婚約者は第二王子のはずですが?!

水月架奈

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043☆例えば赤が朱く染まれども①

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 うふふ、異例中の異例、すっ飛ぶくらいの飛び級して六歳で学園に通い始めたアリシアも七歳よ。この一年長いようで短かったわ。
 てか、半軟禁で苦行な過去三回も学園通ってるんだからなんやかんや魂にまで染み着いてるって……

 先日の誕生日にはお父様から涙の跡も真新しいお手紙とは名ばかりの殿下への呪詛に近いぶ厚い凶器と言うかほぼほぼ狂気が届きましたし……はぁ、なんてお返事しようかしら?

 なんの事はない……私のお誕生会が出来なかったのが相当こたえた模様。……お父様のプレゼントってお母様おとなになら良いけど子供にあげるにはセンス無さ過ぎですし。だから私に逃走資金獲得の事業の為にバラして売っぱ……ゲフンゲフンられるのよ。

 学園の休暇には安全の為に王宮へと滞在するからもあってお父様がだいぶ病んでるのよね。例えると国家転覆企みそうな勢いって言えばしっくりくると思うの。……って、例えたらあかん。何言うてんねん。エセ関西人風なツッコミを脳内で繰り広げるぼっちなアリシア七歳。

 まず付属品が殿下というか、殿下の付属品なアリシアだからお友達が出来やしない……
 なになに?最初はなから年齢層が違う?うるせぇやーい。

 学園は家族が面会に来るのは推奨されていないから、偶にニコが魔導具のオーダー受けに来る体で打ち合わせにやってくるくらいよ。だって私が付与士だもの。勤労少女よ。
 商会のものが呼ばれて品物持ってくるのは普通なのよね。宝石ならいざ知らず、文房具一つ買うにしても商会呼ぶなんてなんて贅沢、何様なの……って、ほぼほぼ貴族様だったわ。
 学園にも売店擬きがあるじゃないのとか、思っちゃう庶民なアリシアの中の人。
 少し前に同級生のシャルロッテ様が宝飾関係のお店の人を呼んでいたっけ。


 そして話は戻る。
 誕生日なアリシアに何気に殿下のプレゼントがクリティカルヒットだった。
 私の耳にちょうど良いパールからダイヤ一粒があしらわれている小さな白い貝が揺れる可愛らしさ全開のピアス。それとおそろいのパールのネックス。可愛い。すっごく可愛いくて愛用している。
 くっ、殿下の癖にっ!とか無用な敗北を味わったわ。





「アリシア様、ごきげんよう」

「メリルラーナ様、ごきげんよう」

 マナーの教室で考え事は危険ね。背後に立たれて、まったく気配に気付かなかったもの。

 メリルラーナ様は侯爵家の次女で家格的には殿下のお嫁さんを狙える位置だけど、私を疎まず毒を盛らない穏健派。
 ここ、 重 要 !
 殿下が煽りに煽り、しかもあれ天然なのか……ギルバート様が手腕を発揮した炙り出しも終わり落ち着いたけど、マジで過激派ヤバイからねっ。

「まぁ、それが殿下手ずから用意されたという贈り物なのですね」

 メリルラーナ様の目は揺れるピアスとネックレスを興味深そうに辿ると、琥珀色のたれ目がふわりと微笑んだ。癒される~。

「あら、アリシア様にメリルラーナ様そちらよろしくて?」

「「シャルロッテ様ごきげんよう」」

「お二人ともごきげんよう」

 このツンツンデレを地で行くシャルロッテ様は侯爵家の末っ子。確か上は兄二人だったかと記憶している。一掃された過激派とは違いお家もシャルロッテ様も正々堂々殿下の妃を目指しているためたまにこうやって絡んでくる。なんか微笑ましくなっちゃって絡まれてもちょっと可愛いな、なんて思っちゃうアリシアの中の人。うふふ。

「あら、小さいとこれまた小さいアクセサリーがお似合いね」

「ふふ、アリシア様。これでもシャルロッテ様は可愛らしいって褒めていらっしゃるのよ」

「だ、誰がそんな事っ!わたくしはドレスもお子様だと言ったのよ」

「アリシア様、シャルロッテ様がふわふわで可愛らしいって」

「メリルっ、貴女!……もう、良いわ」

「あら、シャーリー。別に恥ずかしがらなくても。子供用のドレスは淡い色が多くてレースもたっぷりでふわふわで可愛らしいですもの」

 ああー、分かる。何気にシャルロッテ様可愛らしいもの大好きですからね。派手なカンジだからご自分では似合わないんですけど。赤とか黒とかはっきりしたビバ原色、ウェルカム原色よね。
 ピンク推しなのか、私のドレスがピンクだとかなり絡んでくる。今日みたいに。
 それにしてもメリルラーナ様ったらシャルロッテ様の翻訳が完璧ね。
 最初は私も扇で隠されたあのほんのり染まった頬を見なければわからなかったもの。

 そして、愛称で呼び合う可憐な美少女……御馳走様です。
 ぐふふ、と幼女らしからぬ よこしまな笑いが零れた。

「な、何笑っているのよ!」

 アリシアの中の人的にリアルでツンデレないわ~と思っていたけど、この世界はゲームそっくりだし金髪美少女だとアリね。







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