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何もしてないならパソコンは壊れない 7
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「結局、業務自体は移管しなくて良かったんですか?」
ザザは嫌そうな態度を崩さずにカイリキに質問した。
行政改革ギルドのヘルプデスク業務は、チャットbotを導入したことによって終焉を迎えた。――とは残念ながらいかないのである。botで対応できないような難しい問合せや業務は個別に対応しなければならないし、現状のチンケな質問への回答とは違って非常に高度な専門性が必要になるに違いない。それはシステムを運用していく以上、システム改修やシステムのサービス停止などにおいて今後必ず発生する問題であるし、ザザとしては中央ギルドあたりに統括部署を作って対応して欲しかったというのが本音なのだが――。
「あー、ちょっと色々問題が発生してね。いや、問題って言っても良い問題なんだけど、とにかくそれのせい、というかそれのおかげで移管しなくてもよいと判断したんだ」
「良い問題?」
「うん。チャットbotが自我を持ったんだ」
「は?」
ザザ、目をぱちくり。自我?何、自我って。痔が、って言ってる?もしかして俺のケツの心配されてる???キレそう、ケツだけに。
「痔が、じゃないよ。なんでザザ君の切れてる話をしないといけないのさ。自我だよ。なんでもあのチャットbotのAIは、プログラムを作った人の莫大な魔力エネルギーを取り込んで進化したものらしいんだ。ほら、こないだザザ君が技術士試験を受けた時にいたっていう恐竜の着ぐるみの人がいたじゃない。あの人が、これを頼んだ企業に就職したんだって。で、これを作ったらあら不思議、なんだか高度なAIが出来ちゃったってわけ」
「そんなバカな」
「でも出来ちゃったんだから仕方ない。で、そのAIは自立進化を始めて、ギルドのシステムのことならなんでも答えられるスーパーチャットbotになったってわけ。システム自身がシステム改修をしたり、新システム導入の提案をしてくれたりするんだよ」
「マジかよ絶対嘘だろ……」
カイリキはニコニコと笑っているが、ザザは戦々恐々としている。チャットbotが進化したAIによってなんでも答えられるようになった?自分でシステムを改修する?そんなの、ザザが転生前の日本にいた時でも聞いたことがない。だが、一方で腑に落ちることもあった。
「――全て納得とはいかないですが、理解できることもあります。俺は技術士試験に落ちましたが、その人は受かってましたもんね。つまり、そういうことです。カイリキさん、それが技術士の力ですよ。真に技術ある者は、新しい高度な技術やシステムを作り出すんです」
「おお、なるほどね!凄いね技術士!」
「いやー本当に凄いです!なんて言っても技術系資格の最高峰ですからね。俺も受かってたらそういうことが出来たのかなー!」
はっはっはっはっは!!!
「……バカ2人は気楽でいいわね」
「そうね。……ザザ君は思考するのを諦めたみたいに見えるけど」
「それでも、アタシは今の状況に満足よ。二度とあんなサポート対応なんてごめんだわ」
「それは私も同意見。もしマカオがやりたいなんて言い出したら全力で止めたでしょうね」
「アタシは人の話聞くの苦手だもん。向いてないわよ。おかげでだいぶパソコンのことには詳しくなったけど」
「同感」
今回のヘルプデスク事件を経て、彼らは今のギルド全体を取り巻く問題に気付いたことだろう。それは、エンターネットを始めとしたIT技術を高年齢層が使いこなせないことである。現代日本においては、年齢が上がるにつれてITに疎くなるというのは、至極当たり前のことと受け止められている。しかし、諸外国では必ずしもそうとは限らない。年齢が高くなるとITスキルが下がるのはいずれの国にも見られる傾向ではあるが、日本の場合は特に相関が高いという特徴が見られている。この異世界においてもそれは同じであり、例えばメリケン国などは高齢者のITスキルも抜きん出ている。
だが、実はこの傾向は高齢者だけではなく、若年層においても同じ傾向がある。諸外国では16~34歳までのITスキルはほぼ同レベルだが、大日本帝国では24歳以下になると急激に低下しているデータがある。すなわち、大日本帝国では高齢者に加えて“若者のITスキルも低い”ということになる。しかし、それは決して“若者が悪い”だけではない。一連の結果は教育環境とも関係している可能性が高いと言えるからだ。義務教育課程において、大日本帝国の学生のIT活用度は、すべての国家の中でも最低水準である。子供がITツールに触れる機会が少なければ、ITスキルやリテラシーが低下するのは当然だと考えられる。
さて、ギルド全体に話を戻そう。先の市民管理ギルドのオツボネのように電話質問をしまくる連中は、これらITに対する理解のなさにより、“ツールを活用して検索する力” 等が育たず、“ITやシステムは難しいもの”と捉えていた。それが、分からないから分かる人に聞こう、という安直な発想へと昇華し、ヘルプデスクの負担を増やすことに繋がっていたのだ。
この問題を解決するためのポイントは、やはり『彼ら“IT弱者に自己解決を促す仕組み”を整えること』である。そして、そのためのツールやシステムを提供し、また授業や講習といった勉強する機会を与える事で、その多くの問題は解決するはずだ。現に、今回はチャットbotを多くの人が活用し始めたことによって、行政改革ギルドの負担は一気にゼロ近くにまで下がっている。“恐竜の着ぐるみ”の人が、いかなる気持ちでこのチャットbotを作ったのかは定かではない。しかし、彼の力は間違いなくIT弱者の新しい力になったことだろう。
「今度新しいシステム入れる機会があったら、またそこの企業に頼みましょうよ」
「あ、いいねー!僕も賛成だ」
はっはっはっはっは!!!
