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第一話 ~春~ 再就職先は地獄でした。――いえ、比喩ではなく本当に。
要求します。
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「――で、結局のところ、君はここまで何しに来たのかな?」
部屋の片付けが終わったところで、閻魔様が唐突の話を振ってきました。
何しに来たのかって――あっ! いけない、いけない。私としたことが、悪を成敗するのに夢中で、肝心の用件を忘れるところでした。
「今日は地獄分館のことに関して、報告とお願いに来たのですよ。人間大砲は、あくまでついでです」
「ついでで人間大砲をぶっ放された方は、たまったものではないのだが……」
閻魔様が再びうなだれてしまいました。
うーむ……。欠片も可愛くありませんね。
「私も実際にぶっ放すつもりはありませんでしたよ。本来は脅しに――じゃない、交渉に用いようと思って持ってきただけですので」
「今、『脅し』って言ったよね! 君、上司を脅しに来たわけ?」
泡を食った様子で閻魔様が捲し立ててきました。
まったく、キャンキャンうるさいですね。だからちゃんと『交渉』と言い直したのに。
「そこはお気になさらずに。とりあえず、まずは報告ですね。――地獄分館ですけど、片付けが一通り完了しました。破損した本の修理はこれからですが、とりあえず図書館としての体裁を保てる状態にはなっています」
「上司を脅そうとしたという事実は、十分気にすべきことだと思うけど……。ともあれ、ご苦労様。一カ月弱で片づけ終わるとは思わなかったよ。ありがとう」
「いえいえ。私だけでは、これほど早く終わらせることはできませんでした」
そう言って私が子鬼三兄弟を前に出すと、彼らも喜び勇んで仕事の報告を始めました。
「ぼくらもがんばった~!」
「がんばった~!」
「いいしごとした~!」
「うむうむ。君らも良く頑張ってくれた。ありがとう」
閻魔様が子鬼さん達の頭を順番に撫でていきます。
ただ、閻魔様の手が大き過ぎて、彼らの頭だけでなく顔面まですっぽりと覆ってしまっています。――子鬼さん達、若干苦しそうですね。
「ああ、そうだ。それで、『お願い』とは何かな?」
「ええと、ですね……。――では、まず一つ目。図書事務室内を拝見させてもらったところ、いろいろと足りない物品があることがわかりました。なので、ここに書いてあるものを買い足したいのですが、よろしいでしょうか?」
私は書き出してきた欲しいものリスト(A4用紙二枚分)を閻魔様に渡します。
リストを受け取った閻魔様は、そこに書かれた内容を確認しつつ、「ふむふむ……」と頷きました。
「なるほど、なるほど。本の背に貼る請求記号ラベルの補充に、あとは中性紙にでんぷん糊、楮紙――本の簡易補修用の道具か……。ふむ。これくらいなら通常の経費として落ちるから問題ないよ。注文の仕方は、後で兼定君に確認してくれ」
「承知いたしました。で、あともう一つお願いがあるのですが……」
「うん? 何かな?」
首を傾げる閻魔様に、私は持っていたもう一つの紙束を差し出しました。
「今回のピタゴラ騒動で、破棄せざるを得ない本が多数出ています。そこで、いくらか本を買い足したいと思いまして、追加予算をいただけないかと……」
「むう……。それはちょっと厳しいかな。三月の決算期なら予算の余ったところから融通とかもできるかもしれないが、今はまだ四月だしね」
紙束を眺めつつ、閻魔様が難しい顔で唸ります。
「何なら、閻魔様が自腹で出してくださっても一向に構いませんよ。紛いなりにも、地獄分館の館長さんですからね。わあ! 閻魔様、とってもクール!」
私が笑顔で催促する後ろで、子鬼三兄弟がテキパキと人間大砲兼定の第二射を準備し始めました。兼定さんも嬉々として砲門に転がり込んでいきますね。
「「「じゅんび、お~け~!」」」
「イエス! 砲弾、アゲイン! いつでも行けます!」
「だそうです。どうしますか、閻魔様?」
「ああ、もう! わかった、わかった。仕方ない。今回は地獄裁判所内における失態だしね。特別に図書費を一カ月分上乗せするようにしておこう。とりあえず、それで破棄したものと同じ分野の図書をいくらか賄っておいてくれ。あと、年末に予算の余裕ができたら、優先的に地獄分館へ回すようにする」
獄卒達が地獄分館を破壊したという負い目もあってか、閻魔様はあっさり折れました。
従順なのは良いことですね。
「ありがとうございます。――ところで閻魔様、地獄分館における本の購入方法は発注ですか? それとも見計らい?」
「ん? ああ、もちろん発注もできるし、娯楽書なんかは書店に見計らいを頼んでも構わないよ。何なら、自分で書店へ出向いて選んできてくれてもいい。前の司書もちょくちょく天国の大型書店に出向いていたからね」
