41 / 77
第三話 ~秋~ 獄卒方、読書の秋って知っていますか? ――え? 知らない? なら、私がその身に叩き込んで差し上げます。
ここからは、本気の読み聞かせです♪
しおりを挟む
「こぶを付けられたいじわる爺さんは、泣きながら帰って行きましたとさ。おしまい……」
――パチパチパチパチ!
こぶとり爺さんを読み終えると、これまでで一番大きな拍手が多目的室を満たしました。
言わずもがな、子鬼さん達の拍手です。
どうやらこのおはなし会という企画は、彼らにとってかなりツボにはまるものだったようですね。近くの仲間といっしょにワイワイキャッキャと騒ぎながら、惜しみない拍手を送ってくれています。
いや~、称賛というものは何度浴びても気持ちが良いものですね。子鬼さん方、グッジョブです!
(それに引き換え、他の鬼共ときたら……)
子鬼さん達が集まった区画から視線を外し、他の鬼共へ目を向けます。そこで繰り広げられている光景に、私はニッコ~と笑みを深めました。
椅子にふんぞり返って、高いびきを掻いている赤鬼と青鬼。
おはなし会そっちのけで、ゲームの通信対戦を始めた天邪鬼達。
こちらには一瞥もくれず、スマホを一心不乱にいじり続けるサラリーマン風人型鬼。
etc.etc.……。
(ウフフフフ……)
最初は様子を見ようかと思いましたが、連中の度胸を買うことにしましょう。
ここからは……こちらも本気で行きます。
「ええ~、それでは次のお話に――といきたいところですが、退屈されている方も多々いらっしゃるご様子……」
朗読にまったく耳を傾けていなかった連中が、私の言葉に耳を傾け始めます。
アハハ! 連中の顔、揃いも揃って『わかっているなら帰らせてくれ』と書いてありますね。
おや、ブーイングを始めた輩もいますか。
ウフフ。皆さん、元気ですね。……反省の色、まったくなしです。
「そこで、ここからは趣向を凝らしまして……」
言葉に合わせ、パチンと指を鳴らします。
コンマ二秒で我が愛すべき部下、子鬼三兄弟が姿を現しました。
「……刺激に満ちた大人のおはなし会を始めましょう」
ニヤリと三日月型の笑みを浮かべ、私はもう一度パチンと指を鳴らしました。
それを合図に、とまとさんが手に持っていたリモコンのようなものを操作します。
「うわっ! 何だこれ!」
「椅子からベルトが!」
子鬼さんエリア以外のところから、驚きとも悲鳴とも取れる声が上がります。
突然椅子からベルトが伸びてきて手足を拘束されたのですから、驚くのは当然ですね。
これぞ、子鬼三兄弟、兼定さん、元不良コンビが夜なべして製作した、おはなし会用特製リクライニングチェアです。様々な機能を搭載してあり、座っている者の意志を問わずにおはなしを聞くサポートをしてくれます。
――って、おや? さっきまで高いびきを掻いていた赤鬼さんが、自慢の膂力を活かしてベルトを引きちぎろうとしていますね。
あらあら、そんな無茶をしたら……。
「あ、気をつけてくださいね。それ、無理に外そうとすると……」
「のおおおおおおおおおおっ!」
「高圧電流が流れますから。――って、遅かったですね」
煤で赤から黒に変わった元赤鬼さんを見下しつつ、クスクスと笑います。
今までギャーギャー騒いでいた一同も、まるで借りてきた猫のように大人しくなりました。とても良い心がけです。
「では、次のおはなしへ行きましょうか。――あ、そうそう。皆さんが座っている椅子、視線感知機能や脳波計測機能、重量感知機能、その他各種センサーが搭載されていますので、あしからず。私のおはなしから気を逸らすと、ちょっと刺激的な世界にトリップできますよ」
「「「ちょっと待て!」」」
私の言葉に反応して、会場の中からノリの良さそうなのが三人くらいツッコミを入れてきました。……全員ご丁寧に立ち上がろうとした上で。
あらら。重量感知機能もあると、忠告したばかりですのに。
「「「ぎゃああああああああああ!」」」
早速、重量感知センサーが反応。立ち上ろうとした三人の椅子から針が飛び出し、彼らのお尻を突き刺しました。
うわぁ……。見ているだけで痛そうですね。
「だから言ったじゃないですか。地獄裁判所が誇る最高の変態がプロデュースした椅子ですからね。彼が自ら実験体となって調整した甲斐あって、その椅子のセンサーは超高性能です。匠の技というやつですね。下手なことをしていると、本当に新しい世界が見えてしまいますよ」
今度こそ、社蓄共は微動だにしなくなりました。もはや借りてきた猫というよりは、物言わぬ石像です。
ああ、子鬼さんエリアは別ですよ。彼らは目をキラキラさせて、ドキドキワクワク状態で次のお話を待っています。これはこれでうれしいですね。
――って、うん?
