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第一話 ~春~ 再就職先は地獄でした。――いえ、比喩ではなく本当に。
天国で最初に出会ったのはコスプレ似非仙人でした。
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「ほっほっほっ。やあやあ、よく来たね。ここは日本天国庁入国管理局。文字通り、天国の入り口じゃよ」
「…………。……はあ、そうですか」
市役所の受付のようなカウンターで、禿頭に白髭の御老人が私に向かって微笑んでいます。
どうやら私、本当に死んでしまったようです。死んだ時の記憶もちゃんと残っていますので、わかってはいましたが。
で、死んでしまったから天国まで連れてこられたと……。
つまり、これが私の天国デビューということですか。嫌なデビューもあったものです。
(しかも、天国に来て最初にエンカウントしたのが、これとは……)
目の前のコスプレ似非仙人に憐みの視線を向けながら、心の中で溜息をつきます。
まあ、人生最後の読書通りに地獄へ落ちなかっただけ良しとしておきますかね。私が地獄に落ちるなど、絶対にありえないことではありますが。
「うむうむ……。まだ自分が死んだという実感がないのじゃな。無理もない。君のように若くして亡くなった人には、よくあることじゃ。時間はたっぷりあるから、ゆっくりと折り合いをつけていきなさい」
私が嘆息交じりに取り止めのない考え事をしていたら、御老人は労わるような口調で言葉を重ねてきました。
どうやらこの御老体、黙っている私を見て、何か勘違いをしているみたいですね。
私は自分の死を嘆いているわけでもなければ、受け入れられないでいるわけでもありません。
天国に来たと思ったら、いきなり頭が見た目中身共に残念系の老人に絡まれて、辟易としているだけです。
とはいえ、訂正するのもぶっちゃけ面倒くさいですしね。このまま勘違いさせておくことにしましょう。
省エネ、大事です。ついでに、目の前のヒヒジジイに対する動物愛護の精神というやつです。
「おっと、そう言えば自己紹介がまだだったのう。儂は白仙。この日本天国庁で、入国管理官を務める者じゃ」
「ああ、ご丁寧にどうも。私は天野宏美と申します」
豊かな白髭を撫でながら自己紹介するハゲ――じゃなくて、白仙さんへ向かって頭を下げます。
正直、頭の中身がアレな感じのコスプレ老人にしか見えませんが、一応年上です。礼儀は弁えておくことにしました。
「おやおや。これは、礼儀正しいお嬢さんじゃな。加えて、艶やかな黒髪の美人さんときた。いやはや、現世の男どもは惜しい人を亡くしたものじゃのう。ほっほっほっ」
「あははー。それはどうも~」
「ほっ?」
あら、いけない。私としたことが、ヒヒジジイのお世辞に対して、思わず斜向いて適当な受け答えをしてしまいました。
視線を戻すと、白仙さんが目をパチクリさせています。
ほう。これは意外と可愛らしい。オラウータンみたいです。
「それで白仙さん、天国の入国手続きとはどういうものなのでしょうか?」
「ん? ああ、そうじゃったな」
私が強引に話を戻すと、白仙さんは狐につままれたような表情のまま、入国管理のお仕事に戻られました。
「特に難しい手続きかあるわけじゃないから、安心なさい。ちょっと、天国のことを説明させてもらうだけじゃ」
「ああ、そうですか。なら、手早く済ませてくださいます?」
軽く首を傾けながら、笑顔で催促してみます。
それを見た白仙さんは、何だか諦めたような表情で、「なるほど、こういう子なわけか……」と溜息をつきました。
はて、どうしたのでしょう? 天国の役人とはいえ、いい年こいたジジイですからね。早くも息切れしてしまったのでしょうか。
「あ~、うん。わかった、わかった。では手早く済ませますかの。まず、この天国というところは――」
なぜか悟ったような雰囲気を纏って、お仕事を全うし始めた白仙さん。
これはこれで、何だかムカつく態度ですね。