「そうですか……。わかりました。とりあえず買わなければいけない本のリストを作ってから考えるようにします」
天国の本屋とは、なかなか魅力的なお出掛けスポットです。仕事とは別に、今度のお休みにプライベートで行くのもいいかもしれませんね。
部屋の片付けが終わったところで、閻魔様が唐突の話を振ってきました。
何しに来たのかって――あっ! いけない、いけない。私としたことが、悪を成敗するのに夢中で、肝心の用件を忘れるところでした。
「今日は地獄分館のことに関して、報告とお願いに来たのですよ。人間大砲は、あくまでついでです」
「ついでで人間大砲をぶっ放された方は、たまったものではないのだが……」
閻魔様が再びうなだれてしまいました。
うーむ……。欠片も可愛くありませんね。
「私も実際にぶっ放すつもりはありませんでしたよ。本来は脅しに――じゃない、交渉に用いようと思って持ってきただけですので」
「今、『脅し』って言ったよね! 君、上司を脅しに来たわけ?」
泡を食った様子で閻魔様が捲し立ててきました。
まったく、キャンキャンうるさいですね。だからちゃんと『交渉』と言い直したのに。
「そこはお気になさらずに。とりあえず、まずは報告ですね。――地獄分館ですけど、片付けが一通り完了しました。破損した本の修理はこれからですが、とりあえず図書館としての体裁を保てる状態にはなっています」
「上司を脅そうとしたという事実は、十分気にすべきことだと思うけど……。ともあれ、ご苦労様。一カ月弱で片づけ終わるとは思わなかったよ。ありがとう」
「いえいえ。私だけでは、これほど早く終わらせることはできませんでした」
そう言って私が子鬼三兄弟を前に出すと、彼らも喜び勇んで仕事の報告を始めました。
「ぼくらもがんばった~!」
「がんばった~!」
「いいしごとした~!」
「うむうむ。君らも良く頑張ってくれた。ありがとう」
閻魔様が子鬼さん達の頭を順番に撫でていきます。
ただ、閻魔様の手が大き過ぎて、彼らの頭だけでなく顔面まですっぽりと覆ってしまっています。――子鬼さん達、若干苦しそうですね。
「ああ、そうだ。それで、『お願い』とは何かな?」
「ええと、ですね……。――では、まず一つ目。図書事務室内を拝見させてもらったところ、いろいろと足りない物品があることがわかりました。なので、ここに書いてあるものを買い足したいのですが、よろしいでしょうか?」
私は書き出してきた欲しいものリスト(A4用紙二枚分)を閻魔様に渡します。
リストを受け取った閻魔様は、そこに書かれた内容を確認しつつ、「ふむふむ……」と頷きました。
「なるほど、なるほど。本の背に貼る請求記号ラベルの補充に、あとは中性紙にでんぷん糊、楮紙――本の簡易補修用の道具か……。ふむ。これくらいなら通常の経費として落ちるから問題ないよ。注文の仕方は、後で兼定君に確認してくれ」
「承知いたしました。で、あともう一つお願いがあるのですが……」
「うん? 何かな?」
首を傾げる閻魔様に、私は持っていたもう一つの紙束を差し出しました。
「今回のピタゴラ騒動で、破棄せざるを得ない本が多数出ています。そこで、いくらか本を買い足したいと思いまして、追加予算をいただけないかと……」
「むう……。それはちょっと厳しいかな。三月の決算期なら予算の余ったところから融通とかもできるかもしれないが、今はまだ四月だしね」
紙束を眺めつつ、閻魔様が難しい顔で唸ります。
「何なら、閻魔様が自腹で出してくださっても一向に構いませんよ。紛いなりにも、地獄分館の館長さんですからね。わあ! 閻魔様、とってもクール!」
私が笑顔で催促する後ろで、子鬼三兄弟がテキパキと人間大砲兼定の第二射を準備し始めました。兼定さんも嬉々として砲門に転がり込んでいきますね。
「「「じゅんび、お~け~!」」」
「イエス! 砲弾、アゲイン! いつでも行けます!」
「だそうです。どうしますか、閻魔様?」
「ああ、もう! わかった、わかった。仕方ない。今回は地獄裁判所内における失態だしね。特別に図書費を一カ月分上乗せするようにしておこう。とりあえず、それで破棄したものと同じ分野の図書をいくらか賄っておいてくれ。あと、年末に予算の余裕ができたら、優先的に地獄分館へ回すようにする」
獄卒達が地獄分館を破壊したという負い目もあってか、閻魔様はあっさり折れました。
従順なのは良いことですね。
「ありがとうございます。――ところで閻魔様、地獄分館における本の購入方法は発注ですか? それとも見計らい?」
「ん? ああ、もちろん発注もできるし、娯楽書なんかは書店に見計らいを頼んでも構わないよ。何なら、自分で書店へ出向いて選んできてくれてもいい。前の司書もちょくちょく天国の大型書店に出向いていたからね」
「そうですか……。わかりました。とりあえず買わなければいけない本のリストを作ってから考えるようにします」
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