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お前の仕事はお前のもの、俺の仕事も実はお前のもの
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――会議室。
長期の使用許可が得られたこの場所は、一時的に行政改革ギルドの執務室へと変貌していた。中には多くの書類やら旧机やらが運び込まれているが、書類を整理整頓&ファイリングしながら分別しているためか、その見た目程汚くはなっていない。
「明日の午前中には棚と机、椅子が届くはずよ。ようやく本拠地に戻れるわね」
マカオは、早く届かないかしらと上機嫌だ。鼻歌混じりに書類を仕分けし、明日に向けての準備に余念がない。実はマカオも現在の机と椅子に不満を持っていた。随所がささくれ立ってボロボロの木の机は、迂闊にペンを走らせるとガタガタになってしまう。それ故に、書類を記載する時は他の書類を何枚も下に重ねて下敷き代わりに使っていた。
椅子も中々へなちょこだ。経年劣化により足の長さが異なる椅子は、ただ座っているだけでもガタガタと傾くため、先のペンと椅子を合わせたガタガタコンボに悩まされていた。それがとうとう解消される時が来たのだ。
「それはそれは、全くもって非常に楽しみですわ」
変わってこちらは巻き髪ドリルを弄ぶお嬢。多くの書類を比較して作業する必要のある彼女だが、すらりとした長い手足を持っているために、今の小さなボロ机で作業するには全身を小さく縮こまらせながら両手足を広げて書類を取らなければならないという歪な業務の取り組み方をしていた。デスクが小さいばかりに、彼女は骨格が歪んで整骨院のお世話になる日々だ。
そんなお嬢には、巨大な体のカイリキ同様大きめの机と椅子が用意される予定だ。これで窮屈な思いをしなくて済むだろう。
一方、一般社員であるお嬢の机だけが大きいとレイアウトがいびつになるため、必然的にマカオやザザの机も巨大になっていった。これについては、ワークスペースが増えて良いとザザから好評である。
さて、ザザはと言えば、カイリキと共に魔法の練習をしていた。
「――というのが、光魔法を使うイメージです。後は反復練習で感覚を掴んで下さい」
「ありがとう、ザザ君。でもやっぱり成果が目に見えないのはつらいなあ……。あ、魔力を込める材料に水晶球を使ってみるのはどうかな?あれなら、込めた魔力に応じて光り方が変わるじゃないか。上手いこと光魔法を注入出来てるなら白く光るから、その場で成果も確認できる」
「確かに!うわ、気付かなかったなあ……俺、結構時間かけて他の魔法を覚えたので、なんか勿体ないことした気分です。まあ、所詮俺も独学ですからね、カイリキさんの知見があると本当に助かります」
「よせやい、給料しかあげられないぞ」
「ふふ。確かこの辺に予備の水晶が……あったあった。ライト」
透明な水晶球がカッと白く輝く。「オーバークロック」と、続けてザザが唱えたのは雷の魔法。今度は金色に水晶球が輝いた。
「良さそうですね。これを手順に入れましょう」
ザザとカイリキが行っているのは、光魔法の練習マニュアルの作成である。片付けが終わり、残す業務は明日の書類搬入だけとなった二人。平時の業務も、ザザの雷魔法&気合のタイピングで協力してサクサクと終わらせたため、余った時間で『ランタンへの光魔法封入マニュアル』を作りたいとザザが提案したのだ。
このマニュアルには、誰もが光魔法を使用できるように練習方法も網羅し、行政改革ギルド員全員が魔石への魔法封入ができることを目指している。
足掛けとして、まずはカイリキが作成したマニュアル通りに実行し、その成果を確認していた。
「じゃあ、今度は僕がやってみるよ。はああああああ……ライトォォオオオオ!!」
水晶球がカッと茶色に光る。土属性の反応にザザは失敗かと思ったが、カイリキの反応は上々だ。
「お、ちょっと白っぽい茶色だったね。なるほどなるほど、ライトを出してるつもりでも、まだまだ僕は土魔法を使ってるってことか。いいねザザ君、これでマニュアル作ろう!」
「俺はイマイチ違いが分からなかったんですが……」
「普通に土魔法使うと……こう!」
先程よりも黒色が強い茶色の光が灯る。なるほど、確かに先程の違いは明らかだ。
「おー、確かにこれなら比較して分かりやすいですね。カイリキさん、この経過を教材にしたいので、日記のように成果をメモしてもらえませんか」
