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「……っ!」
「ん………………」
突然のキスに、夏弥は頭が追い付かなかった。
美咲の綺麗な顔が、ゼロ距離でそこにある。
夏弥の肩に手を置いて、すがりつくみたいにして、美咲はその華奢な身体を寄せていた。
「……」
それから夏弥も、美咲の肩に手を置くけれど、それはキスのために置いたわけじゃなかった。
美咲の手とは、むしろ逆の意味合いを持った手で――
「……?」
夏弥は高まってしまいそうな自分の気持ちを必死に押し殺して、美咲を一度引き離す。
それから、
「待ってくれ、美咲……。ちゃんと俺の話……聞いてた?」
「え? うん……聞いてたけど……」
夏弥に肩を抑えられたまま、美咲はそう答えた。
「だったら……どうして……」
「……どうしてって?」
「洋平は……俺達がこういうことするの、きっと気持ち悪いって思うはずだ。……俺が美咲のことを…………す……好きになること自体、毛嫌いするようなこと言ってたんだから」
この時の夏弥は、洋平に後ろめたいと思う気持ちより、美咲のことをただただ心配していた。
自分との恋愛を進めていけば、おそらくこれまで以上に美咲と洋平の溝は深まっていってしまう。
そう思えてしまって、美咲とのキスを中断したのだった。
「……。そうかもしれないけど、仕方ないでしょ……」
美咲は夏弥から目をそらし、頬をかああっと赤く染めながら話し続ける。
「アイツが気持ち悪がっても……認めてくれなくても……。あ、あたしは……夏弥さんのこと…………もうダメなくらい……好きになっちゃってるし……」
「なっ……」
なんてこと言ってんだよ。
夏弥は心のなかでそう叫んでいた。
加えて夏弥は今、自分がどんな顔をしているのか予想もつかなかった。
嬉しいとか、恥ずかしいとか。ドキドキして仕方ないとか。
ダメなくらい好きってどのくらい? とか。
いろんな感情が湧きたってきてしまって、どれが顔に現れているのかわかったもんじゃない。
対する美咲は、続けて自分の気持ちを吐き出していく。
「いいじゃん。周りがどう言っても。……あたしは気にしないし、気にすることが正解でもないでしょ……?」
美咲の言葉は、不思議なくらい夏弥の胸に響いてしまう。
美咲が口にするその一語一語には、すべて愛が込められているみたいだった。
だから、受け取ってしまうんだと夏弥は感じる。
だから、染み込んでしまうんだと。
「ダメなくらい……好きなんだ」
夏弥は顔を赤くしながらも、そのセリフを復唱してみる。
「…………うん」
「で、でも……気が合うな。…………俺も、ダメだなって思ってた」
「え?」
「美咲とのこと。……洋平がああ言っていても……ダメなんだよ。洋平の言ってることはなんとなくわかるんだけど……でも、気持ちが…………もう言うこときかなくて……」
「~~っ!」
「そのことに……今日気付いて…………」
今度は美咲のほうが恥ずかしさに襲われる。
両手で顔を覆い隠してしまいたい。
――もう、言うこときかないんだ……。夏弥さん、もう自分で抑えられないくらい、あたしのこと…………好きなんだ。
さっきキスをしたけれど、美咲はもうダメだと思った。
もうこんなの、我慢できないよと思った。
「夏弥さ……ぁ」
「…………っん……」
お互いに腕を回して、ナチュラルにキスが再開する。
「……」
続けていくうちに、夏弥は自分の手がお留守だなと気が付いて。
そのまま――――美咲の頭を撫でてみたくなったのだった。
首回りがすっきりとしている綺麗な髪。
明るく茶色に染まっていたその髪は、とてもサラサラとしていた。
触れてみると見た目以上にツヤがあって、普段の手入れが行き届いているんだと察する。
「っ……! あぇっ……」
頭を撫でてあげると、美咲は少しビクついて、一段とかわいい声をあげた。
いつものクールな雰囲気や落ち着いた様子の美咲からは、とても聞けそうにない声音だった。
「あ、ごめん……。撫でられるの……イヤだった?」
「……」
夏弥は美咲の反応に気が付いて、反射的にパッと彼女の頭から手を離す。
自分勝手だったかも……。と一抹の不安を覚える。
そういえば、「頭なでなで」はイケメンにのみ許されている行為だなんて話も耳にするし。ひょっとしたら、美咲はこういうやりとりが嫌いかもしれないと思った。
