異世界に転生だと!? やったったぜ!!!

松ぼっくり

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夢の異世界編

チート能力を持っていても成せないこと。それは人間を生き返らせることだった

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「手を尽くしましたが残念なことに…」

「そうかご苦労。ダン博士はお前を責めることはしないだろう」

簡易的に作られたテント、そこで騎士は少年を元駐屯基地の避難所に置き、信頼できる魔導士を一人連れダン博士の蘇生を試みさせたが失敗した。

「御遺体はどうしますか?せめて頭から知識を絞り出しますか?」

「いいや、やめておけ。博士は情報を極力漏らさないように脳に呪術をかけてある。取り出そうとすれば何が起こるか分からない」

この刻を持ってダン博士は死亡した。原因は肺に肋骨が刺さったことによる出血、呼吸困難に陥ってしまった事だ。しかし博士はその程度では死なない。魔術に精通しているのだ。呪文を唱えれば一瞬で治癒する。
それをしなかったのは隕石(人間隕石)によって生涯の全部が失ったことで気力が無くなってしまったから、と騎士は推測した。
その生涯の全ての結晶は国家機密とされており、ほんの一握りの人物しか知らないものだ。ここに居る治療魔導士達はもちろんエリート集団の騎士達も研究内容であるマンドラゴについて知らされていなかった。

「私がいち早く隕石に気づいてれば博士は…」

「ダン博士は耳が聞こえなかったのはご存知だと思います。隕石が落ちてくる音は勿論の事ですが、ウェンさんがダン博士の元に着けていたとしても、あの被害では間に合っていませんでしたよ…。その、なんと言いますか……、不幸中の幸いでしたよ」

ダン博士が研究していた場所、町から人里離れた場所に位置している。
少年がもたらした被害は研究成果と老人の命だけではなかった。衝撃波のせいで町の全ての家屋が崩れ、外で遊んでいた子供たちは空高く吹っ飛んでいき行方と生死不明、それで済めば良いのだが、魔法で強化された宮殿すらも崩れ去り王、王妃、王子、姫は死んだ。
駐屯基地も壊滅し、助かった騎兵を遣い同盟国へ助けを求め出張中。生き残った魔導士達で、奇跡的に生存している人民達を手当てしているという悲惨な状況である。

「君の言う通りだ…。私達でも知り得ない何かをやっていたのだから…こうも博士の敷地内にピンポイントで隕石……いや、メテオレインを使ったな」

禁断の魔法とされる術の一つ、それがメテオレインである。

「では、博士をよく思わない人物が…!」

「ああ、ほぼ間違い無い。この事は君と私だけの秘密だ、決して他人に漏らすなよ」

「はい!勿論ですとも。これは由々しき事態です。近くに居た少年もいずれ危険な目に合ってしまいます」

「そうだな……、少年の事は私が何とかする。私は引き続き、民達の救援に当たって来る」

(やべえよおおおおおおおおおおおおおおおお!!なんかすっげえ大事になってるううううううううううううう!!!)

少年は聞き耳のスキルと隠密を使い、騎士と魔導士の会話を盗み聞きしていた。自分が引き起こしたであろう被害がまさか一国を滅ぼすとは夢に思わなかった。
何より、あのヨボヨボじいさんが最重要人物だったとは思いもしなかった。
チートを使って大暴れする予定が、一つの王国を滅ぼしてしまった。

(ううわあああああああああああああああああああああ!!!もう逃げるしかねえ!!気配遮断させて抜き足差し足でここから逃げるっっ!!!!!)

魔法の使い方は知らないが、身体系のチートは扱える。避難所に戻ってうちの子が消えたの、家内が死んだ、お母さんどこ、と泣き叫ぶ町民達の元へ行くのは真っ平ごめんだ。ばれたら国家転覆罪で処刑されてしまう。
ではどこへ逃げるのか、ウェンの馬に乗っていた最中に、同じ甲冑を纏った騎士が二人馬に乗ってどこかへ行ったのだ。
その方向へ行けば違う国があるはずだ、そうであってほしい。
いや、待て、先に避難所に訪れた方がよさそうだ。会話からして少年の具合を見てからどこかへ行く様子だ。もし今脱出すれば、真っ先に疑われ追われの身となってしまう。
心苦しいが布団に潜り込んで適当にあしらってから逃げるしかない。
魔導士とウェンはダン博士の亡骸に、透明魔法を施した後簡易テントを手のひらへと収束させる。お互いに頷き、それぞれの為すべきことをするべく持ち場に戻った。

