」
「あの。メアリさん……」
セシルは言ってロザリオの上に手を乗せた。
メアリの傷を癒したい。
でも、言ったらきっと拒否されてしまうだろう。
何も伝えずにメアリの腰に手をかざした。
「なぁに。セシル?」
「……早く、良くなります様に」
「あら。何だか温かい……。あら? セシル。あなたもしかして……」
メアリは痛みが引いたことに気づくと背中を伸ばし、セシルに困った子ね。と呟いた。
「えへへ?」
「もう。アル様に報告しますからね!」
「えっ。嫌です、痛いふりしててください」
「うーん。もう。今回だけですよ」
メアリがそう承諾してくれた時、廊下に男性の怒鳴り声がこだました。
「メアリーーーー!!」
その声を聞くと、メアリは残念そうな顔をしてセシルにまたもたれ掛かるように抱きついた。
「め、メアリさん?」
「やっぱり、アル様に報告しなきゃ駄目みたい」
するとメアリのため息と共に部屋の扉が豪快に開いた。
そこに立っていたのは、燕尾服がはち切れそうなほど筋骨隆々とした、初老の執事だった。
「このシャツにはこのスカートでしょ。それから見て。この服はフリルが可愛らしいの。後はこれも……」
鼻歌混じりに服のコーディネートを説明していくメアリ。その服は町娘が着るよりも上等な服で、メアリが着るには少し小さいように思えた。
「あの。これ、どうしたんですか?」
「えっ。もちろん買ってきたのよ。それから寝る時の服が……あらやだ。レクトが持ってた荷物の方だわ。ちょっと待っていて、すぐ戻るから」
「はい……」
メアリは部屋を出る間際に、セシルに振り向き嬉しそうに言った。
「あ。良かったらどれか着て見せて頂戴? ふふふっ」
「へ?」
去り際にメアリは何と言いった?
セシルは自分の耳を疑った。
「もしかして、私の服?」
恐る恐る胸にシャツを当てると丁度良かった。
可愛い。こんな服を着るのは初めてだ。
動きやすそうだし、これを着たら町へお出掛けしたくなるかも。
でも、これって高いのでは?
それに何でこんなに沢山?
そういえば、昨日レクトに採寸された。
「お前、少しは成長したな」なんて言っていたから、メイド服をお直ししてくれるのかと思っていたけれど、もしかしてこの大量の服のせいだったのではないだろうか。
「おーい。セシル~?」
噂をすれは本人の登場だ。
「ど、どうぞ!?」
「失礼しま~す。あのさ──」
「ねえ。この服なに!?」
「えっと~。アル様から聞いてないのか?」
セシルは首を縦に何度も振った。
レクトは話すべきか少し戸惑っている様子で、手に持っていた小さな短剣で頭をかいている。そして短剣を見てハッと何か思い出したようだ。
「あ、そうだ。これ、セシルにやるよ」
「えっ。短剣?」
レクトは自慢気に短剣を鞘から抜いて見せた。
果物ナイフ程度の大きさの短剣だ。
「ああ。護身用の短剣。屋敷の外へ行く時は必ず装備しておくんだぞ」
「あ、ありがとう。私に扱えるかな……」
「どうかな。無理はするなよ。まあ、俺とアル様が一緒だから」
「一緒?」
「あ、そうか聞いてないんだったよな……まぁ。言ってもいいよな――セシルも一緒に行くことになったんだよ。北の訓練所にさ」
「え、えええー。私が? 何で?」
「詳しくは聞いてないけど、社会勉強……とか? 後さ、屋敷に置いていきたくないんだと思うよ」
「へぇ~。なんでだろう。でも、ちょっと楽しみだなぁ」
お留守番も楽しみだったけれど、屋敷からも出られるし、北ってどこまで行くんだろう。
「まあ、むさ苦しいところだけどな……。だから、その服はお前のだぞ。俺はお前が婆様と買いに行けばいいってアル様に言ったんだけど、危なっかしいからって。俺と婆様で行ってきたんだ」
「ありがとう。あ、そうだ。メアリさんがまだ荷物があるって言って、取りに行ってくれてるの」
「はぁ? 先にそれを言えよ」
レクトが慌てて振り向き廊下へ飛び出した時、丁度メアリが山のような荷物を持って扉の近くまで歩いてきていた。
「ああっ。婆様、そんなの俺が持つからっ」
「あらあら。ありがとう。もう少しだからいいわよ──きゃっ」
メアリは部屋に入ろうとして、段差に足をとられて小さな叫び声をあげた。メアリの持っていた紙袋は投げ出されセシルの頭上にネグリジェが降り注いだ。
「婆様!?」
「メアリさん!?」
メアリが気になるがセシルは服で何も見えなかった。
服をどけ視界が開けると、扉の前で膝をつき、上半身をレクトに支えられたメアリの姿があった。
「あらあら私ったら、あっ……」
笑っているので大丈夫そうかと思った矢先、メアリは立ち上がろうとして硬直した。
「婆様?」
「うーん。ちょっと腰が……」
「えっえっ。動かさない方がいいですか?」
「そ、そうね……ちょっと、座りたいかな……」
セシルも一緒にメアリを支え、その場にゆっくり腰を下ろさせるとレクトは立ち上がる。
「アル様を……。って今いないか……。爺様を呼んできますね!」
「あっ。あの人は忙しいからっ」
「じゃあ。爺様に誰か人を貸してもらってきます。セシル、婆様と待ってて」
「うん!」
レクトは本館へ通じる外廊下へ向かって走っていった。
「メアリさん。大丈夫ですか? 寄りかかって良いですからね」
ゆっくりと深呼吸を繰り返すメアリに、セシルは上半身を支えるように抱きつき、腰にそっと手を回した。メアリはセシルの小さい肩に首を預けた。
「ええ。ありがとう。私も歳ね……恥ずかしいわ」
「あの。メアリさん……」
セシルは言ってロザリオの上に手を乗せた。
メアリの傷を癒したい。
でも、言ったらきっと拒否されてしまうだろう。
何も伝えずにメアリの腰に手をかざした。
「なぁに。セシル?」
「……早く、良くなります様に」
「あら。何だか温かい……。あら? セシル。あなたもしかして……」
メアリは痛みが引いたことに気づくと背中を伸ばし、セシルに困った子ね。と呟いた。
「えへへ?」
「もう。アル様に報告しますからね!」
「えっ。嫌です、痛いふりしててください」
「うーん。もう。今回だけですよ」
メアリがそう承諾してくれた時、廊下に男性の怒鳴り声がこだました。
「メアリーーーー!!」
その声を聞くと、メアリは残念そうな顔をしてセシルにまたもたれ掛かるように抱きついた。
「め、メアリさん?」
「やっぱり、アル様に報告しなきゃ駄目みたい」
するとメアリのため息と共に部屋の扉が豪快に開いた。
そこに立っていたのは、燕尾服がはち切れそうなほど筋骨隆々とした、初老の執事だった。
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