すると、意外にも美咲は首を横に振って、こんなことを言い始める。
「そうじゃなくて…………。なんか、その……ちょっと怖いって思ったから……」
「怖い?」
「うん。夏弥さんに撫でられると…………き、気持ち良くて……なんか本当にダメになりそうっていうか……」
「~~っ!」
「頭なでなで」の効果は絶大だったらしい。
目の前の美少女は「なんか本当にダメになりそう」などとおっしゃっている。
その目は潤み始めていて、デレデレモードを極めていた。
なんでそんな胸がきゅんきゅんすること言うんだよ。
と、夏弥は声に出して言いたくなった。
しかし言わなかったのは、いつ決壊してもおかしくはないその理性が、まだ残っていたからだろう。
「でも、……違うじゃん?」と美咲はさらに言葉を続ける。
「え、違うって?」
「するなら……こっちが、正しいと思うんだけど……」
美咲はそう言って夏弥の頭に手を伸ばし、優しく――――
夏弥の頭を撫でてあげたのだった。
「……っ!」
「撫でられる相手が違うじゃん? て思って。ふふっ。…………あたしのために頑張ってくれた夏弥さんを……あたしが撫でるってこと。……こっちのほうが正しくない? って思ってたから」
「……そうですか」
美咲に頭をなでなでされ、夏弥は不思議な気持ちになる。
小さな手のひらなのに、触れたところが、ぽわぁっと温かくて。
美咲がさっき言っていた通り、確かに気持ちよかった。
頭を撫でられると妙にホッとするというか、それだけで誰かに存在を認めてもらえたような感覚を覚える。
(いやでも、さすがにもうこの甘すぎるやり取りにはピリオドを打ったほうがいいんじゃないか……?)
ふと、夏弥にそんな想いがよぎる。
また昨日みたいに、長々とキス……というのも別に悪くないのだけれど、それにしたって晩ごはんは食べなければいけない。
ローテーブルの方にチラッと視線を移せば、まだ手付かずの鍋がそこにある。
「……あの、そろそろ鍋……煮えたんじゃないか?」
「うん。……もういい感じだと思う。ていうか、結構前から良かったと思うけど」
「マジかよ。……美咲、気付いてたなら教えてくれよ」
「え。でも、あたしが良いと思ったタイミングで合ってるのかわからなかったし。それに…………まだ続けたかったから。……あっ」
「~~っ‼」
夏弥は、確かに。と思った。
シンプルに同感です。とも思った。
夏弥も、美咲自身も、「まだ続けたかったから」の言葉で、さらなる羞恥心の波に襲われていった。
まだこの行為も、その先の行為も。今日はずっと続けていきたいのだと。
そういう風に聞こえてしまっていた。
実際、それを望む気持ちも二人にはあったはず。
その気持ちを再確認するみたいに言った気がして、とてつもない恥ずかしさに見舞われたのである。
夏弥は手を伸ばし、ピッ、とIHの火加減を弱火に落とす。
二人の恥じらいに比べて、ずっと無機質で冷たい音だった。
「た、食べよう。もうかなりうまそうな感じだし……」
「……うん。お腹すいたしね」
夏弥にしがみつくような体勢だった美咲は、その会話を終えてからパッと夏弥から離れた。
美咲が離れたあと、夏弥はまだ彼女の感触が肩に残っている気がして、少しだけ名残惜しい気持ちになる。
しかしながら水炊き鍋。煮えたものは早いうちにお召し上がりください。
そんな警告文が自分の脳内にフッと浮かんできて、夏弥は邪念を振り払う。
――俺は正しい。ここでちゃんと、鍋をつつこうと考える俺は正しい。
そう自分に言い聞かせ、夏弥は鍋ブタを開けた。
内側に溜まっていた大きな湯気のかたまりが、リビングの天井に向かってこんもりと浮かびあがる。
もう十分食べ頃で、かさばっていた野菜なんかもだいぶ煮えているみたいだった。
「わ……めっちゃ美味しそう」
「だね。野菜とか鶏肉とか、かなり良い感じだと思う」
「……」
「……」
ドキドキしていた距離から、晩ごはんをいただくほのぼのタイムへと流れが移っていく。――――はずだったのだが。
ぐつぐつ煮えている水炊き鍋。
その鍋を囲んではいるけれど、夏弥も美咲もお年頃のせいか雑念が多い。
箸を持つ手が、一向に動きを見せない。
一瞬目が合ったかと思えば、なんだかお互いの気持ちが透けて見えるようで仕方ない。
二学期が始まって、まだ数日しか経っていない頃のことだった。
