彼岸花

結紬

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諦め

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あたしは幼馴染のことが好きだ。
だけど、あいつには他に好きな人がいる。あたしなんかは絶対に適うことのできないくらい可愛い女の子。
あいつはあたしが自分の好きな人を知ってるなんて微塵も思ってない。だから知られないように隠す。きっとバレてしまたら相談に乗らなきゃいけなくなる。
それだけは…絶対にしたくない。
悲しい思いはなるべくしたくない。あたしだって努力はした。でも、見た目をいくら変えても、男まさりな性格を治そうとしても、あいつは気づいてくれない。そればかりかあいつはあたしの性格が大人しくなったことについておかしそうに笑うだけだった。
なんで…?なんで気づいてくれないの…?

そんなときあたしの目に映ったのは楽しそうに話しているあいつとあの子…


ああ、悲しいなあ…



「なあ、俺さ、彼女できたんだ…」

そう照れながら話すこいつ。
あいつは今まで見てきた中でもかなり楽しそうな表情をしていて、あたしは何も言えなかった。
やっとの思いで出てきた言葉はあの子との仲を祝福する言葉。
「おめでとう。よかったじゃん、あの子でしょ?あの可愛い子」
いつもなら言わない言葉。隠してきたこと。あの子を好きなことを知っていること。
案の定こいつはあたしが知っていることを知らなかった。
「え!?なんで知ってんの?俺お前に言ったっけ?」
あの子のことを褒めるのも悲しくなるからしたくなかったのにこいつに嫌われないためには褒めないと…
「嫌、言ってないけどあんたのこと見てたら丸わかり。むしろなんで周りにバレないのか不思議なくらいだわ、にしてもいい子捕まえたねえ。あの子って確かめちゃくちゃ人気だよ。これからあんた他の男子から嫉妬のまとだよ。きっと。」
こんな言葉にも照れたように、嬉しそうにするこいつに心が痛くなる。
でもあたしには到底敵いっこないあの子。可愛くていい子で他の男子からも女子からも人気なあの子にどうしたら敵うというのか。きっと誰が見てもあたしはあの子には敵わないと言うだろう。
ならもうあいつとあの子の仲を祝福するしかあたしにできることはないのだ。こいつに嫌われないためにも…。
あの子と別れるように仕向けるだとかもできないことはないだろうけど、それをしたらこいつは悲しむしバレた時のあたしの立場がなくなる。
もうあたしにはどうすることもできない。

「あんないい子逃さないようにね?もう巡り会えないかもなんだから。」

俯いてあたしは言った。

「ああ、もちろん。お前も良い彼氏を早く見つけろよ!」

あたしの大好きな元気な笑顔でこいつは言った。

せめて、せめて幼馴染として友人として近くにいさせて…。

この想いはいつか必ず消し去るから…。
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