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ワールドパンデミック編
十章 彼にとっての救済
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兄さんを倒す方法。それは緑の協力が必要不可欠である。
「……これで頼めるかい?」
「任せて、でも、この規模だと、持っても10分。それ以内に倒して」
「十分すぎるくらいだよ」
身体スペックで勝てないというのなら、能力の応用で倒すしかない。
今だその場を動こうとしない優一に、視線を向ける。
「行くぞ!」
「うん!」
「シャドウスケート」「ナチュラルクイーン」
2人の声がピッタリ重なる。それと同時に影二は優一に向かって走り出し、緑は地面に手をつけ、能力を発動させる。
2つのタワーマンションを繋ぐように、5階部分から縄状になるように根をはやす。
すると、広範囲全てにクロスするように影が出来上がる。その出来上がった影に影二は身を潜めて近づく。
「ちっ、届かないな」
「それも計算のうちさ!」
わざわざ高い所に根を張ったのは、優一に触れられて向きを変えられないようにするため。
優一の背後に出現し、頭部を狙ってストレート。優一はそれを、難なくかわす。代わりに身をよじり、左手を地面につけ右足で影二の顎めがけて蹴りあげる。
影二は、体制が崩れている。これをかわすことは……容易い。
あえてもっと体制を崩す。この回避方法は誰も使わない方法だ。何故なら、これを使うと、次の一手が遅れるため、かわしたところでなんの意味もないからだ。
でも、今は状況が違う。
「!?」
スレスレで蹴りを交わしたあと、再び影に潜む。これにより追加攻撃をうける心配はない。
再び背後に周り、今度は優一の膝目掛けて蹴りを狙う。
次は反応が遅れたようで、鮮やかに蹴りが決まる。
ーーいける!
思考が加速。次の一手。かかと落としが決められる。そう思った矢先、思いがけないことが起こる。
優一は崩れた体勢からムーンサルトを鮮やかに決める。
「がぁ!」
体制が崩れるのを防ぐと同時に顎へのカウンター。再び影二が膝から崩れ落ちてしまう。
「これで終わりだ」
振り下ろされる腕。揺れる視界で影二はその拳を捉える。まだ……だ!
ーー負け……るか!
顎を蹴られた痛みが残るが、逆にその痛みが戦意を加速させた。
刹那の状況判断。やつの腕が振るわれて直撃したら恐らく僕は死ぬ。かわすには距離が近すぎる。ならば……。
腕1本折れる覚悟で行くしかない。だが、体勢が悪い。一か八かだ。
振り下ろされた腕を、左手を犠牲にガード。
骨が粉砕される音がこの場に響き渡る。痛みを感じている暇は、今の影二には無い。ただ……。
ーー右手で殴るだけだ!
「うおおおおぉ!兄さん、思い出してくれ!」
思いを乗せた最大の一撃。狙いは1点。頭だけだ。
「ぐぁぁ!」
影二の拳は優一の脳天に届く。頭を狙ったので、意識が朦朧とし、地面に膝をつけた。
「にい……さん……」
兄を呼ぶ。それに答えるかのように優一が反応する。
「えい……じ……?」
「!」
どうやら、頭にダメージを受けた事で、記憶が戻ったようだ。その事実を知り、影二の瞳からは、自然と涙が零れ落ちた。
「えい……じ。すまなかった……」
「ううん……大丈夫だよ……。それよりも、何があったの?」
影二の問いに、優一は何があったのかを鮮明に思い出す。すると優一がハッとして、思い出した事を口に出す。
「逃げろ。奴らはお前達の仲間、明留を狙っている」
「明留を……どうして?」
「確か、それは12人のーーー」
優一が何か言おうとした時、銃声が響く。
「え?」
その銃声とともに、優一は地面に倒れた。綺麗に脳天を撃ち抜かれている。
つまり、即死だ。
「うそ、兄さん……」
「影二君!」
緑がこちらに急いで近づいてきて声をかけてくれるが、影二の耳には届かない。
「兄さん!兄さん!」
嗚咽の混じった声で、兄の名を叫ぶ。当然、倒れた優一が反応することは無い。
「影二君、落ち着いて!」
緑が影二を抑えるが、抵抗をやめない。
「はな……せ、離せよ緑!兄さんが!」
「今は敵に狙われているんだよ!隠れないと!」
「く、離せ!」
尚も抵抗を続ける影二。こうなっては致し方ない。
「ナチュラルクイーン!」
ナチュラルクイーンで催眠花を咲かせ、影二に匂いを嗅がせる。
「兄さん……兄さ……にい……に……」
意識が薄れている中でも、ずっと兄の名を叫び続けていた。緑は少し罪悪感を覚えつつも、今は身を守ることを優先する。
「ナチュラルクイーン!」
周りに大樹を作ることで自分たちが狙われないようにする。
「これで、大丈夫……。後は影二君が落ち着くまで……」
緑は影二の頭を膝に乗せて、敵が去るのをじっと待ち続けた。
「アナザー様、1352番の始末、完了しました」
狙撃銃を構えた黒髪の女は、無線で通信をする。
「ご苦労さま。戻ってこい」
「了解しました。ですが、1352番を始末して本当に良かったのですか?」
「ああ。もうそいつには用はない。既に量産は出来ているのだからな……」
「なるほど……。それでは、帰投します」
黒髪の女は狙撃銃を背中にかけ、その場から風と共に消えていった。
名前 影二
能力 シャドウスケート
能力レベル 5
影に潜む能力。影の中の移動速度は通常の約2倍。代わりに体全体を力で覆わなければ、異次元に吹っ飛ぶので、注意が必要。
名前 優一
能力 フルリフレクション
能力レベル 6
両手に虹色のオーラをまとい、触れた能力の向きを変化させることが出来る。ただし、自分に危害のある攻撃しか、向きを変えられない。
「……これで頼めるかい?」
「任せて、でも、この規模だと、持っても10分。それ以内に倒して」
「十分すぎるくらいだよ」
身体スペックで勝てないというのなら、能力の応用で倒すしかない。
今だその場を動こうとしない優一に、視線を向ける。
「行くぞ!」
「うん!」
「シャドウスケート」「ナチュラルクイーン」
2人の声がピッタリ重なる。それと同時に影二は優一に向かって走り出し、緑は地面に手をつけ、能力を発動させる。
2つのタワーマンションを繋ぐように、5階部分から縄状になるように根をはやす。
すると、広範囲全てにクロスするように影が出来上がる。その出来上がった影に影二は身を潜めて近づく。
「ちっ、届かないな」
「それも計算のうちさ!」
わざわざ高い所に根を張ったのは、優一に触れられて向きを変えられないようにするため。
優一の背後に出現し、頭部を狙ってストレート。優一はそれを、難なくかわす。代わりに身をよじり、左手を地面につけ右足で影二の顎めがけて蹴りあげる。
影二は、体制が崩れている。これをかわすことは……容易い。
あえてもっと体制を崩す。この回避方法は誰も使わない方法だ。何故なら、これを使うと、次の一手が遅れるため、かわしたところでなんの意味もないからだ。
でも、今は状況が違う。
「!?」
スレスレで蹴りを交わしたあと、再び影に潜む。これにより追加攻撃をうける心配はない。
再び背後に周り、今度は優一の膝目掛けて蹴りを狙う。
次は反応が遅れたようで、鮮やかに蹴りが決まる。
ーーいける!
