僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

文字の大きさ
38 / 369
第3章 私の過去はAV女優

10話

しおりを挟む
※この作品は「小説家になろう」「note」にも掲載中です

「ディレクター……私やめます。」

私はいつもの人に辞めると言った。
彼にとっては何度目の辞めるだろうかと思ったけど……今回は表情が違った私を見て何かを察したみたいだった。

「なんか、今日の遥香ちゃんはいつもよりキリッとしてるね……本気かい?」
「もちろんです。」

ディレクターはため息をついた。
それはそうである、私は個人として独立することも出来たけど……この事務所に属して売上を1番出していたのだ。
つまり、わたしが辞めることで会社が傾いてしまうのも覚悟の上だった。


「少し……屋上に行こうか。」
「はい。」

私は……ディレクターといつもの屋上で缶コーヒーを飲んでビルのすきま風を強く受けていた。

「もう……AVに触れて何年目だっけ?」
「えーっと……7年だったかと思います。」

自分で言って……ああ、もう7年もたったのか……そりゃあ直輝も大きくなるよねとはっとする。

「最初は……とにかくガムシャラに打ち込んでたよね。」
「そうですね、演技力上げたくて……一緒に作品を探したこともありました。」
「具合悪くても……それでも乗り切った時は2人で大笑いもしたねえ。」
「はい、あの時はホントしんどくて……終わったあと気絶するかのように寝てました。」

少し、ディレクターと思い出話をする。
色んなことがあったな……と思いっきりやってたことが脳裏をよぎってとにかく、とにかく涙が出てきた。

「うう……あれ、なんでだろう……どうして涙がでて……来るんでしょう……すみません、すみません。」
「きっと……それだけ遥香ちゃんが本気でやってきた証拠なんだろう……すごく楽しかったんだろうね。」

私は……ここに来てどうにもこの場所が好きだったんだと思い出して……そこからは泣き崩れてしまった。
でも……残り少ない時間でも直輝が大きくなるまでは一緒に居てあげないといけない。

そう誓ったのだから……自分の覚悟に嘘をつくことは自分自身が許さなかった。

「遥香ちゃん……そうと決まったら、最後の作品を作ろう。僕らも君に頼りきっていた……そろそろ若手も育てないとだからね。」

私は、辞めることがこの瞬間から正式に決定していた。

☆☆

最後の撮影は……ファンとの共同出演というものだった

あれから、私は豊胸もしたし、部分的にだけど整形もしていた。
すごく疲れた撮影だったけど……私のために沢山のファンがいたことをこの時初めて知った。
私のために……泣いてくれた人もいた。

こうして、私はAV女優というものを辞めた。
橘遥香は長年親しまれたAVの女王ということで幕を閉じて……この日から改めて天野遥香へと戻ったのだ。

「ただいま……。」
「お母さん、おかえり!」
「直輝……!」

直輝は10歳になっていた。
もう小学生の中学年にもなる。
直輝はゲームが好きなのでとにかく大人しくていい子だった。

しかし、きっと今日もいじめを受けて来たのだろう
直輝はちょっとずつだけど……学校に行くのを拒んだのだ。

「ねえ、直輝?学校……違うところにしない?」
「え。」
「私もね……ずっとやってきた仕事今日で終わりだったんだ。2人で再スタートってことでもう一度頑張らない?」

直輝は……少し考えた。
こう、何考えてるかパッと見で分からないところは直人くんそっくりだなと思うような年齢になっていた。
そしたら、直輝はニコッとわらった。

「うん、楽しそう!」

それから……直輝も私も苦労続きだった。
私は貯金は億はあったのでずっと家にいながら高卒の通信教育を受けてたし、直輝は……次の学校でも馴染めることが出来なくて、少し辛そうであった。

でも、直輝は初めて友達ができた。
飯田蓮君という子が私の家に頻繁に来るようになったのだ。

「おじゃましまーす!」
「あら、飯田くんまた来たの?」
「もちろん!遥香さんがいますからね~。」

ちょっと視線が顔ではなく胸を見ている気がするが年頃の男の子なので可愛いものである。

「直輝ー!今日スパーキングメテオ持ってきたから一緒にやろうぜ!」
「メテオか~、いいけどブウ使うの禁止ね。」
「なんで?」
「いや、あれ試合にならないでしょ、必殺技打ってれば勝てるんだから。」
「なら、対抗策考えろよ~。」

如何にも男の子らしい会話である。
私は、少しの家族の変化さえも愛おしく感じた。

☆☆

私は、マリのコスプレを畳んで自分の作ったカレーを頬張る。
美味しい……最初は料理下手くそだったけど、家族のために費やした数年がここまで私の料理の腕上げていた。

なんか、直輝が私の過去を知って色々あったけど……やっぱり私の人生に後悔なんてなかったな。

色々辛いこともあったけど、辛いことがあるからこその幸せというのは素晴らしいものであった。

それはこれからも続いていくのだろう。
愛しい我が息子と共に。

「母ちゃん。」

ふと、直輝がリビングに入ってきた。
私のカレーを残さず食べて、食器を洗いに来たのだ。

「あ、マリは辞めたんだね。」
「うわキツとか言われそうだからね~。」
「いや、実際キツイって。」
「酷い!まだ32歳なのに!」

少しは美容に気を使ってるのでキツイって言われるのはなかなかショックである。

しかし、直輝はガチャガチャと皿を洗いながら話を続けた。

「なあ、母ちゃん……カレーうまかった。」
「そう、ありがとう。」
「あとさ、いつも……家事とかしてくれてありがとうな。俺……まだ母ちゃんのことよく理解してるつもりは無いけどさ、俺は母ちゃんの子どもでよかったよ。それだけ……。」

直輝は、皿を洗い終えるとまた自室に戻ろうとしていた。
咄嗟に私は彼をとめてしまう。

「待って!」
「ん?どうしたよ……かあちゃ……え?」

あまりにも嬉しい言葉に、私は息子を抱きしめてしまった。私も……この子の母親でよかった。

私は、直輝と離れて笑顔で一言今日の息子に別れを告げた。

「おやすみ!明日も頑張ってね!」
「あはは……うるせえよ。」

家族に正解は無い、これも一つの家族の形である。
それでいい……それだけで幸せなのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...