(この国はもう滅んだも同然……、怪我を治癒させたら民を同盟国へ移住させなければな…。後は……)

王が死んでしまった今、希望の象徴が必要になる。ここは王妃、その王子に姫が居てくれたらどんなに心強いか。
その象徴も王宮と共に亡くなってしまったが。
歩きながら、どうすべきかを考える。

(ダン博士の研究……、そこが手掛かりになるかもしれん。まずは目の前の現実を片付けてからだ)

先程の魔導士と一緒に居た簡易テント、空間魔法を応用することで一見四人で満杯になってしまう様に見えるが数千人収容する事が出来、即席な割に中は快適な空間となっている。
そこに怪我人がベッドに寝転がり魔導士と騎士の治療を受けている。本来であれば教会の修道士が専門で行っているのだが、全滅してしまい駐屯所で生き残った魔導士と治療魔法が扱える騎士の数人で数百人(これからもっと増える)を裁かなければならない。
応援を呼ぼうにも瞬間移動テレポート念話テレパスが使える魔導士と騎士は死んでしまい、空を飛べる騎士、ワイバーンも全滅し、強化魔法を使った馬に乗って同盟国に渡ったとしても最低一週間は掛かる。

「やあ少年、具合はどうだい?」

「おかげさまで大分楽になりました…。しかし身体が……」

「あれだけの衝撃で髪の毛が爆発しただけで済んだのは奇跡的だ…、ダン博士に庇われたんだね。遺体には防御ガードの痕跡があってね、大丈夫、君のせいで死んだんじゃない。未来のある若者の君に生きてほしいと願って守ったんだ」

(なんかすげえ都合の良い解釈されてるううううううううううううう!!!やべえよやべえよ!!益々自分のせいでこんな事になったんだと言えないいいいいいいいい!!)

ウェンが戻る前にいち早くベッドに潜り、事なきを得たが更に重大な勘違いをされてしまっていた。

「私はこれから救助に回らなければならないけど、絶対にここを動かない事、いいね?」

「あっはい、でもトイレの時って…」

「行きたい時に行っておくれ。トイレはここをまっすぐに行って突き当りを左に曲がるとあるからね」

「ありがとうございます」

「では、体を大事にね」

と少年のアフロ頭を撫でる。騎士の眼差しと手はとても柔らかく温かいものだった。

「はい」

少年は冷えているせいでそれが敏感だった。もう顔変えて生きていきたいところだ。

「またね」

(綺麗な人だなあ)

あの時はフル装備で顔とぐぐもった声をしていたので分からなかったが整った美人な女性であった。流石異世界。不細工が居ない。人間隕石の被害から免れる事が出来ることから相当な手練れである。
美人で強い、もう惚れてしまいそうだ。
ウェンがテントから出ていき、およそ十分であろうかそろそろ出掛けにげる事とする。
隠密を使い、気配を丸っきり消す。

「うわああああああああああああお母さあああああああああああああああ!!」

「…」

年は4~6才であろう子供が母親が寝ているベッドの端で泣いていた。
治療に当たってたであろう魔導士は目を背けた。全力を尽くし母親を治すものの間に合わなかったのだ。

「坊や…、お母さんは偉大なる神マルフォゴ様の元へ行ってしまった。お別れを言うのだ」

小さい肩に手を置く。
子供は魔導士を睨み付ける。

「どうしてぼくを助けたの!どうしてぼくをお母さんと一緒に神様の所へ連れてってくれなかったの!?ねえ!!」

「……」

「返事をせんかぁ!!うわあああああああああああああああああああああああん!!」

何も言わない魔導士の白衣に抱き付いて泣き叫ぶ。
魔導士は何も言えずただ子供を抱き締め頭を撫でてやることしか出来なかった。

(……俺は、俺は……俺のせいなんかじゃあ……!!)

少年はその光景を目にし、逃げるように避難所から去っていった。
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