異世界FIRE ―60歳まで冒険者は無理なので早期退職します―

のちのちザウルス

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俺たちの火魔法 ”FIRE” 4

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「ザザ先生」
「はい、ドルさん」

ここまでNISA口座について話を聞いていたドルが、やや控えめに挙手した。

「あの……国の狙いは一体何なのでしょうか?」
「というと?」
「仮にNISA口座ではなく特定口座で株式等の売買をした場合、かかる税金は20%なのですよね?」
「そうだよ」
「では、大日本帝国視点で考えれば、“20%という膨大な税金を失う施策”を“お金をかけてまで新設した”ということですよね?わざわざ20%ももらえる税金を捨ててまで、国民に有利な制度を作る理由が分からないのです……。だって、大日本帝国にとっては損するばかりではないですか!」
「――いいねえドルさん、君は本当にちゃんとしてる。確かに、君たちからしたらこんなに美味しい話があっていいのかと思うだろうが、国にも当然意図はある」

国の政策に疑いの眼差しを向けたドルを、ザザは手放しに喜んだ。彼の言うことはもっともであり、世の中にはそんなに美味しい話が転がっているはずもない。詐欺なのではと疑心を抱いても無理のない話だ。

国の運営資産は、基本的には税金で成り立っているといってよい。だから、税金を上げるという行為は“国目線で見れば”『財源の確保』ということをしているにすぎないのだ。酒や煙草が非常に分かりやすい。酒は種類にもよるが、例えば最も酒税が高いビールは45.1%が税金である。そして煙草は、そのおよそ61.7%が税金というふざけた嗜好品だ。依存性が高く、一度手を染めた人物は脱却することが難しいようなものには極めて高い税金が課せられており、酒や煙草が大好きな低所得者から搾れるだけ搾り取るスタイルだ。彼らが金持ちになるには酒や煙草をやめるしかないだろう。
さておき、国はなんだかんだ様々な理由を付けて税金をむしり取り、国が国として活動するための資金調達をしているのである。所得税・法人税・地方法人税・住民税・事業税・消費税・酒税・たばこ税・揮発油税・航空機燃料税・石油石炭税・自動車重量税・国際観光旅客税・関税・ゴルフ場利用税・狩猟税・相続税・贈与税・固定資産税・国民健康保険税エトセトラ……。これ以外にもたくさんの税金が存在しているので、暇があれば検索してみてほしい。この中で、日常生活において馴染みの少ないものよりも、消費税の増税といった国民生活に直結するような施策は“国民目線で見れば”負担の増大に繋がる。政府が正しい税金の使い方をしてくれて国民全体の益になるのなら良いが、政治の世界は常に汚職にまみれており、我々が納めた税金が綺麗に使われることは少ないので、我々としてはただお金をむしり取られているだけだからだ。
そして、こんなにもお金をむしり取るのが大好きな国が設定した税金の内話の肝になるのが、株式の売却益に対する税金である“申告分離課税”である。所得税・住民税・復興特別所得税から構成されるコイツは、生じた利益に対して“所得税15%”、“住民税5%” “復興特別所得税0.315%”の合計20.315%の税金がかかる。これだけの儲け、国にとってはフィーバータイムと言ってもいいだろう。
では、NISA口座によってこれら税金を全額控除して、税金を払わなくても良いとする国の意図とはなんなのか。

「これについては、主に政治的なことを決定する『中央ギルド』ですべて決まっているから、下部組織である行政改革ギルドの俺は正確な内容を知らない。だから、ある程度推測の域を出ないんだけど――」

とザザは前置きをした。所詮彼も国家公務員と言えど末端の人間。知らないものは知らないし、聞いてないことは分からないのだ。だが、推察することは誰にでもできる。

「まず考えられるのが、不足する年金分を自分で賄ってもらうため、という理由だ。
今の大日本帝国は生産年齢人口が減少の一途を辿っている。こんな話を聞いたことはあるかな?昔は高齢――クソジジイとクソババアを3.5人に1人で支えていたが、将来的には1人が1人のクソを支えていかないといけなくなる」
『え?先生今クソって言った?』
「つまり、少子高齢化が進んで生産年齢人口が減ることで年金を納める人が減り、相対的に公的年金の受給額が減ってしまうって話だね。まあ、細かいことを言うとGPIFがあるから年金が足りなくなるってことは基本的にあり得ないんだけど、不安に思う人間は遥かに多いってこっちゃ」
「じーぴーあいえふ?」
「おう、その話は今度な。とにかく、事実はさておき『自分が生きていくための資産は自分で準備してね』っていう国の思惑があるんじゃねーの???というのが世間の投資家の見解かな。人生100年時代とか最近聞くだろ?公的年金を受給できるのは65歳以降っていう基準が、数年後には70歳あるいは75歳になっているかもしれない。それに、中央ギルドは高齢者の定義を”70歳以上”に引き上げることを提案しているし、穿った見方をするなら年金の支給開始年齢引上げへの布石とも考えられるよな。要するに、これまでは65歳から年金がもらえてたのに、70歳にならないと年金がもらえなくなるってことだ。
 これらの話を総合して、国は我々小市民に税制優遇を活用した資産運用をさせようとしている、と俺は判断した」
「な、なるほど……。納得致しました」

神妙な顔で頷くドル。さて、彼の心は今どんな気持ちなのか。老人になってまで働かないといけない自分を想像したか、はたまたクソの掃き溜めのようなジジイババアを自分が支えないといけないことに気付いて絶望したか。
なんにせよ。

「とにかく、今俺たちにできるのは準備だ!どんな思惑があるにせよ、国が税制優遇制度を作ってくれたんならそれを活用しない手はない!利用できる部分は骨の髄までしゃぶり尽くす程に活用して、安泰な老後を手に入れるぞ!いいかお前ら!」
『『『お、おー!!!』』』
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