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何もしてないならパソコンは壊れない 2
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鬼教官ザザ・ナムルクルスの訓練により、パソコン音痴なカイリキを始めとして、行政改革ギルドの人間は多少なりともパソコンに対する知識や理解が深まったと自他共に認めている。だからこそ、彼らは信じられないのだ。世の中にはまだこんな人間がいるという事実に。
――もう何度目だろうか。カイリキは絶望して項垂れるも、また目の前のヘルプデスク用電話が鳴り始める。カイリキは、ザザに放った言葉を心の底から取り消したいと思う程後悔しながら電話をとった。
「はい、行政改革ギルド ヘルプデスクです」
『すいません、教えてください!』
電話口の向こうからは、年配の女性の声が聞こえる。かなり慌てているのか、まくし立てるがごとく切羽詰まったように話を続ける。
「はい。いかがなさいましたか」
『あの、ファイルなんですけど……私が作ったMxcelのファイル、一体どこにしまってあるんでしょうか?』
ハズレを引いた、とカイリキは頭を抱えた。
ヘルプデスクに問合せする人は、ITの知識を全くと言っていい程持ち合わせていないことが多い。したがって、こういう訳の分からない電話が平気でかかってくるのだ。
『さっき保存したはずなんですけど、どこにあるか全然見つからないんですよ。どこに保存されているんですか?』
「……えーと、ちょっと分からないですね。保存した場所にないんですか」
『保存した場所……?それってどこですか?』
「え?そ、そうですね……保存する時、どこを指定して保存したか分かりますか?」
『そんなの、いつもの場所に決まっています!』
どこだよ。分かるわけがない。むしろなんでお前が知らないんだ。カイリキはさらに頭を抱えることになる。ザザ君助けて!と思って顔上げると、虚空を見ながら電話応対するザザの姿が目に留まる。ダメだこれ、一人でなんとかするしかない。
残念ながらカイリキはエスパータイプではなく格闘タイプなので、初めて会話した相手がどこにファイルを保存しているのか知る由もない。ならば聞くしかない。
「では、いつも保存している場所をお教え頂いてもよろしいですか?」
『そんなの私だってわかりませんよ!』
「……そうですか」
――ガチャン。
カイリキは受話器を静かに切ると、いつもの業務に戻った。すると、同じく死んだ人間みたいな顔をしたお嬢が近付いてきてカイリキを窘める。
「カイリキさん、勝手に切るのはマズいのではなくて?」
「仕方ないじゃないか。この人多分バカなんだよ」
「一応同じギルドの職員じゃないの。バカなんて言ったら失礼だし、それに可哀想だわ」
表情から生気が抜け落ちた顔で全く説得力がないが、まあ確かにその通り。
「それに、ここに電話をかけてきたってことは、何かに困って、ここの番号を調べて、藁にも縋る思いで質問をした、そういうことでしょう?バカでもアホでもゴミでも、行政改革ギルド ヘルプデスクとして誠実な対応をしなければならないわ」
「……そうだね。クソでもカスでもボケでも誠実な対応をしないとね」
「カイリキさんの口からクソとかカスなんて言葉が聞けるなんて、私は夢でも見てるのかしら」
「お嬢君もアホとかゴミとか言うんだなあ」
「私はいいのよ。ともかく、リダイヤルでかけ直した方が良いわ。おそらくだけど、『いつもの場所』って言ってたのは、マイドキュメントかデスクトップだと思うわよ。デフォルトでファイルセレクターが開く場所にファイルがあるんじゃないかしら」
「あー、そうかも……」
「それに、最悪ファイルは検索すれば良いのよ。Ctrl+fキーでしょ、これくらい出来なきゃザザ君に怒られてしまうわ」
と、お嬢が言い終わった途端に再びヘルプデスク用の電話が鳴り始める。ディスプレイには、先程のものと同じ番号が表示されていた。つまり、この電話の主は先程のババアと同じということになる。カイリキは思いっきり深呼吸をして十分に酸素を取り込み、意を決して受話器を取り上げた。
「……はい、行政改革ギルド ヘルプデスクです」
『あっ!あなた、さっきの人ね!なんで電話切るのよ!』
「大変申し訳ございませんでした。メモを取ろうとしたら受話器を落としてしまったので、そのせいで電話が切れてしまいました。それより、先程仰っていた“いつもの場所”というのは、マイドキュメントフォルダではないでしょうか」
カイリキは相手の話を無視する。このままでは分が悪いし、さっさと話を切り替えた方が良い。しかし――。
『ねえ、マイドキュメントにMxcelファイルないわよ!一体どこなのよ!?』
「ええっと、じゃあデスクトップでしょうか」
『そんなのとっくに探したわ』
「それじゃあ、検索を試してみましょう。なんていうファイル名で保存したか、お教え頂いてもいいですか?」
