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短編想定だったところ
結婚してくださいませ
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「田中実様、わたくしと結婚してくださいませ!」
「結婚……?」
結婚とは、大雑把に言うと法的に夫婦となることであり、パートナーと今後の人生を共にし、家庭を築いていく……
まてまて、慌てるな。
素人判断を下すな。焦ってはいけない。
今まで僕の人生で、焦っていいことが一つでもあっただろうか。いつだって酷い目に遭ってきただろう。ゲームだって然り、勉強だって然り、急いで終わらせたものはことごとく散々な結果に終わった。
とにかく落ち着け僕。これはなんだ、一体どんなシチュエーションだろうか。物語では、まず己の置かれているシチュエーションを理解しないことには、話が前に進むまい。
まずは己の情報を整理しよう。
僕の名前は田中実。身長、体重、学力、その他諸々全てが平均的な、中国地方広島県在住の普遍的な高校一年生だ。
そして、帰ろうと靴を履き替えていたら、突如黒服に拉致られ、校内裏で星宮柚珠奈さんに求婚を受けて、今に至る。
で?
で、どうして星宮柚珠奈さんに求婚されているのだろう。
星宮柚珠奈さん?
頑張って思い出してみたものの、しかしまったく、それと今の状況が繋がらない。
そもそも、彼女とは何回か顔を合わせた程度の関係である。星宮柚珠奈はいつもオーラを纏っていて、『住んでいる世界が違うんなだな』と本能が告げるようなそんな人だった。
そんな顔見知り程度の相手に、婚約指輪を贈るか普通? 半ば強制的につけさせられたし。
「先日、実様の普通を拝見して惚れました。わたくしと結婚よろしくお願いします」
「そんな一言プロフィールみたいな、雑な自己紹介されてもな……ていうか普通に惚れたってなに?」
「貴方の普通は違います! 全部平均という素晴らしさを貴方は知らない! 昨今、普通は器用万能なのです」
普通という言葉が地雷だったのか、これを皮切りに話し始めた。そのタイミングで、付き人らしい人達がスポットライトを彼女に当て始めた。
「ある方は勉強が平均以下だったり、または筋力が平均以下。健康が平均以下な人もいるんです。なのに貴方は全部が普通。ビューティフォー」
「はぁ……?」
「貴方がもし、わたくしの庇護下に入らなかった場合……」
これは脅しをかけられてしまうのだろうか? 大金持ち特有の脅迫をドラマ以外で見られるとは思わなかった。
「ごく普通の大学に入り、ごく普通の会社に入って、ごく普通の幸せを賜り、ごく普通の大往生を遂げるでしょう」
彼女はフィスト・バンプしながらそう言った。深刻そうに語っているが、とどのつまり『わたくしにつかなければ普遍的な人生を歩むことになりますわよ』ということだろうか?
それははたして脅しなのだろうか?
「なんだろう。普通にいい人生だと思うのだけど?」
「感想まで普通ですわねあなた!?」
「普通普通、連呼しすぎだろ」
「普通な顔に日本人の平均的な体型、平均的な収入と愛情に恵まれた親も兄弟がいる。希少すぎる。わたくしの旦那さんとして欲しい!」
「あんまり褒められた気がしないね!?」
このあと僕の普通な毎日は、このお嬢様の渦に巻き込まれる予感がした。
「結婚……?」
結婚とは、大雑把に言うと法的に夫婦となることであり、パートナーと今後の人生を共にし、家庭を築いていく……
まてまて、慌てるな。
素人判断を下すな。焦ってはいけない。
今まで僕の人生で、焦っていいことが一つでもあっただろうか。いつだって酷い目に遭ってきただろう。ゲームだって然り、勉強だって然り、急いで終わらせたものはことごとく散々な結果に終わった。
とにかく落ち着け僕。これはなんだ、一体どんなシチュエーションだろうか。物語では、まず己の置かれているシチュエーションを理解しないことには、話が前に進むまい。
まずは己の情報を整理しよう。
僕の名前は田中実。身長、体重、学力、その他諸々全てが平均的な、中国地方広島県在住の普遍的な高校一年生だ。
そして、帰ろうと靴を履き替えていたら、突如黒服に拉致られ、校内裏で星宮柚珠奈さんに求婚を受けて、今に至る。
で?
で、どうして星宮柚珠奈さんに求婚されているのだろう。
星宮柚珠奈さん?
頑張って思い出してみたものの、しかしまったく、それと今の状況が繋がらない。
そもそも、彼女とは何回か顔を合わせた程度の関係である。星宮柚珠奈はいつもオーラを纏っていて、『住んでいる世界が違うんなだな』と本能が告げるようなそんな人だった。
そんな顔見知り程度の相手に、婚約指輪を贈るか普通? 半ば強制的につけさせられたし。
「先日、実様の普通を拝見して惚れました。わたくしと結婚よろしくお願いします」
「そんな一言プロフィールみたいな、雑な自己紹介されてもな……ていうか普通に惚れたってなに?」
「貴方の普通は違います! 全部平均という素晴らしさを貴方は知らない! 昨今、普通は器用万能なのです」
普通という言葉が地雷だったのか、これを皮切りに話し始めた。そのタイミングで、付き人らしい人達がスポットライトを彼女に当て始めた。
「ある方は勉強が平均以下だったり、または筋力が平均以下。健康が平均以下な人もいるんです。なのに貴方は全部が普通。ビューティフォー」
「はぁ……?」
「貴方がもし、わたくしの庇護下に入らなかった場合……」
これは脅しをかけられてしまうのだろうか? 大金持ち特有の脅迫をドラマ以外で見られるとは思わなかった。
「ごく普通の大学に入り、ごく普通の会社に入って、ごく普通の幸せを賜り、ごく普通の大往生を遂げるでしょう」
彼女はフィスト・バンプしながらそう言った。深刻そうに語っているが、とどのつまり『わたくしにつかなければ普遍的な人生を歩むことになりますわよ』ということだろうか?
それははたして脅しなのだろうか?
「なんだろう。普通にいい人生だと思うのだけど?」
「感想まで普通ですわねあなた!?」
「普通普通、連呼しすぎだろ」
「普通な顔に日本人の平均的な体型、平均的な収入と愛情に恵まれた親も兄弟がいる。希少すぎる。わたくしの旦那さんとして欲しい!」
「あんまり褒められた気がしないね!?」
このあと僕の普通な毎日は、このお嬢様の渦に巻き込まれる予感がした。
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