「ん………………」
突然のキスに、夏弥は頭が追い付かなかった。
美咲の綺麗な顔が、ゼロ距離でそこにある。
夏弥の肩に手を置いて、すがりつくみたいにして、美咲はその華奢な身体を寄せていた。
「……」
それから夏弥も、美咲の肩に手を置くけれど、それはキスのために置いたわけじゃなかった。
美咲の手とは、むしろ逆の意味合いを持った手で――
「……?」
夏弥は高まってしまいそうな自分の気持ちを必死に押し殺して、美咲を一度引き離す。
それから、
「待ってくれ、美咲……。ちゃんと俺の話……聞いてた?」
「え? うん……聞いてたけど……」
夏弥に肩を抑えられたまま、美咲はそう答えた。
「だったら……どうして……」
「……どうしてって?」
「洋平は……俺達がこういうことするの、きっと気持ち悪いって思うはずだ。……俺が美咲のことを…………す……好きになること自体、毛嫌いするようなこと言ってたんだから」
この時の夏弥は、洋平に後ろめたいと思う気持ちより、美咲のことをただただ心配していた。
自分との恋愛を進めていけば、おそらくこれまで以上に美咲と洋平の溝は深まっていってしまう。
そう思えてしまって、美咲とのキスを中断したのだった。
「……。そうかもしれないけど、仕方ないでしょ……」
美咲は夏弥から目をそらし、頬をかああっと赤く染めながら話し続ける。
「アイツが気持ち悪がっても……認めてくれなくても……。あ、あたしは……夏弥さんのこと…………もうダメなくらい……好きになっちゃってるし……」
「なっ……」
なんてこと言ってんだよ。
夏弥は心のなかでそう叫んでいた。
加えて夏弥は今、自分がどんな顔をしているのか予想もつかなかった。
嬉しいとか、恥ずかしいとか。ドキドキして仕方ないとか。
ダメなくらい好きってどのくらい? とか。
いろんな感情が湧きたってきてしまって、どれが顔に現れているのかわかったもんじゃない。
対する美咲は、続けて自分の気持ちを吐き出していく。
「いいじゃん。周りがどう言っても。……あたしは気にしないし、気にすることが正解でもないでしょ……?」
美咲の言葉は、不思議なくらい夏弥の胸に響いてしまう。
美咲が口にするその一語一語には、すべて愛が込められているみたいだった。
だから、受け取ってしまうんだと夏弥は感じる。
だから、染み込んでしまうんだと。
「ダメなくらい……好きなんだ」
夏弥は顔を赤くしながらも、そのセリフを復唱してみる。
「…………うん」
「で、でも……気が合うな。…………俺も、ダメだなって思ってた」
「え?」
「美咲とのこと。……洋平がああ言っていても……ダメなんだよ。洋平の言ってることはなんとなくわかるんだけど……でも、気持ちが…………もう言うこときかなくて……」
「~~っ!」
「そのことに……今日気付いて…………」
今度は美咲のほうが恥ずかしさに襲われる。
両手で顔を覆い隠してしまいたい。
――もう、言うこときかないんだ……。夏弥さん、もう自分で抑えられないくらい、あたしのこと…………好きなんだ。
さっきキスをしたけれど、美咲はもうダメだと思った。
もうこんなの、我慢できないよと思った。
「夏弥さ……ぁ」
「…………っん……」
お互いに腕を回して、ナチュラルにキスが再開する。
「……」
続けていくうちに、夏弥は自分の手がお留守だなと気が付いて。
そのまま――――美咲の頭を撫でてみたくなったのだった。
首回りがすっきりとしている綺麗な髪。
明るく茶色に染まっていたその髪は、とてもサラサラとしていた。
触れてみると見た目以上にツヤがあって、普段の手入れが行き届いているんだと察する。
「っ……! あぇっ……」
頭を撫でてあげると、美咲は少しビクついて、一段とかわいい声をあげた。
いつものクールな雰囲気や落ち着いた様子の美咲からは、とても聞けそうにない声音だった。
「あ、ごめん……。撫でられるの……イヤだった?」
「……」
夏弥は美咲の反応に気が付いて、反射的にパッと彼女の頭から手を離す。
自分勝手だったかも……。と一抹の不安を覚える。
そういえば、「頭なでなで」はイケメンにのみ許されている行為だなんて話も耳にするし。ひょっとしたら、美咲はこういうやりとりが嫌いかもしれないと思った。
すると、意外にも美咲は首を横に振って、こんなことを言い始める。