「お安い御用だとも」
行政改革ギルド、改革の本格始動まであと少し。
長期の使用許可が得られたこの場所は、一時的に行政改革ギルドの執務室へと変貌していた。中には多くの書類やら旧机やらが運び込まれているが、書類を整理整頓&ファイリングしながら分別しているためか、その見た目程汚くはなっていない。
「明日の午前中には棚と机、椅子が届くはずよ。ようやく本拠地に戻れるわね」
マカオは、早く届かないかしらと上機嫌だ。鼻歌混じりに書類を仕分けし、明日に向けての準備に余念がない。実はマカオも現在の机と椅子に不満を持っていた。随所がささくれ立ってボロボロの木の机は、迂闊にペンを走らせるとガタガタになってしまう。それ故に、書類を記載する時は他の書類を何枚も下に重ねて下敷き代わりに使っていた。
椅子も中々へなちょこだ。経年劣化により足の長さが異なる椅子は、ただ座っているだけでもガタガタと傾くため、先のペンと椅子を合わせたガタガタコンボに悩まされていた。それがとうとう解消される時が来たのだ。
「それはそれは、全くもって非常に楽しみですわ」
変わってこちらは巻き髪ドリルを弄ぶお嬢。多くの書類を比較して作業する必要のある彼女だが、すらりとした長い手足を持っているために、今の小さなボロ机で作業するには全身を小さく縮こまらせながら両手足を広げて書類を取らなければならないという歪な業務の取り組み方をしていた。デスクが小さいばかりに、彼女は骨格が歪んで整骨院のお世話になる日々だ。
そんなお嬢には、巨大な体のカイリキ同様大きめの机と椅子が用意される予定だ。これで窮屈な思いをしなくて済むだろう。
一方、一般社員であるお嬢の机だけが大きいとレイアウトがいびつになるため、必然的にマカオやザザの机も巨大になっていった。これについては、ワークスペースが増えて良いとザザから好評である。
さて、ザザはと言えば、カイリキと共に魔法の練習をしていた。
「――というのが、光魔法を使うイメージです。後は反復練習で感覚を掴んで下さい」
「ありがとう、ザザ君。でもやっぱり成果が目に見えないのはつらいなあ……。あ、魔力を込める材料に水晶球を使ってみるのはどうかな?あれなら、込めた魔力に応じて光り方が変わるじゃないか。上手いこと光魔法を注入出来てるなら白く光るから、その場で成果も確認できる」
「確かに!うわ、気付かなかったなあ……俺、結構時間かけて他の魔法を覚えたので、なんか勿体ないことした気分です。まあ、所詮俺も独学ですからね、カイリキさんの知見があると本当に助かります」
「よせやい、給料しかあげられないぞ」
「ふふ。確かこの辺に予備の水晶が……あったあった。ライト」
透明な水晶球がカッと白く輝く。「オーバークロック」と、続けてザザが唱えたのは雷の魔法。今度は金色に水晶球が輝いた。
「良さそうですね。これを手順に入れましょう」
ザザとカイリキが行っているのは、光魔法の練習マニュアルの作成である。片付けが終わり、残す業務は明日の書類搬入だけとなった二人。平時の業務も、ザザの雷魔法&気合のタイピングで協力してサクサクと終わらせたため、余った時間で『ランタンへの光魔法封入マニュアル』を作りたいとザザが提案したのだ。
このマニュアルには、誰もが光魔法を使用できるように練習方法も網羅し、行政改革ギルド員全員が魔石への魔法封入ができることを目指している。
足掛けとして、まずはカイリキが作成したマニュアル通りに実行し、その成果を確認していた。
「じゃあ、今度は僕がやってみるよ。はああああああ……ライトォォオオオオ!!」
水晶球がカッと茶色に光る。土属性の反応にザザは失敗かと思ったが、カイリキの反応は上々だ。
「お、ちょっと白っぽい茶色だったね。なるほどなるほど、ライトを出してるつもりでも、まだまだ僕は土魔法を使ってるってことか。いいねザザ君、これでマニュアル作ろう!」
「俺はイマイチ違いが分からなかったんですが……」
「普通に土魔法使うと……こう!」
先程よりも黒色が強い茶色の光が灯る。なるほど、確かに先程の違いは明らかだ。
「おー、確かにこれなら比較して分かりやすいですね。カイリキさん、この経過を教材にしたいので、日記のように成果をメモしてもらえませんか」
「お安い御用だとも」
行政改革ギルド、改革の本格始動まであと少し。
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