異世界ギルドで業務効率化 ―残業なし、年間休日130日、有給消化率100%の職場です―

のちのちザウルス

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何もしてないならパソコンは壊れない 6

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市民管理ギルドの重鎮オツボネは、繋がらない電話を耳に当てたままポカーンとしている。何故なら、昨日まで何度電話をかけても親切に対応してくれたヘルプデスクの電話が突如として使用不可になっていたからだ。オツボネの隣に座っているワカイコは、オツボネがなんらかの問題に巻き込まれていることに気付いたが、関わり合いになりたくなかったので自分から話しかけようとはしなかった。むしろ、オツボネに話しかけられることを恐れて、さっさと化粧室に駆け込んでいった。これも仕事の知恵である。さておき。

「どうして繋がらないのよ……」

不審に思ったオツボネは、久しぶりにヘルプデスクのポータルサイトを確認しようと思って“エンターネットエクスプローラ”を起動した(Oggole Chromeじゃないのがミソである)。普段から電話をかけて解決していたオツボネは全く知らぬことであったが、そのポータルサイトにはこのように書かれていた。

『電話応対取り止めの試験運用について』



「『この度行政改革ギルドでは、他のギルド員の質問に十全に回答すべく、様々なFAQ集を作成したり、利用者が自力で問題を解決できるようにサイトをリニューアルしたりして対応をして参りました。しかしながら、せっかくFAQ集を作成しても、利用者の皆様には閲覧頂くことなく電話で問合せをされる方が多く見られ、電話応対業務が負担となっております。そこで、一時的に電話による対応を中止させて頂きます。ギルド員の皆様にはご不便をおかけして大変申し訳ございませんが、FAQ集を活用しての問題解決にご協力をお願い申し上げます』ですって!?」

今回ザザが実行したのは、可能な限りシンプルに言えば『電話線を抜いた』ということに近い。『電話が大変なら、かかって来なければいい』という発想のもと、彼らに半強制的にFAQ集を活用させ、問題のセルフチェック&解決をさせているわけである。だが、それだけにはとどまらない。

「『電話の廃止に伴って、チャットbotの導入を致しました。ポータルサイト右下のチャットゾーンから質問を打ち込むことで、botが自動的に問題の解決策を案内してくれます。なお、質問はある程度の表記ゆれに対応しております(例 スマフォン……ケータイ、エイフォン、アンドロメイド等でも対応可能)。仮に質問の答えが満足のいく内容でない場合は、質問の内容を変えていただくようお願い致します』……。botって何かしら」

オツボネは内容をよく理解することは出来なかったが、とりあえず質問を書いて送ればいいということは理解した。早速聞いてみることにする。

「ええっと、botって何?っと、送信」
『botとは、自動化されたプログラム等を指します。このチャットbotでは、お客様がチャットに打ち込んだご質問に対し、プログラムが適切な答えを探して自動的に回答するシステムのことを言います』
「え!?もう返事が来た!随分早いわね!?なになに……なるほど、なんだかよくわからないけど、プログラムが返信してるってことなのね。最近の機械はすごいわね」

というハンパな理解をしているが、行政改革ギルドからすればこれでオーケーだ。電話がかかってくる回数を大幅に削減できれば、普段のコア業務に戻ることが出来るのだから。
さて、そんな事情は露知らず。オツボネは先程まで悩んでいた質問をすることにした。

「ええっと、インストールが上手くできない、っと」
『かしこまりました。どのアプリケーションのインストール方法が分からないか教えて下さい』
「勤怠管理システムね」
『勤怠管理システムは、こちらのインストール手順を参照して下さい』
「え?結局このサイトを見ろってこと?随分不親切ね」

と文句を垂れながらも、オツボネは渋々チャット欄に表示されたURLをクリックする。そこは、FAQ集のとあるページであった。ザザたちが作った300を超えるマニュアルのうちの1つである。当然オツボネはこんなサイトを見たこともない。しかし、質問する相手が電話に出ない以上、このサイトを見ながらインストールをするしかない。

「……これは、こうして」

オツボネもそういった人種に入るのだが、彼女たちには“調べる”という習慣がない為、調べ方すら分からない・知らないといった人間が多い。特に年配のジジイやババアは考え方が根本から異なり、“聞けば済むのに何で調べるの?”と心の底から思っているのだ。一方若年層は、逆に聞かない・質問をしないという傾向があり、それはそれで問題があるのだが、ともかく普段から検索をしている分こういった事象には強い。

「――をインストールする方法はどうしたらいいの?」
『こちらのサイトを参照して下さい』

また、普段検索をしない人間というのは、総じて“検索すれば出てくる質問”を聞きがちである。そして、ヘルプデスクにかかってくる電話の9割以上は、“検索すれば出てくる質問”だ。チャットbotを導入すれば、ほぼ9割以上の確率で問題は解決可能であるし、人間がそんな下らない質問に対応する必要もない。さらに、このbotはAIを導入しており、botに寄せられる様々な質問を集約して学習し、更なる対応の向上もすることができるのだ。二十対応や伝え漏れといった人的ミスもなくなり、すべての人が円滑に業務を進められるようになるメリットは大きい。

「あ、できた!インストールできたわ!!」

このように、パソコンの“パ”の字も知らないババア相手にも、ストレスを全くためることなく対応することができる。しかも24時間自動対応機能付きだ。担当者が回答するまでの待ち時間もなくなり、即時の応答をすることが出来る点も高評価である。

『その他、何かお困りなことはございますか?』
「ありがとう、解決、したわ、っと」
『問題が解決して何よりです。これからもチャットbotをよろしくお願い致します』
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