星宮お嬢様は普通の人が欲しい

短編想定だったところ

土下座

　星宮柚珠奈が体育館の壇上をジャックして求婚してきた。それに耐えられなくなった僕は放課後、彼女を校内裏に呼びつけたのだった。

「ちょっと、壇上ジャックするのは違うだろ。色んな人に迷惑かけてさ」

「めい、わく……？」

　僕がそう言うと星宮柚珠奈は急に顔面蒼白となった。彼女が初めて見せた顔だった。

「迷惑」

「ダメでしたか。なら、腹を切ってお詫びを」

「詫びのやり方が江戸時代！？　それもやめて！」

　すると星宮柚珠奈は、地べたに手を置き、土下座をした。綺麗な、素晴らしい、土下座であった。

「ちょっと土下座もやめて。てかなんだろう。これを誰かに見られたら殺されそうな気がする」

「わたくし、人様に迷惑をかけることは両親方に厳しく教わりました。実様のいう通り、わたくしは今回、人様に迷惑をたくさんかけました。求婚もそうです。今回の件で自覚しましたが、わたくしは実様にも迷惑をかけたでしょう」

　土下座しているから顔はわからないけれど、声がしおらしかった。

「なので、これ以上迷惑をかけるまえに、あなたのことを諦めます。この日以降、わたくしはあなたの眼前に出ません」

「……いや、アンタはそれでいいのか？」

「実際、断腸の思いですよ。普通を手に入れなかったことは一生後悔するでしょう。ですか、ここが引き際と判断しました」

　どうする僕。おそらく、お嬢様、いや女の子を泣かせてしまった。こうなってみると、彼女は本当に僕のことが好きなのだろう。

　自分の気持ち、星宮柚珠奈に伝えなければ。

「結婚はまだ分からない。だってまだ僕、高校一年生。進路もまだ定まってない。だからまずは、付き合ってみよう」

　そう言った。すると彼女のオーラが再び輝き始め、顔をガバッと上げた。凄く、酷く驚いていた。

「ふふっ、お嬢様でも、あんな顔するんだなぁ」


　こうして僕たちは、付き合い始めた。


☆ひとまず、最終回。ここまでが短編予定の話です。なんか予定外に伸びたので、ここからは長編に移行しようと思ってます。でもストック無いなどうしよう。

　とりあえず誘導しとくか。

新作ラブコメ「双葉莉奈といとこな君と」
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