思考が加速。次の一手。かかと落としが決められる。そう思った矢先、思いがけないことが起こる。
優一は崩れた体勢からムーンサルトを鮮やかに決める。
「がぁ!」
体制が崩れるのを防ぐと同時に顎へのカウンター。再び影二が膝から崩れ落ちてしまう。
「これで終わりだ」
振り下ろされる腕。揺れる視界で影二はその拳を捉える。まだ……だ!
ーー負け……るか!
顎を蹴られた痛みが残るが、逆にその痛みが戦意を加速させた。
刹那の状況判断。やつの腕が振るわれて直撃したら恐らく僕は死ぬ。かわすには距離が近すぎる。ならば……。
腕1本折れる覚悟で行くしかない。だが、体勢が悪い。一か八かだ。
振り下ろされた腕を、左手を犠牲にガード。
骨が粉砕される音がこの場に響き渡る。痛みを感じている暇は、今の影二には無い。ただ……。
ーー右手で殴るだけだ!
「うおおおおぉ!兄さん、思い出してくれ!」
思いを乗せた最大の一撃。狙いは1点。頭だけだ。
「ぐぁぁ!」
影二の拳は優一の脳天に届く。頭を狙ったので、意識が朦朧とし、地面に膝をつけた。
「にい……さん……」
兄を呼ぶ。それに答えるかのように優一が反応する。
「えい……じ……?」
「!」
どうやら、頭にダメージを受けた事で、記憶が戻ったようだ。その事実を知り、影二の瞳からは、自然と涙が零れ落ちた。
「えい……じ。すまなかった……」
「ううん……大丈夫だよ……。それよりも、何があったの?」
影二の問いに、優一は何があったのかを鮮明に思い出す。すると優一がハッとして、思い出した事を口に出す。
「逃げろ。奴らはお前達の仲間、明留を狙っている」
「明留を……どうして?」
「確か、それは12人のーーー」
優一が何か言おうとした時、銃声が響く。
「え?」
その銃声とともに、優一は地面に倒れた。綺麗に脳天を撃ち抜かれている。
つまり、即死だ。
「うそ、兄さん……」
「影二君!」
緑がこちらに急いで近づいてきて声をかけてくれるが、影二の耳には届かない。
「兄さん!兄さん!」
嗚咽の混じった声で、兄の名を叫ぶ。当然、倒れた優一が反応することは無い。
「影二君、落ち着いて!」
緑が影二を抑えるが、抵抗をやめない。
「はな……せ、離せよ緑!兄さんが!」
「今は敵に狙われているんだよ!隠れないと!」
「く、離せ!」
尚も抵抗を続ける影二。こうなっては致し方ない。
「ナチュラルクイーン!」
ナチュラルクイーンで催眠花を咲かせ、影二に匂いを嗅がせる。
「兄さん……兄さ……にい……に……」
意識が薄れている中でも、ずっと兄の名を叫び続けていた。緑は少し罪悪感を覚えつつも、今は身を守ることを優先する。
「ナチュラルクイーン!」
周りに大樹を作ることで自分たちが狙われないようにする。
「これで、大丈夫……。後は影二君が落ち着くまで……」
緑は影二の頭を膝に乗せて、敵が去るのをじっと待ち続けた。
「アナザー様、1352番の始末、完了しました」
狙撃銃を構えた黒髪の女は、無線で通信をする。
「ご苦労さま。戻ってこい」
「了解しました。ですが、1352番を始末して本当に良かったのですか?」
「ああ。もうそいつには用はない。既に量産は出来ているのだからな……」
「なるほど……。それでは、帰投します」
黒髪の女は狙撃銃を背中にかけ、その場から風と共に消えていった。
名前 影二
能力 シャドウスケート
能力レベル 5
影に潜む能力。影の中の移動速度は通常の約2倍。代わりに体全体を力で覆わなければ、異次元に吹っ飛ぶので、注意が必要。
名前 優一
能力 フルリフレクション
能力レベル 6
両手に虹色のオーラをまとい、触れた能力の向きを変化させることが出来る。ただし、自分に危害のある攻撃しか、向きを変えられない。
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