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事故は起きるさ、仕方ない 5
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「それで少し油断して、駐車場の隣に停めてた馬車にぶつけてしまったと」
「はい」
自動車学校に通ったものならば誰でも聞くであろう“内輪差”という言葉。車が右左折する際にできる、内側の前輪と内側の後輪の進む軌道のズレのことを指す。一般的な自動車の場合、ハンドルは前輪の動きを操作して後輪は前輪の動きに沿って動く。しかし、カーブの際は必ず前輪と後輪の軌道にズレが生じ、リヤタイヤはフロントタイヤより内側の軌道を通るようになっている。大型車やトラックなど前輪と後輪の中心の距離が長い車ほど軌道のズレが大きくなるのだ。
今回の事象は、内輪差によって馬車の後輪付近が隣の停車車両に接触、破損させたというものである。馬車は馬の部分と座席部分が独立しており、特に内輪差を考えて運転しなければならないのだ。
「まず最初に僕から言っておくね。事故は起きる、仕方ない」
カイリキがなだめるように、それでいて止むを得ないように話す。
「一生事故なく生きていくなんて、なかなか出来ることじゃない。運転の上手い下手、貰い事故、凍結路面や悪天候、色々な要因がある。だからこそ、次に事故を起こさないためにはどうしたらいいのか、それを考えるのが今の僕たちにできることだよ」
「はい」
マカオは変わらず下を向いている。事故を起こした張本人だし、これからかかる費用のことを考えると、気分が下を向くのも無理はないだろう。それでも、ギルドの長としてカイリキはマカオに問わねばならないのである。
「それじゃあ、マカオ君。今回の事象が起きた原因は、一体何だと思う?他の皆も一緒に考えてみてほしい。マカオ君、どうだい?」
「そうね……やはり、仕事が終わってホッとしたからかしら。アタシは多少気が緩んでいたように思うわ。特に朝方はバタバタしていて、ずっと気が張り詰めていたから」
「なるほどね。普段と違う経路を通ったのもそれが原因かい?」
「そうね。だからこそ、いつもの駐車場とは違うところに馬車を止めてしまった」
マカオが普段利用している駐車場は、今回事故の起きた場所よりも広く、馬車を止めやすいところであった。駐車場を出るときの見通しも良く、歩行者の位置も確認しやすい。料金は多少かかるものの、カイリキもそこを使うように推奨していた。しかし今回は、現場に向かう途中でいつもと異なる路地に入ったためいつもの駐車場は利用せず、多少狭いものの近場の手頃な駐車場を利用することにしたのだ。
「いつものところに止めていれば、なんてたらればの話になっちゃうけど、そうしたら事故は起きなかったと思うわ」
「確かにそうかもしれないね。お嬢はどうかな」
「そうね。私は、出発前に車両の周囲を確認しなかったことが原因の1つだと思うわ」
出発の前の周囲状況の確認は、会社の再発防止策としてよく挙げられる案の1つである。例えば現代日本においても、ミラーの死角に実は小さなポールが立っていて気付かずぶつけてしまった、なんて事象には事欠かない。田舎においては駐車場なんてものもなく、その辺の道端に駐車するケースもあるが、邪魔にならないように草木の茂った場所へ車を寄せたら、藪の中にコンクリートブロックがあってぶつかったなんて面白い事例もある。
さて今回の場合は、発進前に隣の馬車との離隔を十分に確認していれば、「距離が近いな、少し膨らみながら曲がろう」などと思ったかもしれないし、そうでなくとも注意する一助にはなったであろう。
「狭い駐車場だったのなら尚更。馬車を出す前に周囲を確認しておくべきだったのではないかと思うわ」
「うん、それも一因だね。死角も多いから気を付けないといけない。ザザ君はどうかな?っていうか免許持ってる?」
「あの、そんなことより、もう帰っていいですか?」
ザザ・ナムルクルス、今宵も爆弾を投下していく。
「はい」
自動車学校に通ったものならば誰でも聞くであろう“内輪差”という言葉。車が右左折する際にできる、内側の前輪と内側の後輪の進む軌道のズレのことを指す。一般的な自動車の場合、ハンドルは前輪の動きを操作して後輪は前輪の動きに沿って動く。しかし、カーブの際は必ず前輪と後輪の軌道にズレが生じ、リヤタイヤはフロントタイヤより内側の軌道を通るようになっている。大型車やトラックなど前輪と後輪の中心の距離が長い車ほど軌道のズレが大きくなるのだ。
今回の事象は、内輪差によって馬車の後輪付近が隣の停車車両に接触、破損させたというものである。馬車は馬の部分と座席部分が独立しており、特に内輪差を考えて運転しなければならないのだ。
「まず最初に僕から言っておくね。事故は起きる、仕方ない」
カイリキがなだめるように、それでいて止むを得ないように話す。
「一生事故なく生きていくなんて、なかなか出来ることじゃない。運転の上手い下手、貰い事故、凍結路面や悪天候、色々な要因がある。だからこそ、次に事故を起こさないためにはどうしたらいいのか、それを考えるのが今の僕たちにできることだよ」
「はい」
マカオは変わらず下を向いている。事故を起こした張本人だし、これからかかる費用のことを考えると、気分が下を向くのも無理はないだろう。それでも、ギルドの長としてカイリキはマカオに問わねばならないのである。
「それじゃあ、マカオ君。今回の事象が起きた原因は、一体何だと思う?他の皆も一緒に考えてみてほしい。マカオ君、どうだい?」
「そうね……やはり、仕事が終わってホッとしたからかしら。アタシは多少気が緩んでいたように思うわ。特に朝方はバタバタしていて、ずっと気が張り詰めていたから」
「なるほどね。普段と違う経路を通ったのもそれが原因かい?」
「そうね。だからこそ、いつもの駐車場とは違うところに馬車を止めてしまった」
マカオが普段利用している駐車場は、今回事故の起きた場所よりも広く、馬車を止めやすいところであった。駐車場を出るときの見通しも良く、歩行者の位置も確認しやすい。料金は多少かかるものの、カイリキもそこを使うように推奨していた。しかし今回は、現場に向かう途中でいつもと異なる路地に入ったためいつもの駐車場は利用せず、多少狭いものの近場の手頃な駐車場を利用することにしたのだ。
「いつものところに止めていれば、なんてたらればの話になっちゃうけど、そうしたら事故は起きなかったと思うわ」
「確かにそうかもしれないね。お嬢はどうかな」
「そうね。私は、出発前に車両の周囲を確認しなかったことが原因の1つだと思うわ」
出発の前の周囲状況の確認は、会社の再発防止策としてよく挙げられる案の1つである。例えば現代日本においても、ミラーの死角に実は小さなポールが立っていて気付かずぶつけてしまった、なんて事象には事欠かない。田舎においては駐車場なんてものもなく、その辺の道端に駐車するケースもあるが、邪魔にならないように草木の茂った場所へ車を寄せたら、藪の中にコンクリートブロックがあってぶつかったなんて面白い事例もある。
さて今回の場合は、発進前に隣の馬車との離隔を十分に確認していれば、「距離が近いな、少し膨らみながら曲がろう」などと思ったかもしれないし、そうでなくとも注意する一助にはなったであろう。
「狭い駐車場だったのなら尚更。馬車を出す前に周囲を確認しておくべきだったのではないかと思うわ」
「うん、それも一因だね。死角も多いから気を付けないといけない。ザザ君はどうかな?っていうか免許持ってる?」
「あの、そんなことより、もう帰っていいですか?」
ザザ・ナムルクルス、今宵も爆弾を投下していく。
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