『ファイル名?そんなのいつも通りよ』
「いつも通り?」
『ええ。いつも通り自然についた名前で保存したわ。だから、名前なんて覚えているわけないじゃない』
――ガチャン。
カイリキは電話を切った。その後、このババアから死ぬほど電話がかかってきたので、ザザがパソコンを遠隔操作して履歴から探した。カイリキは死んだ。
――もう何度目だろうか。カイリキは絶望して項垂れるも、また目の前のヘルプデスク用電話が鳴り始める。カイリキは、ザザに放った言葉を心の底から取り消したいと思う程後悔しながら電話をとった。
「はい、行政改革ギルド ヘルプデスクです」
『すいません、教えてください!』
電話口の向こうからは、年配の女性の声が聞こえる。かなり慌てているのか、まくし立てるがごとく切羽詰まったように話を続ける。
「はい。いかがなさいましたか」
『あの、ファイルなんですけど……私が作ったMxcelのファイル、一体どこにしまってあるんでしょうか?』
ハズレを引いた、とカイリキは頭を抱えた。
ヘルプデスクに問合せする人は、ITの知識を全くと言っていい程持ち合わせていないことが多い。したがって、こういう訳の分からない電話が平気でかかってくるのだ。
『さっき保存したはずなんですけど、どこにあるか全然見つからないんですよ。どこに保存されているんですか?』
「……えーと、ちょっと分からないですね。保存した場所にないんですか」
『保存した場所……?それってどこですか?』
「え?そ、そうですね……保存する時、どこを指定して保存したか分かりますか?」
『そんなの、いつもの場所に決まっています!』
どこだよ。分かるわけがない。むしろなんでお前が知らないんだ。カイリキはさらに頭を抱えることになる。ザザ君助けて!と思って顔上げると、虚空を見ながら電話応対するザザの姿が目に留まる。ダメだこれ、一人でなんとかするしかない。
残念ながらカイリキはエスパータイプではなく格闘タイプなので、初めて会話した相手がどこにファイルを保存しているのか知る由もない。ならば聞くしかない。
「では、いつも保存している場所をお教え頂いてもよろしいですか?」
『そんなの私だってわかりませんよ!』
「……そうですか」
――ガチャン。
カイリキは受話器を静かに切ると、いつもの業務に戻った。すると、同じく死んだ人間みたいな顔をしたお嬢が近付いてきてカイリキを窘める。
「カイリキさん、勝手に切るのはマズいのではなくて?」
「仕方ないじゃないか。この人多分バカなんだよ」
「一応同じギルドの職員じゃないの。バカなんて言ったら失礼だし、それに可哀想だわ」
表情から生気が抜け落ちた顔で全く説得力がないが、まあ確かにその通り。
「それに、ここに電話をかけてきたってことは、何かに困って、ここの番号を調べて、藁にも縋る思いで質問をした、そういうことでしょう?バカでもアホでもゴミでも、行政改革ギルド ヘルプデスクとして誠実な対応をしなければならないわ」
「……そうだね。クソでもカスでもボケでも誠実な対応をしないとね」
「カイリキさんの口からクソとかカスなんて言葉が聞けるなんて、私は夢でも見てるのかしら」
「お嬢君もアホとかゴミとか言うんだなあ」
「私はいいのよ。ともかく、リダイヤルでかけ直した方が良いわ。おそらくだけど、『いつもの場所』って言ってたのは、マイドキュメントかデスクトップだと思うわよ。デフォルトでファイルセレクターが開く場所にファイルがあるんじゃないかしら」
「あー、そうかも……」
「それに、最悪ファイルは検索すれば良いのよ。Ctrl+fキーでしょ、これくらい出来なきゃザザ君に怒られてしまうわ」
と、お嬢が言い終わった途端に再びヘルプデスク用の電話が鳴り始める。ディスプレイには、先程のものと同じ番号が表示されていた。つまり、この電話の主は先程のババアと同じということになる。カイリキは思いっきり深呼吸をして十分に酸素を取り込み、意を決して受話器を取り上げた。
「……はい、行政改革ギルド ヘルプデスクです」
『あっ!あなた、さっきの人ね!なんで電話切るのよ!』
「大変申し訳ございませんでした。メモを取ろうとしたら受話器を落としてしまったので、そのせいで電話が切れてしまいました。それより、先程仰っていた“いつもの場所”というのは、マイドキュメントフォルダではないでしょうか」
カイリキは相手の話を無視する。このままでは分が悪いし、さっさと話を切り替えた方が良い。しかし――。
『ねえ、マイドキュメントにMxcelファイルないわよ!一体どこなのよ!?』
「ええっと、じゃあデスクトップでしょうか」
『そんなのとっくに探したわ』
「それじゃあ、検索を試してみましょう。なんていうファイル名で保存したか、お教え頂いてもいいですか?」
『ファイル名?そんなのいつも通りよ』
「いつも通り?」
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