「の ち」
ザザは嫌そうな態度を崩さずにカイリキに質問した。
行政改革ギルドのヘルプデスク業務は、チャットbotを導入したことによって終焉を迎えた。――とは残念ながらいかないのである。botで対応できないような難しい問合せや業務は個別に対応しなければならないし、現状のチンケな質問への回答とは違って非常に高度な専門性が必要になるに違いない。それはシステムを運用していく以上、システム改修やシステムのサービス停止などにおいて今後必ず発生する問題であるし、ザザとしては中央ギルドあたりに統括部署を作って対応して欲しかったというのが本音なのだが――。
「あー、ちょっと色々問題が発生してね。いや、問題って言っても良い問題なんだけど、とにかくそれのせい、というかそれのおかげで移管しなくてもよいと判断したんだ」
「良い問題?」
「うん。チャットbotが自我を持ったんだ」
「は?」
ザザ、目をぱちくり。自我?何、自我って。痔が、って言ってる?もしかして俺のケツの心配されてる???キレそう、ケツだけに。
「痔が、じゃないよ。なんでザザ君の切れてる話をしないといけないのさ。自我だよ。なんでもあのチャットbotのAIは、プログラムを作った人の莫大な魔力エネルギーを取り込んで進化したものらしいんだ。ほら、こないだザザ君が技術士試験を受けた時にいたっていう恐竜の着ぐるみの人がいたじゃない。あの人が、これを頼んだ企業に就職したんだって。で、これを作ったらあら不思議、なんだか高度なAIが出来ちゃったってわけ」
「そんなバカな」
「でも出来ちゃったんだから仕方ない。で、そのAIは自立進化を始めて、ギルドのシステムのことならなんでも答えられるスーパーチャットbotになったってわけ。システム自身がシステム改修をしたり、新システム導入の提案をしてくれたりするんだよ」
「マジかよ絶対嘘だろ……」
カイリキはニコニコと笑っているが、ザザは戦々恐々としている。チャットbotが進化したAIによってなんでも答えられるようになった?自分でシステムを改修する?そんなの、ザザが転生前の日本にいた時でも聞いたことがない。だが、一方で腑に落ちることもあった。
「――全て納得とはいかないですが、理解できることもあります。俺は技術士試験に落ちましたが、その人は受かってましたもんね。つまり、そういうことです。カイリキさん、それが技術士の力ですよ。真に技術ある者は、新しい高度な技術やシステムを作り出すんです」
「おお、なるほどね!凄いね技術士!」
「いやー本当に凄いです!なんて言っても技術系資格の最高峰ですからね。俺も受かってたらそういうことが出来たのかなー!」
はっはっはっはっは!!!
「……バカ2人は気楽でいいわね」
「そうね。……ザザ君は思考するのを諦めたみたいに見えるけど」
「それでも、アタシは今の状況に満足よ。二度とあんなサポート対応なんてごめんだわ」
「それは私も同意見。もしマカオがやりたいなんて言い出したら全力で止めたでしょうね」
「アタシは人の話聞くの苦手だもん。向いてないわよ。おかげでだいぶパソコンのことには詳しくなったけど」
「同感」
今回のヘルプデスク事件を経て、彼らは今のギルド全体を取り巻く問題に気付いたことだろう。それは、エンターネットを始めとしたIT技術を高年齢層が使いこなせないことである。現代日本においては、年齢が上がるにつれてITに疎くなるというのは、至極当たり前のことと受け止められている。しかし、諸外国では必ずしもそうとは限らない。年齢が高くなるとITスキルが下がるのはいずれの国にも見られる傾向ではあるが、日本の場合は特に相関が高いという特徴が見られている。この異世界においてもそれは同じであり、例えばメリケン国などは高齢者のITスキルも抜きん出ている。
だが、実はこの傾向は高齢者だけではなく、若年層においても同じ傾向がある。諸外国では16~34歳までのITスキルはほぼ同レベルだが、大日本帝国では24歳以下になると急激に低下しているデータがある。すなわち、大日本帝国では高齢者に加えて“若者のITスキルも低い”ということになる。しかし、それは決して“若者が悪い”だけではない。一連の結果は教育環境とも関係している可能性が高いと言えるからだ。義務教育課程において、大日本帝国の学生のIT活用度は、すべての国家の中でも最低水準である。子供がITツールに触れる機会が少なければ、ITスキルやリテラシーが低下するのは当然だと考えられる。
さて、ギルド全体に話を戻そう。先の市民管理ギルドのオツボネのように電話質問をしまくる連中は、これらITに対する理解のなさにより、“ツールを活用して検索する力” 等が育たず、“ITやシステムは難しいもの”と捉えていた。それが、分からないから分かる人に聞こう、という安直な発想へと昇華し、ヘルプデスクの負担を増やすことに繋がっていたのだ。
この問題を解決するためのポイントは、やはり『彼ら“IT弱者に自己解決を促す仕組み”を整えること』である。そして、そのためのツールやシステムを提供し、また授業や講習といった勉強する機会を与える事で、その多くの問題は解決するはずだ。現に、今回はチャットbotを多くの人が活用し始めたことによって、行政改革ギルドの負担は一気にゼロ近くにまで下がっている。“恐竜の着ぐるみ”の人が、いかなる気持ちでこのチャットbotを作ったのかは定かではない。しかし、彼の力は間違いなくIT弱者の新しい力になったことだろう。
「今度新しいシステム入れる機会があったら、またそこの企業に頼みましょうよ」
「あ、いいねー!僕も賛成だ」
はっはっはっはっは!!!
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