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第三話 ~秋~ 獄卒方、読書の秋って知っていますか? ――え? 知らない? なら、私がその身に叩き込んで差し上げます。
読書マラソン閻魔杯、スタートです!
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遂にやってきました、11月3日。読書週間最終日です。
地獄裁判所の前には、総勢300名余りの職員がおはなし会で配った本を片手に勢ぞろいしています。
全員、今日は一体何をするのかという顔をしていますね。
ウフフ。これは驚かせ甲斐があります。
では、早速行ってみましょう。
私は地獄裁判所の前に設置されたお立ち台に上り、マイクを片手に思いっきり空気を吸い込みました。
「皆さん、本日はお集まりいただき、どうもありがとうございます。では、長々しい挨拶は面倒なので抜きにして、早速本日のイベントを発表しましょう! 読書週間の最終日を飾るメインイベント。それは……」
私が溜めを作ると、裁判所前に集まった300人がシーンと静まり返りました。
ある子鬼さんは目を輝かせ、ある餓鬼さん達はまるで今生の別れのようにハグを交わし、ある赤鬼さんは遺書を手に天を仰いでいます。
ああ……。会場中から溢れる様々な感情に、思わず嗜虐的な笑みが――いえ、期待に応えようという前向きな笑みが漏れてしまいます。
さて、皆さんの反応も堪能しましたし、サクッと発表してしまいましょうか。
「読書の秋と運動の秋が強力コラボ! 走って読んで、ゲストもいるよ。第一回読書マラソン閻魔杯です!」
――バンッ!
地獄裁判所の外壁に、『第一回読書マラソン閻魔杯!』と書かれた横断幕が架けられました。
それを見て、ポカーンとする社蓄一同。
ああ、いや、子鬼さん達だけはピョンピョン飛び跳ねて、「わ~い!」とか言っていますね。本当に何をやっても喜ぶ子達です。素晴らしい!
「では、読書マラソン大会のルール説明をさせていただきます。今回の読書マラソンはここ、地獄裁判所をスタートして、全長42.195kmのコースを走破してもらいます」
「ハハハッ! なんだ、たかがフルマラソンじゃないか。心配して損したぜ!」
「俺達鬼にとっちゃ、準備運動程度の距離だな」
イベント内容が運動系とわかり、社蓄共が息を吹き返したように「軽い、軽い!」と威勢の良い声を上げ始めました。
地獄の方々は読書が苦手ですが、運動――特に走ることが大好きなのです。地獄に落ちた亡者を追いかけ回している彼らにとって、走ることは遺伝子レベルで刻み付けられた本能なのでしょう。
ですが――ただ走るだけと思ったら大間違いです。
「早合点してもらっては困りますね。この閻魔杯、読書マラソンという名を冠していることからもわかるように、走るだけの大会ではありません。コースには二カ所チェックポイントが用意されており、そこでは先日配った童話集に関するクイズが出されます。このクイズに正解しないと次に進めませんので、ご注意くださいね」
「な……んだ……と……」
「そんなの……ゴールできるわけないじゃねえか。なんだよ、この無理ゲー!!」
一転して、打ちひしがれるように膝をつく社蓄共。テンションのアップダウンが激しい方々ですね。これも地獄クォリティ?
まあ、彼らが童話集を読んでこなかったことなんて予想済みです。
なので……。
「安心してください。この問題はカンニングOKです。答えがわからなければ、その場で童話集を読んで、答えを探していいですよ」
「馬鹿な……。本を読めだなんて――グフッ!」
「俺達に何を期待しているんだ、この女。つうか、本なんて持って来てな――ガハッ!」
「これじゃあ、大会として成り立つわけねえ。この鬼畜司書、実は馬鹿なんじゃね――ゴホッ!」
「……とまとさん、ちーずさん、ばじるさん、そこに転がっている生ゴミ三つを片付けておいてください」
「「「あいさ~!」」」
心底驚いた表情で何アホなことを言っているのでしょうか、この無能共。
他の連中も口に出していないだけで、似たようなことを考えているのが丸わかりです。
さすがの私も、若干イラッとしますね。
いい度胸です。『本を読めない』なんてふざけた態度をいつまで続けられるか、とくと拝見させてもらうとしましょう。ウフフフフ……。
「――あ、そうそう。今大会にはゲストも呼んでいますよ。皆さんより五分遅れてスタートしますので、追いつかれないように頑張ってください。なお、ゲストがどんな方々かはスタートするまで秘密です。楽しみにしていてくださいね」
と、ここまでで本日のイベント説明は終了。鬼さん達は、ぞろぞろとスタート位置へと移動していきます。
皆さんの移動が終わったところで、スタートゲートの横に立った私は、空に向けて手を掲げました。
「それでは、読書週間最後のイベントを始めましょう! 第一回読書マラソン閻魔杯、位置について、よーい……」
――ドーンッ!
