【完結】婚約破棄は計画的に!

マー子

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婚約破棄の代償

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 アミリアは、先程の婚約破棄の際契約書を渡した文官を近く呼び、2枚の用紙を受け取る。

「レオナルド様。先程サインされた書類ですが、きちんと内容をご確認なさいましたか?」

 そのうちの1枚をレオナルドに見せながら、説明する。

「まずこれは、私達が婚姻を結んだ際交した契約書ですわ。お忘れになって?ほら、こちらにきちんと書かれているでしょう?『レオナルド・ホーク・ダニスタンとアミリア・シューベルトの婚姻は王家側からの申請で結ばれたものである。これをいかなる理由であっても王家側から破棄する際、第一王子レオナルド・ホーク・ダニスタンの王位継承権を剥奪する。また、王族の籍を剥奪するものとする。』と」

そしてもう1枚を見せる。

「そして、こちらが先程サインをされた婚約破棄の書類の写しですわ。こちらにきちんと『この婚約破棄は、第一王子レオナルド・ホーク・ダニスタンからの要望で破棄するのものである』と書かれているでしょう?これは婚約時に交した『王家側から破棄する場合』に当てはまります。こちらにサインをされたのはレオナルド様ですわよ?」


「そ⋯そんな⋯??そのようなこと私は知らないっ!?アミリアっ!お前が私を騙してそのような文書を偽造したのだろう!?」

 レオナルドは信じられないと言うような表情の後、アミリアに騙されたと喚き出した。

「どちらにもきちんとレオナルド様のサインがあります。そして、私と私の父シューベルト公爵のサインもあります。そして、これは王家の国璽ですわ。この意味が分からない訳ではありませんわよね?」

 そう、王家の国璽があると言う事は、これは正式に国王が認めた文書であり、国璽を偽造するなど国家反逆罪で即死刑だ。つまり、この書類は間違いなく本物であり、この内容を反故するということは国王の意志に逆らうと言う事。

 これには、流石のレオナルドも顔を真っ青にさせて唇を震わせていた。

「ご自分の立場を理解されましたか?つまり、貴方はもう王族でもなんでもないんです。王家を護る衛兵を動かす権限なんてないし、クビにするなんて勿論できません。ですので、先程リンジー嬢に仰っていた不敬罪も適用されませんわ。今の貴方はダニスタン王国第一王子ではなく、ただのレオナルド様です」


 レオナルドは膝から崩れ落ち、力なく頭を落とした。すると何やらブツブツと呟きながら、突然何か思い立ったかのようにバッと顔を上げ、アミリアを血走った目で見つめてきた。

「そうだ!アミリアと婚約破棄しなければ私はまた元に戻れるのだろう?あんな浮気女は私の運命の相手ではなかったんだ。私の運命の相手はやっぱりアミリア、君だよ!今までもずっと私を支えてくれていただろう?それは私を愛してくれているからだろう?本当の愛は、君にこそあったんだ。愛している。私と結婚してくれ!!」


⋯⋯こいつ本当に「馬鹿なの?」

 あっ、つい心の声が出ちゃったわ。
アミリアは努めて冷静に答えた。

「えっと⋯、それはできません。無理です。私達の婚約破棄はもう正式に受理されています。それに、私が貴方を支えてきたのは、婚約者として仕方なくです。決して愛などではありません」

 それだけは絶対ない。私は冷めた目で見下ろしながら続けた。

「そもそも、私との婚約が結ばれたのも貴方の愚行を少しでも減らす為に、国王様が我がシューベルト家に頼んでこられたのですよ?高位貴族で貴方に釣り合う年齢の令嬢がいなかったから、私にその役目が押し付けられたのです。国王様直々の依頼とあっては流石に断れませんから、せめてもの温情でこの婚姻契約書を作らせて貰いました」


 そう、国王様は分かっていらっしゃったのだ。自分の息子がどうしようもなく馬鹿であると。このままでは駄目だと王太子教育を厳しくされてきたが、それでもこの王子は無能だったのだ。

 そこで、今度は婚約者を優秀なものにして、レオナルドが暴走してもフォローできるようにしようと考えた。そしてその役目を押し付けられたのが、当時10歳になったばかりの私だ。
 私は王太子妃としてだけでなく、王太子が学ぶ内容の事まで勉強させられた。本当に、血反吐を吐く思いで(本当にストレスで血を吐いた)勉強を叩き込まれた。
 ここまでの事をまだ10歳の子供にさせて、更に馬鹿な第一王子の尻拭いを8年間させられてきたのだ。

(誰があんな地獄の日々に戻りたいと思うものですか!!)

 でも、だからこそあの異例とも言える婚約契約書が作られた。アミリアの支え無しで、レオナルドは国王にはなれない。いかなる理由でも、アミリアとの婚姻が破棄されればレオナルドには廃嫡しかなかったのだ。

 それなのに、レオナルドは自らの手でアミリアを捨てたのだ。


「そ、そんな⋯。嘘だ⋯。アミリア、私を見捨てないでくれ。私には君しかいないんだぁ~~」

 そう言って、レオナルドは私に縋り付こうと手を伸ばしてきたがー


 パシッ!!

「気安く私の婚約者に触れないで貰える?兄上」

 そこに現れたのは、第二王子のカマル・ホーク・ダニスタンだった。


「カ、カマル?何故ここに⋯?というか、婚約者だと!?」

「先程父上から、兄上とアミリア嬢の婚約破棄の件を聞きました。そして、私とアミリア嬢の婚約が正式に決まったんです。まさか、兄上がここまで愚かな行動を起こすとは⋯」

カマルは、アミリアを背に庇いながら、兄であるレオナルドを侮蔑の篭った目で見下ろした。

「カマル様⋯庇って頂きありがとうございます。」

 アミリアは淑女の礼をして、庇ってくれたことへのお礼を述べた。

 この、第二王子カマル・ホーク・ダニスタンはレオナルドの3歳下だが、兄と違い王族としての品位と威厳を兼ね備えている。彼こそ王太子として相応しいと誰もが思っていたが、幼少期から身体が弱く、病気がちだったため辺境で療養されていたのだ。
 しかし、ここ数年で彼の体調がみるみると良くなり、今では何の問題もなく健康的になった為、王都に戻ってきたのだ。

 そんな時に、レオナルドが婚約者のいる男爵令嬢に付きまとって問題を起こした。そしてあろう事か、アミリアと婚約破棄までしたのだ。
 今までは、問題を起こさないようにアミリアが庇ってきていたが、もう庇う必要はない。優秀な次期王太子候補がいるのだから。


「アミリア嬢、久しぶりだね。君に怪我などなくてよかった。先程言ったように、私と君の婚姻が正式に決まったんだ。」

 カマルは嬉しそうにアミリアの手を取って、指先に唇を落とした。


 
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