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後日談
『エドワールの報復』 クリストファ王子
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アレクシスの計らいで、私はクリストファと顔を会わせる時間をもらった。
クリストファは投獄されていた。
アレクシスの話だと、反省の色を見せないクリストファに、陛下は激昂し殴り飛ばしたそうだ。
檻の中で、クリストファは赤く腫れた頬をさすり、ベッドで横になっていた。
しかし、私に気が付くと、まるで旧友に会えたかの様な笑顔で体を起こし、手を振ってきた。
「あれ? ファビウス侯爵だ。こんなところまでどうしたの?」
「言い様だな。……前に言っただろ? ――この国の英雄と、奇跡の力を宿した聖女を殺した罪。必ず貴様に償ってもらう──と。その為に来たんだ」
クリストファは青い瞳を丸くさせて驚くと、直ぐにヘラヘラと笑い出した。
「あー。そっかぁ。陛下が怒ってたのは君のせいか。あの人ってさ、女好きなんだよね。それに、異国の女性にも目がなくてさ。異端の力を有した聖女、なんて大好物なんだよね。まぁ、人の物に手を出す人では無いんだけど、自分の物に手を出されたり、裏切られたりするのはタブーなんだよね」
「君とそっくりじゃないか」
「そうかな? まぁ、そうかもね。僕さ、離れ小島に流刑になったんだ。あそこは何にもなくて潮風が心地よいんたよ。いい気分転換になりそうだ」
楽観的にそう話すクリストファ。
ちょっとした旅行にでも行くつもりなのだろう。
二度と城に帰っては来れないと言うのに。
これが、人を二人も殺した人間の態度なのだろうか。
私の弟を殺しておいて、私に微笑むその心は、正気の沙汰ではないと感じた。
「最期を過ごす場所としては、とてもよいところだな」
「最後? あのさ。陛下は僕にちょっと怒ってるだけ。僕は近い内に、すぐ城に戻るよ」
抑えようとしても、クリストファの態度に私の怒りは頂点に達してしまいそうだった。しかし、そんなことをしたらクリストファが面白がるだけだろう。
私は必死で怒りを静め、重い口を開いた。
「人を二人も殺めておいて……それはないだろ?」
「はははっ。陛下は約束したんだ。僕の母に。僕を死ぬまで守るってね。あの人、約束は守る人なんだよ。僕がどんなことをしてもね……」
「そうか。きっとその約束は果たされるだろう。しかしお前は城に戻ることも、自分のその先の未来を生きることも叶わないだろう」
「は? 何それ。あ~。分かった、暗殺でもするつもりでしょ? そんなことしたら陛下が黙っては――」
「死人に口なし。黙るも何も、陛下は先が短いそうだぞ?」
クリストファの顔がみるみる青ざめていく。
やっといい顔が見れた。
残酷にも、私は心の中でそう思った。
「……兄上でしょ? そっか、はははっ」
「なぜ笑う? そんなに、あの聖女の元へ行くことが嬉しいのか?」
「えっ? あー。そうなのかな。……でもさ、もしまた会えたとしても、きっと僕の物にはならないんだろうね。何か、そんな気がする……」
聖女の名を出すと、クリストファは急に塩らしくなった。肩を落とし、その青い瞳は、何も掴めなかった自分の手の平をじっと見つめ、呟いた。
「僕って何の為に生まれてきたのかな? 皆に愛想振りまいて仲良くしてきたつもりだったけどさ。結局、僕の隣には誰もいない。リリアーヌすら……いないんだ」
「……孤独のまま絶望して死ぬがいい。私は、弟を殺した君の死を歓迎するよ」
「……そう。歓迎か……」
「さようなら。クリストファ王子」
「…………」
クリストファは、こちらに背を向けてベッドに横になると、口をつぐんだ。
◇◇
――アルベリク。