私が上げていた手を勢いよく振り下ろすと同時に、子鬼三兄弟が大砲をぶっ放します。
お腹の底に響く轟音をBGMにして、読書マラソンの火蓋が切って落とされました。
* * *
「いやー、300人が一気に走り出すと、地響きがすごいですね」
「「「じしん、じし~ん!」」」
誰もいなくなったスタート地点で、私と子鬼三兄弟は走り去る鬼達の背中を見つめました。
連中、体を動かすのが好きな上に負けず嫌いが多いようで、『ウォーッ!』という雄叫びを上げながら、ものすごい速さで走っていきました。あれで最後まで体力が持つのですから、鬼というのはどこまで脳筋ビルドなのでしょうかね。
「では、そろそろゲストさん方の準備をしましょうか。いきますよ、皆さん」
「「「は~い!」」」
鬼さん達の姿も見えなくなり、私達は次の準備に取り掛かりました。
例のトレーラーを移動させ、コンテナをコースの方へ向け駐車します。トレーラーを運転したのは初めてですが、何とかなるものですね。
そのまま時間が来るまで、しばし待機。
タイマーの数字がゼロになったタイミングで……。
「とまとさん、ちーずさん、ばじるさん、お願いしまーす」
「「「あいさ~!」」」
子鬼三兄弟へ指示を出し、ゲストをコンテナから解き放ちました。
さあ、ここからが閻魔杯の本当の本番です。
一体どうなることやら。
ウフフフフ……♪
地獄裁判所の前には、総勢300名余りの職員がおはなし会で配った本を片手に勢ぞろいしています。
全員、今日は一体何をするのかという顔をしていますね。
ウフフ。これは驚かせ甲斐があります。
では、早速行ってみましょう。
私は地獄裁判所の前に設置されたお立ち台に上り、マイクを片手に思いっきり空気を吸い込みました。
「皆さん、本日はお集まりいただき、どうもありがとうございます。では、長々しい挨拶は面倒なので抜きにして、早速本日のイベントを発表しましょう! 読書週間の最終日を飾るメインイベント。それは……」
私が溜めを作ると、裁判所前に集まった300人がシーンと静まり返りました。
ある子鬼さんは目を輝かせ、ある餓鬼さん達はまるで今生の別れのようにハグを交わし、ある赤鬼さんは遺書を手に天を仰いでいます。
ああ……。会場中から溢れる様々な感情に、思わず嗜虐的な笑みが――いえ、期待に応えようという前向きな笑みが漏れてしまいます。
さて、皆さんの反応も堪能しましたし、サクッと発表してしまいましょうか。
「読書の秋と運動の秋が強力コラボ! 走って読んで、ゲストもいるよ。第一回読書マラソン閻魔杯です!」
――バンッ!
地獄裁判所の外壁に、『第一回読書マラソン閻魔杯!』と書かれた横断幕が架けられました。
それを見て、ポカーンとする社蓄一同。
ああ、いや、子鬼さん達だけはピョンピョン飛び跳ねて、「わ~い!」とか言っていますね。本当に何をやっても喜ぶ子達です。素晴らしい!
