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ワールドパンデミック編
九章 記憶は忘却の彼方へ
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「兄さん!僕だよ!」
影二は必死に優一に向かって叫ぶ。だが、優一はそれに対し、眉ひとつ動かさず立ち尽くす。
「ねえ、影二君。どうすればいいの?」
「僕に言われても……分からない」
やっと再会できた兄に、どうすればいい?頼むから、何か言って欲しい。
すると、その思いが届いたのか、優一の口が開く。
「誰だお前?」
「……」
影二にとってその言葉は酷く重く、冷たいものだった。
「やっぱり、覚えてないんだね」
何故優一がこうなってしまったのかは、今の影二には理解出来る。
恐らく、お金を得るために自分の体を売ったんだろう。全ては弟の影二のために。
ならば影二のやることは1つだけだ。
「今、兄さんを楽にするよ」
彼を殺して、バケモノとなった兄を成仏させること。きっとこれが、救いになることを願って。
「ふ、なんだかわからねぇが、来るなら来いよ?」
挑発的な笑みを浮かべ、影二達を手招きする。
「それじゃあ、行かせてもらうよ!」
全力で兄の元へ駆け出す。やつの能力が分からない以上、近づくのは自殺に等しい。でも、こちらには緑がいる。緑の能力で後方支援してもらえば、勝機は必ずある!
一瞬緑に目配せをし、合図を送る。
「ナチュラルクイーン!」
優一の左右から大きなツタが生える。これで動きを封じ、拳を叩き込む!
「ふっ!」
優一がニヤリと笑う。
「なんだ?」
「フルリフレクション!」
その言葉と同時に、優一の両手が虹のように輝く。それに触れたツタが、向きを変え、影二の自由を奪う。
「しまっ……」
「もう遅い、手遅れだ」
緑が能力を解除するよりも速く、優一の体は動く。影二の懐に速く、正確に。どんな鈍器よりも思い正拳突きが炸裂する。
「ぐぁ!」
内臓破壊による吐血。たった一撃で足に力が入らなくなる。
膝から崩れ落ちる影二に、容赦なく第2の攻撃を仕掛ける優一。あの体勢は恐らく、かかと落としだ。
「間に合って、ナチュラルクイーン!」
地面に手を触れ、影二の斜め上方向にツタを生やす。斜め上に生やしたことにより地面に影が生まれる。
「シャドウ……スケート!」
上から下ろされるかかと落としを紙一重で影に入って回避し、緑の元に戻る。
「大丈夫?」
「はぁ、はぁ。力の強さが異常すぎる。これが、兄さんの身体スペックなのか……」
優一は、本当に人間の領域を上回っている。力で勝てないのならば、技で殺すしかない。どうする……。策を練るんだ……。
「緑、恐らくだが、兄さんの能力は、手で触れたものの向きを変える能力なんだと思う」
「うん、うちも見ている限りそんな感じがする。でも、だからどうするの?」
「緑の能力は兄さんにとって有利でしかない。だから、緑は直接的な攻撃をしない方がいい。僕のサポートを頼めるかい?」
「わかったよ、でも、サポートと言ったって、どんな……」
フラフラとした足で踏ん張り、何とか立ち上がる。
「僕に策がある」
影二は必死に優一に向かって叫ぶ。だが、優一はそれに対し、眉ひとつ動かさず立ち尽くす。
「ねえ、影二君。どうすればいいの?」
「僕に言われても……分からない」
やっと再会できた兄に、どうすればいい?頼むから、何か言って欲しい。
すると、その思いが届いたのか、優一の口が開く。
「誰だお前?」
「……」
影二にとってその言葉は酷く重く、冷たいものだった。
「やっぱり、覚えてないんだね」
何故優一がこうなってしまったのかは、今の影二には理解出来る。
恐らく、お金を得るために自分の体を売ったんだろう。全ては弟の影二のために。
ならば影二のやることは1つだけだ。
「今、兄さんを楽にするよ」
彼を殺して、バケモノとなった兄を成仏させること。きっとこれが、救いになることを願って。
「ふ、なんだかわからねぇが、来るなら来いよ?」
挑発的な笑みを浮かべ、影二達を手招きする。
「それじゃあ、行かせてもらうよ!」
全力で兄の元へ駆け出す。やつの能力が分からない以上、近づくのは自殺に等しい。でも、こちらには緑がいる。緑の能力で後方支援してもらえば、勝機は必ずある!
一瞬緑に目配せをし、合図を送る。
「ナチュラルクイーン!」
優一の左右から大きなツタが生える。これで動きを封じ、拳を叩き込む!
「ふっ!」
優一がニヤリと笑う。
「なんだ?」
「フルリフレクション!」
その言葉と同時に、優一の両手が虹のように輝く。それに触れたツタが、向きを変え、影二の自由を奪う。
「しまっ……」
「もう遅い、手遅れだ」
緑が能力を解除するよりも速く、優一の体は動く。影二の懐に速く、正確に。どんな鈍器よりも思い正拳突きが炸裂する。
「ぐぁ!」
内臓破壊による吐血。たった一撃で足に力が入らなくなる。
膝から崩れ落ちる影二に、容赦なく第2の攻撃を仕掛ける優一。あの体勢は恐らく、かかと落としだ。
「間に合って、ナチュラルクイーン!」
地面に手を触れ、影二の斜め上方向にツタを生やす。斜め上に生やしたことにより地面に影が生まれる。
「シャドウ……スケート!」
上から下ろされるかかと落としを紙一重で影に入って回避し、緑の元に戻る。
「大丈夫?」
「はぁ、はぁ。力の強さが異常すぎる。これが、兄さんの身体スペックなのか……」
優一は、本当に人間の領域を上回っている。力で勝てないのならば、技で殺すしかない。どうする……。策を練るんだ……。
「緑、恐らくだが、兄さんの能力は、手で触れたものの向きを変える能力なんだと思う」
「うん、うちも見ている限りそんな感じがする。でも、だからどうするの?」
「緑の能力は兄さんにとって有利でしかない。だから、緑は直接的な攻撃をしない方がいい。僕のサポートを頼めるかい?」
「わかったよ、でも、サポートと言ったって、どんな……」
フラフラとした足で踏ん張り、何とか立ち上がる。
「僕に策がある」
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