お前の愛する者の命を奪った男は、孤独のまま死ぬだろう。
もしも、また奴と巡り合うことになったら。
今度こそ、自分でけじめをつけるんだぞ。
クリストファは投獄されていた。
アレクシスの話だと、反省の色を見せないクリストファに、陛下は激昂し殴り飛ばしたそうだ。
檻の中で、クリストファは赤く腫れた頬をさすり、ベッドで横になっていた。
しかし、私に気が付くと、まるで旧友に会えたかの様な笑顔で体を起こし、手を振ってきた。
「あれ? ファビウス侯爵だ。こんなところまでどうしたの?」
「言い様だな。……前に言っただろ? ――この国の英雄と、奇跡の力を宿した聖女を殺した罪。必ず貴様に償ってもらう──と。その為に来たんだ」
クリストファは青い瞳を丸くさせて驚くと、直ぐにヘラヘラと笑い出した。
「あー。そっかぁ。陛下が怒ってたのは君のせいか。あの人ってさ、女好きなんだよね。それに、異国の女性にも目がなくてさ。異端の力を有した聖女、なんて大好物なんだよね。まぁ、人の物に手を出す人では無いんだけど、自分の物に手を出されたり、裏切られたりするのはタブーなんだよね」
「君とそっくりじゃないか」
「そうかな? まぁ、そうかもね。僕さ、離れ小島に流刑になったんだ。あそこは何にもなくて潮風が心地よいんたよ。いい気分転換になりそうだ」
楽観的にそう話すクリストファ。
ちょっとした旅行にでも行くつもりなのだろう。
二度と城に帰っては来れないと言うのに。
これが、人を二人も殺した人間の態度なのだろうか。
私の弟を殺しておいて、私に微笑むその心は、正気の沙汰ではないと感じた。
「最期を過ごす場所としては、とてもよいところだな」
「最後? あのさ。陛下は僕にちょっと怒ってるだけ。僕は近い内に、すぐ城に戻るよ」
抑えようとしても、クリストファの態度に私の怒りは頂点に達してしまいそうだった。しかし、そんなことをしたらクリストファが面白がるだけだろう。
私は必死で怒りを静め、重い口を開いた。
「人を二人も殺めておいて……それはないだろ?」
「はははっ。陛下は約束したんだ。僕の母に。僕を死ぬまで守るってね。あの人、約束は守る人なんだよ。僕がどんなことをしてもね……」
「そうか。きっとその約束は果たされるだろう。しかしお前は城に戻ることも、自分のその先の未来を生きることも叶わないだろう」
「は? 何それ。あ~。分かった、暗殺でもするつもりでしょ? そんなことしたら陛下が黙っては――」
「死人に口なし。黙るも何も、陛下は先が短いそうだぞ?」
クリストファの顔がみるみる青ざめていく。
やっといい顔が見れた。
残酷にも、私は心の中でそう思った。
「……兄上でしょ? そっか、はははっ」
「なぜ笑う? そんなに、あの聖女の元へ行くことが嬉しいのか?」
「えっ? あー。そうなのかな。……でもさ、もしまた会えたとしても、きっと僕の物にはならないんだろうね。何か、そんな気がする……」
聖女の名を出すと、クリストファは急に塩らしくなった。肩を落とし、その青い瞳は、何も掴めなかった自分の手の平をじっと見つめ、呟いた。
「僕って何の為に生まれてきたのかな? 皆に愛想振りまいて仲良くしてきたつもりだったけどさ。結局、僕の隣には誰もいない。リリアーヌすら……いないんだ」
「……孤独のまま絶望して死ぬがいい。私は、弟を殺した君の死を歓迎するよ」
「……そう。歓迎か……」
「さようなら。クリストファ王子」
「…………」
クリストファは、こちらに背を向けてベッドに横になると、口をつぐんだ。
◇◇
――アルベリク。
お前の愛する者の命を奪った男は、孤独のまま死ぬだろう。
もしも、また奴と巡り合うことになったら。
今度こそ、自分でけじめをつけるんだぞ。
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