「では、読書マラソン大会のルール説明をさせていただきます。今回の読書マラソンはここ、地獄裁判所をスタートして、全長42.195kmのコースを走破してもらいます」
「ハハハッ! なんだ、たかがフルマラソンじゃないか。心配して損したぜ!」
「俺達鬼にとっちゃ、準備運動程度の距離だな」
イベント内容が運動系とわかり、社蓄共が息を吹き返したように「軽い、軽い!」と威勢の良い声を上げ始めました。
地獄の方々は読書が苦手ですが、運動――特に走ることが大好きなのです。地獄に落ちた亡者を追いかけ回している彼らにとって、走ることは遺伝子レベルで刻み付けられた本能なのでしょう。
ですが――ただ走るだけと思ったら大間違いです。
「早合点してもらっては困りますね。この閻魔杯、読書マラソンという名を冠していることからもわかるように、走るだけの大会ではありません。コースには二カ所チェックポイントが用意されており、そこでは先日配った童話集に関するクイズが出されます。このクイズに正解しないと次に進めませんので、ご注意くださいね」
「な……んだ……と……」
「そんなの……ゴールできるわけないじゃねえか。なんだよ、この無理ゲー!!」
一転して、打ちひしがれるように膝をつく社蓄共。テンションのアップダウンが激しい方々ですね。これも地獄クォリティ?
まあ、彼らが童話集を読んでこなかったことなんて予想済みです。
なので……。
「安心してください。この問題はカンニングOKです。答えがわからなければ、その場で童話集を読んで、答えを探していいですよ」
「馬鹿な……。本を読めだなんて――グフッ!」
「俺達に何を期待しているんだ、この女。つうか、本なんて持って来てな――ガハッ!」
「これじゃあ、大会として成り立つわけねえ。この鬼畜司書、実は馬鹿なんじゃね――ゴホッ!」
「……とまとさん、ちーずさん、ばじるさん、そこに転がっている生ゴミ三つを片付けておいてください」
「「「あいさ~!」」」
心底驚いた表情で何アホなことを言っているのでしょうか、この無能共。
他の連中も口に出していないだけで、似たようなことを考えているのが丸わかりです。
さすがの私も、若干イラッとしますね。
いい度胸です。『本を読めない』なんてふざけた態度をいつまで続けられるか、とくと拝見させてもらうとしましょう。ウフフフフ……。
「――あ、そうそう。今大会にはゲストも呼んでいますよ。皆さんより五分遅れてスタートしますので、追いつかれないように頑張ってください。なお、ゲストがどんな方々かはスタートするまで秘密です。楽しみにしていてくださいね」
と、ここまでで本日のイベント説明は終了。鬼さん達は、ぞろぞろとスタート位置へと移動していきます。
皆さんの移動が終わったところで、スタートゲートの横に立った私は、空に向けて手を掲げました。
「それでは、読書週間最後のイベントを始めましょう! 第一回読書マラソン閻魔杯、位置について、よーい……」
――ドーンッ!
私が上げていた手を勢いよく振り下ろすと同時に、子鬼三兄弟が大砲をぶっ放します。
お腹の底に響く轟音をBGMにして、読書マラソンの火蓋が切って落とされました。
* * *
「いやー、300人が一気に走り出すと、地響きがすごいですね」
「「「じしん、じし~ん!」」」
誰もいなくなったスタート地点で、私と子鬼三兄弟は走り去る鬼達の背中を見つめました。
連中、体を動かすのが好きな上に負けず嫌いが多いようで、『ウォーッ!』という雄叫びを上げながら、ものすごい速さで走っていきました。あれで最後まで体力が持つのですから、鬼というのはどこまで脳筋ビルドなのでしょうかね。
「では、そろそろゲストさん方の準備をしましょうか。いきますよ、皆さん」
「「「は~い!」」」
鬼さん達の姿も見えなくなり、私達は次の準備に取り掛かりました。
例のトレーラーを移動させ、コンテナをコースの方へ向け駐車します。トレーラーを運転したのは初めてですが、何とかなるものですね。
そのまま時間が来るまで、しばし待機。
タイマーの数字がゼロになったタイミングで……。
「とまとさん、ちーずさん、ばじるさん、お願いしまーす」
「「「あいさ~!」」」
子鬼三兄弟へ指示を出し、ゲストをコンテナから解き放ちました。
さあ、ここからが閻魔杯の本当の本番です。
一体どうなることやら。
ウフフフフ……♪
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