異世界FIRE ―60歳まで冒険者は無理なので早期退職します―

のちのちザウルス

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俺たちの火魔法 ”FIRE” 5

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「よし、じゃあこれがジュニアNISAの申込用紙だ。俺の独断と偏見によって、君たちには2つの証券口座の申込用紙を準備してある。好きな方を選ぶといい」
「はい!!!!」
「お、生き返ったね。はい、なんですかエンさん」

税金の下りから精神崩壊を始め、泡まで吹いていたエンの意識が戻ったようだ。お金儲けの匂いを感じたのか、先程までの死んだ人間みたいな顔から一転つやつやの美肌になっている。

「先生、どこの証券口座を紹介してくれるんですか!?」
「うむ。まずは証券口座のスーパースタンダードとも言える大手、SBBI証券だ」

ザザ人差し指をぴっと立てて説明する。

「SBBI証券の良いところは、とにかくエンターネットで検索してくれ。びっくりするほどいくらでも出てくるから。手数料の安さ、取扱商品の数……とにかく利便性に優れたネット証券だよ。最近多くなってきたけど、ネット証券は手続きがオンラインでほぼほぼ完結するのがいいね!」
「私もSBBI証券で口座作りました!!」
「早い!!!エンさんは本当に優秀な良い子だねえ!!!よーしよしよしよし!!!!」
「えへへ」

エンをわしゃわしゃを撫でくって満足してザザは、人指し指に続いて中指を立てる。
おっと、ここで言う中指を立てるというのはアレではない。“人差し指に続いて”だからピースサインを作って2を表しているのだ。ここまで丁寧に書かないとうるさい人間がいるのでクリエイターは非常にやりにくい世の中になったものである。

「もう1つもSBBI証券と甲乙つけがたいところだよ。2つ目に紹介するのは楽夫証券だ」
「楽夫証券!!」
「俺はどちらかと言えば断然楽夫証券派なんだ。楽夫と言えば、楽夫市場や楽夫カードが有名だよね。楽夫カードウーマンとか、Yo!tubeの広告で死ぬほど出てくるアレね。『らくおっとカードウーマァァアアアン!!!』って銀色のピチピチの服着た人が言ってるやつ。死ぬほど語呂悪いなって思うけど仕方ないね。
さておき、楽夫の良いところは“総合的に資産形成が早くなる”という点だ。そのうち説明するけど、楽夫経済圏に入れば“貯まった楽夫ポイントで投資も出来る”ようになる。これは凄いぞ!現金を使わずに投資ができるんだ!FIREへの道筋を描きやすいのがメリットだね。日々の生活費はすべて楽夫のクレジットカードで支払いをして、日用品はまとめて楽夫市場でクレカ決済。君たちが働くようになれば、楽夫ふるさと納税もクレカ払いで行うことでいっぱいポイントが付く。貯まったポイントで楽夫証券口座から投資信託を買えば、あっという間に資産形成サイクルの完成さ。俺も楽夫ポイントだけで50万バルク以上投資してるぞ!」
「勿論私も持ってます!!!!」
「流石エンさんだ!!!クレジットカードは18歳以上から作ることができるから、君たちも誕生日を迎えたら楽夫カードを作ることをオススメするぞ!」
「勿論もう作ってます!!!!」
「エンさんえら~~~い!!!!なでなで~!」
「やったあ!!!」

教室中の全員が『自分等は何を見せられているんだ』と思い始めたのを察し、ザザは慌てて話を戻す。

「こほん。と、ともかく!エンさんのように証券口座を2つ以上持つパターンも十分あるんだ。分ける理由は様々で、メイン口座とサブ口座で使ったり、証券会社の倒産リスクを分散したりってのが多いかな。ただし、NISA口座はどちらか1つでしか作れないから注意してくれ」

「一応1年に1回変更できるけどね」と、授業をしながらテキパキと申込用紙を全員に配っていくザザ。ジュニアNISA申込用紙と書かれたそれは、FIREへの入口の扉を開くカギでもある。後は、彼らが目の前の紙にペンを走らせるだけだ。

「お膳立てはしたぞ。ここからは、“お前たちが自分の意思で決めること”だ」

いつになく真剣な顔でザザがこちらを見つめている。

「どれだけ俺が良い物を薦めても、どれだけ俺が投資の授業をしても、最後に行動するのはお前たちで、最後に意思決定をするのはお前たちだ。そこだけは俺にもどうすることもできないんだ。お前がFIREしたいと思って俺に助力を頼んでも、お前が動き出さないと現状は何も変わらない。だから――」


「――この怪しくてたまらない申込用紙に名前を書いて、自由への道を一緒に歩もうぜ」


ボールペンを手に取り、申込用紙を見つめる。そう、これを書くのは自分自身だ。どれだけ他人に言われようとも、最後に意思決定をするのは自分で、今1歩を踏み出すかどうかを決めるのも自分なのだ。
”私”は申込用紙を1枚手に取り、名前を――。




「あ、勿論オンライン申込もできるから、そっちがいい人は各自スマフォンかパソコンから申し込んでね!」

ズコーッ!と言う景気の良いズッコけた音が響く。名前を途中まで書いていた連中が舌打ちしながらノートパソコンを取りに行くのを見て、”私”も立ち上がった。
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