本来ならお灸を据えたいところですけど、まあ今回は特別に許してあげましょう。
だって私も、聞く振りだけして頭の中では別のこと、有り体に言えば死んだ時のこと考えていたわけですから――。
「…………。……はあ、そうですか」
市役所の受付のようなカウンターで、禿頭に白髭の御老人が私に向かって微笑んでいます。
どうやら私、本当に死んでしまったようです。死んだ時の記憶もちゃんと残っていますので、わかってはいましたが。
で、死んでしまったから天国まで連れてこられたと……。
つまり、これが私の天国デビューということですか。嫌なデビューもあったものです。
(しかも、天国に来て最初にエンカウントしたのが、これとは……)
目の前のコスプレ似非仙人に憐みの視線を向けながら、心の中で溜息をつきます。
まあ、人生最後の読書通りに地獄へ落ちなかっただけ良しとしておきますかね。私が地獄に落ちるなど、絶対にありえないことではありますが。
「うむうむ……。まだ自分が死んだという実感がないのじゃな。無理もない。君のように若くして亡くなった人には、よくあることじゃ。時間はたっぷりあるから、ゆっくりと折り合いをつけていきなさい」
私が嘆息交じりに取り止めのない考え事をしていたら、御老人は労わるような口調で言葉を重ねてきました。
どうやらこの御老体、黙っている私を見て、何か勘違いをしているみたいですね。
私は自分の死を嘆いているわけでもなければ、受け入れられないでいるわけでもありません。
天国に来たと思ったら、いきなり頭が見た目中身共に残念系の老人に絡まれて、辟易としているだけです。
とはいえ、訂正するのもぶっちゃけ面倒くさいですしね。このまま勘違いさせておくことにしましょう。
省エネ、大事です。ついでに、目の前のヒヒジジイに対する動物愛護の精神というやつです。
「おっと、そう言えば自己紹介がまだだったのう。儂は白仙。この日本天国庁で、入国管理官を務める者じゃ」
「ああ、ご丁寧にどうも。私は天野宏美と申します」
豊かな白髭を撫でながら自己紹介するハゲ――じゃなくて、白仙さんへ向かって頭を下げます。
正直、頭の中身がアレな感じのコスプレ老人にしか見えませんが、一応年上です。礼儀は弁えておくことにしました。
「おやおや。これは、礼儀正しいお嬢さんじゃな。加えて、艶やかな黒髪の美人さんときた。いやはや、現世の男どもは惜しい人を亡くしたものじゃのう。ほっほっほっ」
「あははー。それはどうも~」
「ほっ?」
あら、いけない。私としたことが、ヒヒジジイのお世辞に対して、思わず斜向いて適当な受け答えをしてしまいました。
視線を戻すと、白仙さんが目をパチクリさせています。
ほう。これは意外と可愛らしい。オラウータンみたいです。
「それで白仙さん、天国の入国手続きとはどういうものなのでしょうか?」
「ん? ああ、そうじゃったな」
私が強引に話を戻すと、白仙さんは狐につままれたような表情のまま、入国管理のお仕事に戻られました。
「特に難しい手続きかあるわけじゃないから、安心なさい。ちょっと、天国のことを説明させてもらうだけじゃ」
「ああ、そうですか。なら、手早く済ませてくださいます?」
軽く首を傾けながら、笑顔で催促してみます。
それを見た白仙さんは、何だか諦めたような表情で、「なるほど、こういう子なわけか……」と溜息をつきました。
はて、どうしたのでしょう? 天国の役人とはいえ、いい年こいたジジイですからね。早くも息切れしてしまったのでしょうか。
「あ~、うん。わかった、わかった。では手早く済ませますかの。まず、この天国というところは――」
なぜか悟ったような雰囲気を纏って、お仕事を全うし始めた白仙さん。
これはこれで、何だかムカつく態度ですね。
本来ならお灸を据えたいところですけど、まあ今回は特別に許してあげましょう。
だって私も、聞く振りだけして頭の中では別のこと、有り体に言えば死んだ時のこと考えていたわけですから――。
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