あらまあ! よく見れば社蓄共、背筋までピンと伸ばして、おはなしを聞く準備万端ですね。
やっぱり皆さん、何だかんだ言ってもおはなし会に興味があったということなのでしょう。まったくここの社蓄共は、ツンデレさんばかりなんですから~♪
「では改めまして、二本目のおはなしにいってみましょう。二本目のおはなしは『泣いた赤鬼』です。――はい、拍手!」
――パチパチパチパチパチパチッ!!
多目的室全体に割れんばかりの拍手が鳴り響きます。いや~、鳴り止まない拍手に心が洗われる気分です。
「はい、ありがとうございます。私、今とっても気分がいいです」
「くっ……。何なんだ、この鬼畜女。まったくぶれねえ……」
「この女、本当に半年前まで現世で人間をやっていたのか? 可愛い顔して、中身は俺達よりもよっぽど清く正しく地獄の厳しさを体現していやがるじゃねえか……」
「今の現世は、萌えと猫耳とメイドに満ちたパラダイスだと思っていたのに! こんなのが蔓延る生き地獄だなんて……あんまりじゃねえか、ちくしょう……」
「……あら、いけない。手が滑りました」
ポチっとな。
『がふっ!』
とまとさんから受け取ったリモコンのボタンを操作すると、会場から三つの短い悲鳴が響きました。
見れば、三人の鬼達が頭にボーリング玉を受けて気絶しています。
運が悪かったですね。まさか装置の誤作動が起こるなんて。
「では、今度こそ始めます。――昔々、山の中に一人の赤鬼が住んでいました……」
まるで戦場にでもいるように張りつめた緊張感の中、私は朗々と次の読み聞かせを始めました。
――パチパチパチパチ!
こぶとり爺さんを読み終えると、これまでで一番大きな拍手が多目的室を満たしました。
言わずもがな、子鬼さん達の拍手です。
どうやらこのおはなし会という企画は、彼らにとってかなりツボにはまるものだったようですね。近くの仲間といっしょにワイワイキャッキャと騒ぎながら、惜しみない拍手を送ってくれています。
いや~、称賛というものは何度浴びても気持ちが良いものですね。子鬼さん方、グッジョブです!
(それに引き換え、他の鬼共ときたら……)
子鬼さん達が集まった区画から視線を外し、他の鬼共へ目を向けます。そこで繰り広げられている光景に、私はニッコ~と笑みを深めました。
椅子にふんぞり返って、高いびきを掻いている赤鬼と青鬼。
おはなし会そっちのけで、ゲームの通信対戦を始めた天邪鬼達。
こちらには一瞥もくれず、スマホを一心不乱にいじり続けるサラリーマン風人型鬼。
etc.etc.……。
(ウフフフフ……)
最初は様子を見ようかと思いましたが、連中の度胸を買うことにしましょう。
ここからは……こちらも本気で行きます。
「ええ~、それでは次のお話に――といきたいところですが、退屈されている方も多々いらっしゃるご様子……」
朗読にまったく耳を傾けていなかった連中が、私の言葉に耳を傾け始めます。
アハハ! 連中の顔、揃いも揃って『わかっているなら帰らせてくれ』と書いてありますね。
おや、ブーイングを始めた輩もいますか。
ウフフ。皆さん、元気ですね。……反省の色、まったくなしです。
「そこで、ここからは趣向を凝らしまして……」
言葉に合わせ、パチンと指を鳴らします。
コンマ二秒で我が愛すべき部下、子鬼三兄弟が姿を現しました。
「……刺激に満ちた大人のおはなし会を始めましょう」
ニヤリと三日月型の笑みを浮かべ、私はもう一度パチンと指を鳴らしました。
それを合図に、とまとさんが手に持っていたリモコンのようなものを操作します。
「うわっ! 何だこれ!」
「椅子からベルトが!」
子鬼さんエリア以外のところから、驚きとも悲鳴とも取れる声が上がります。
突然椅子からベルトが伸びてきて手足を拘束されたのですから、驚くのは当然ですね。
