聖女は死に戻り、約束の彼に愛される

春乃紅葉@コミカライズ2作品公開中〜

文字の大きさ
93 / 102
第八章 終焉と死に戻りの秘密

012 これからのこと

しおりを挟む
 メアリにお風呂に入れてもらって、白い簡素なワンピースを着替えると、アルベリクの書斎へ通された。

 アルベリクはいつもの本を読んでいた。そしてそれをセシルにも見せ、これまでのことを話してくれた。

「そ、蘇生術。黒……魔術ですか……まさか、アルベリク様がやり直しの元凶だったなんて」
「元凶とは失礼な言い方だな。まぁ、神様が助けてくれたとか奇跡的な話ではないか。……どちらかと言えば悪魔に魂を売ったようなドロドロとした話だな」
「そ、それって。アルベリク様は大丈夫なんですか!?」
「それが……生きているんだ。本来なら、セシルが生き返って、俺は死ぬ。そんな魔術のはずなんだが。きっと、セシルの魔法の力なんだろうな……」

 聞けば聞くほど恐ろしい話だった。
 要するにアルベリクは……。

「わ、私を生き返らせるために……死のうとしたんですか?」
「……というより死んだ。恐らく」

 アルベリクがそんな事をしていたなんて。
 それも、もう三回も。
 死ぬってすごく怖いことなのに。
 辛くて苦しくて……やり直しなんかしなくていいから、もうこのまま安らかに眠りたいと思うほどなのに。

「な、泣くな。お前だって覚えているんだろ。処刑されたことを……それに比べたら、俺の死なんて大したこと無い」
「そんなこと。そんなこと無いです。何も知らなくてごめんなさい。いつも失敗ばかりでごめんなさいっ」

 ソファーの上でうずくまって涙するセシルの背に、アルベリクはそってと手を乗せた。

「大丈夫だ。きっと今度こそ、二人一緒なら乗り越えられる。それに……今回は兄上に相談しようと思っている。全て打ち明け、国を出ようと思う」
「え。でも、ディルク様は?」
「別に国内に居なくても、ディルクを助けられると思ったんだ。前に話した外の国、覚えているか?」
「あ、なんとなくですが……」

 そう言って天井を仰ぐセシルを見て、アルベリクはため息をついた。

「まぁ。覚えてなくてもいい。お前は俺についてくればいい」
「は、はい。アルベリク様!」

 ◇◇

 翌日、セシルはアルベリクに連れられて当主エドワールと話した。

 アルベリクが今までのやり直しの事、それから今後のことを全て話し終えると、エドワールは声をあげて笑った。

「はははっ。それを私が信じると思ったのか? ぷっ。理解しきれないよ。本当に……」

 笑いすぎて溢れた涙を自身で拭い、エドワールはお茶を一口のみ、息を整えた。

「それで。いつ行くのだ?」
「兄上……。信じてくださるのですか?」
「信じるのかと言われたら、正直よく分からないけれど。アルがしたいことは応援するよ。アルには、父の様になって欲しくないからな」
「ありがとうございます。兄上」

 エドワールは微笑みセシルに目を向けた。
 セシルはその威圧的な視線に息を飲んだ。

 目が合うのは初めてかもしれない。アルベリクと似ているけれど、エドワールの方が感情が読み取れなくて怖い。

「セシル、と言ったな。アルが無茶をしないように、助けてやってくれよ」
「は、はい!」
「あ、でも。やはり二人じゃ不安だな……」

 エドワールはアルベリクとセシルを交互に見やり、とある条件を提示した。





しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます

ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。 理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。 ……正直、めんどくさい。 政略、責任、義務、期待。 それらすべてから解放された彼女は、 聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。 毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。 何もしない、何も背負わない、静かな日常。 ところが―― 彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、 一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが 異様なほど平和になっていく。 祈らない。 詠唱しない。 癒やさない。 それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。 「何もしない」ことを選んだ元聖女と、 彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。 これは、 誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、 いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜

嘉神かろ
恋愛
 魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。  妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。  これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸
恋愛
 公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。  あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。  けれど、断罪したもの達は知らない。  彼女は偽物であれ、無力ではなく。  ──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。 (書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です) (少しだけタイトル変えました)

処理中です...