「そうじゃなくて…………。なんか、その……ちょっと怖いって思ったから……」
「怖い?」
「うん。夏弥さんに撫でられると…………き、気持ち良くて……なんか本当にダメになりそうっていうか……」
「~~っ!」
「頭なでなで」の効果は絶大だったらしい。
目の前の美少女は「なんか本当にダメになりそう」などとおっしゃっている。
その目は潤み始めていて、デレデレモードを極めていた。
なんでそんな胸がきゅんきゅんすること言うんだよ。
と、夏弥は声に出して言いたくなった。
しかし言わなかったのは、いつ決壊してもおかしくはないその理性が、まだ残っていたからだろう。
「でも、……違うじゃん?」と美咲はさらに言葉を続ける。
「え、違うって?」
「するなら……こっちが、正しいと思うんだけど……」
美咲はそう言って夏弥の頭に手を伸ばし、優しく――――
夏弥の頭を撫でてあげたのだった。
「……っ!」
「撫でられる相手が違うじゃん? て思って。ふふっ。…………あたしのために頑張ってくれた夏弥さんを……あたしが撫でるってこと。……こっちのほうが正しくない? って思ってたから」
「……そうですか」
美咲に頭をなでなでされ、夏弥は不思議な気持ちになる。
小さな手のひらなのに、触れたところが、ぽわぁっと温かくて。
美咲がさっき言っていた通り、確かに気持ちよかった。
頭を撫でられると妙にホッとするというか、それだけで誰かに存在を認めてもらえたような感覚を覚える。
(いやでも、さすがにもうこの甘すぎるやり取りにはピリオドを打ったほうがいいんじゃないか……?)
ふと、夏弥にそんな想いがよぎる。
また昨日みたいに、長々とキス……というのも別に悪くないのだけれど、それにしたって晩ごはんは食べなければいけない。
ローテーブルの方にチラッと視線を移せば、まだ手付かずの鍋がそこにある。
「……あの、そろそろ鍋……煮えたんじゃないか?」
「うん。……もういい感じだと思う。ていうか、結構前から良かったと思うけど」
「マジかよ。……美咲、気付いてたなら教えてくれよ」
「え。でも、あたしが良いと思ったタイミングで合ってるのかわからなかったし。それに…………まだ続けたかったから。……あっ」
「~~っ‼」
夏弥は、確かに。と思った。
シンプルに同感です。とも思った。
夏弥も、美咲自身も、「まだ続けたかったから」の言葉で、さらなる羞恥心の波に襲われていった。
まだこの行為も、その先の行為も。今日はずっと続けていきたいのだと。
そういう風に聞こえてしまっていた。
実際、それを望む気持ちも二人にはあったはず。
その気持ちを再確認するみたいに言った気がして、とてつもない恥ずかしさに見舞われたのである。
夏弥は手を伸ばし、ピッ、とIHの火加減を弱火に落とす。
二人の恥じらいに比べて、ずっと無機質で冷たい音だった。
「た、食べよう。もうかなりうまそうな感じだし……」
「……うん。お腹すいたしね」
夏弥にしがみつくような体勢だった美咲は、その会話を終えてからパッと夏弥から離れた。
美咲が離れたあと、夏弥はまだ彼女の感触が肩に残っている気がして、少しだけ名残惜しい気持ちになる。
しかしながら水炊き鍋。煮えたものは早いうちにお召し上がりください。
そんな警告文が自分の脳内にフッと浮かんできて、夏弥は邪念を振り払う。
――俺は正しい。ここでちゃんと、鍋をつつこうと考える俺は正しい。
そう自分に言い聞かせ、夏弥は鍋ブタを開けた。
内側に溜まっていた大きな湯気のかたまりが、リビングの天井に向かってこんもりと浮かびあがる。
もう十分食べ頃で、かさばっていた野菜なんかもだいぶ煮えているみたいだった。
「わ……めっちゃ美味しそう」
「だね。野菜とか鶏肉とか、かなり良い感じだと思う」
「……」
「……」
ドキドキしていた距離から、晩ごはんをいただくほのぼのタイムへと流れが移っていく。――――はずだったのだが。
ぐつぐつ煮えている水炊き鍋。
その鍋を囲んではいるけれど、夏弥も美咲もお年頃のせいか雑念が多い。
箸を持つ手が、一向に動きを見せない。
一瞬目が合ったかと思えば、なんだかお互いの気持ちが透けて見えるようで仕方ない。
二学期が始まって、まだ数日しか経っていない頃のことだった。
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