これぞ、子鬼三兄弟、兼定さん、元不良コンビが夜なべして製作した、おはなし会用特製リクライニングチェアです。様々な機能を搭載してあり、座っている者の意志を問わずにおはなしを聞くサポートをしてくれます。
――って、おや? さっきまで高いびきを掻いていた赤鬼さんが、自慢の膂力を活かしてベルトを引きちぎろうとしていますね。
あらあら、そんな無茶をしたら……。
「あ、気をつけてくださいね。それ、無理に外そうとすると……」
「のおおおおおおおおおおっ!」
「高圧電流が流れますから。――って、遅かったですね」
煤で赤から黒に変わった元赤鬼さんを見下しつつ、クスクスと笑います。
今までギャーギャー騒いでいた一同も、まるで借りてきた猫のように大人しくなりました。とても良い心がけです。
「では、次のおはなしへ行きましょうか。――あ、そうそう。皆さんが座っている椅子、視線感知機能や脳波計測機能、重量感知機能、その他各種センサーが搭載されていますので、あしからず。私のおはなしから気を逸らすと、ちょっと刺激的な世界にトリップできますよ」
「「「ちょっと待て!」」」
私の言葉に反応して、会場の中からノリの良さそうなのが三人くらいツッコミを入れてきました。……全員ご丁寧に立ち上がろうとした上で。
あらら。重量感知機能もあると、忠告したばかりですのに。
「「「ぎゃああああああああああ!」」」
早速、重量感知センサーが反応。立ち上ろうとした三人の椅子から針が飛び出し、彼らのお尻を突き刺しました。
うわぁ……。見ているだけで痛そうですね。
「だから言ったじゃないですか。地獄裁判所が誇る最高の変態がプロデュースした椅子ですからね。彼が自ら実験体となって調整した甲斐あって、その椅子のセンサーは超高性能です。匠の技というやつですね。下手なことをしていると、本当に新しい世界が見えてしまいますよ」
今度こそ、社蓄共は微動だにしなくなりました。もはや借りてきた猫というよりは、物言わぬ石像です。
ああ、子鬼さんエリアは別ですよ。彼らは目をキラキラさせて、ドキドキワクワク状態で次のお話を待っています。これはこれでうれしいですね。
――って、うん?
あらまあ! よく見れば社蓄共、背筋までピンと伸ばして、おはなしを聞く準備万端ですね。
やっぱり皆さん、何だかんだ言ってもおはなし会に興味があったということなのでしょう。まったくここの社蓄共は、ツンデレさんばかりなんですから~♪
「では改めまして、二本目のおはなしにいってみましょう。二本目のおはなしは『泣いた赤鬼』です。――はい、拍手!」
――パチパチパチパチパチパチッ!!
多目的室全体に割れんばかりの拍手が鳴り響きます。いや~、鳴り止まない拍手に心が洗われる気分です。
「はい、ありがとうございます。私、今とっても気分がいいです」
「くっ……。何なんだ、この鬼畜女。まったくぶれねえ……」
「この女、本当に半年前まで現世で人間をやっていたのか? 可愛い顔して、中身は俺達よりもよっぽど清く正しく地獄の厳しさを体現していやがるじゃねえか……」
「今の現世は、萌えと猫耳とメイドに満ちたパラダイスだと思っていたのに! こんなのが蔓延る生き地獄だなんて……あんまりじゃねえか、ちくしょう……」
「……あら、いけない。手が滑りました」
ポチっとな。
『がふっ!』
とまとさんから受け取ったリモコンのボタンを操作すると、会場から三つの短い悲鳴が響きました。
見れば、三人の鬼達が頭にボーリング玉を受けて気絶しています。
運が悪かったですね。まさか装置の誤作動が起こるなんて。
「では、今度こそ始めます。――昔々、山の中に一人の赤鬼が住んでいました……」
まるで戦場にでもいるように張りつめた緊張感の中、私は朗々と次の読み聞かせを始めました。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる