45 / 77
第三話 ~秋~ 獄卒方、読書の秋って知っていますか? ――え? 知らない? なら、私がその身に叩き込んで差し上げます。
ゲストさん、大活躍です。
しおりを挟む
ドスンドスンという大きな足音を響かせ、ゲストがコースを走っていきます。社蓄共に続き、ゲスト達の姿を見送った私は、「よしよし」と頷きながら次の行動に移りました。
「さて、それでは彼らを追いかけるとしましょう。皆さん、準備は良いですか?」
「ししょー、きんとうん、おーるぐりーん!」
「いつでもとべる~!」
「ご~、ご~!」
「わかりました。では、いきましょうか」
用意してあった筋斗雲(中国天国仙人公司製、輸入品)に乗り込み、すぐに離陸。もはや地平線の彼方へ走り去った職員達とゲストを追います。
それにしても快適な乗り物ですね、これ。
静かで揺れず、何より速い。最高です。
さて、飛び立ってしばらくすると、このような声が聞こえてきました。
「何だ、この地響きは!」
「お、おい! 後ろを見ろ!」
「あ……あれは……」
どうやらゲストが社蓄達の下位グループを捉えたようです。
ドスンドスンと地鳴りを起こしながら近づいてくる二頭のゲストを目に留め、社蓄共がまるでギャグマンガのように目を見開き、顎を落としました。
「「グルルルルルルァッ!」」
「「「ティラノサウルスだーっ!」」」
諸手を上げ、全力疾走で逃げ出す社蓄共。
彼らを後ろから、歓喜の雄叫びを上げて追いかけるティラノサウルス。
アハハ。愉快、愉快。
「いや~、驚いてる、驚いてる」
追いかけっこを筋斗雲の上から眺め、私は『ドッキリ大成功!』のプラカードを掲げながらほくそ笑みました。
そう。これこそが、私の仕掛けたサプライズ。皆さんに大ハッスルしてもらうために画策した、スリル満点の粋な計らいというやつです。
まあ、油断するとガチで食われますが……。
「皆さーん、驚いてくれましたかー?」
持参した拡声器を使い、全力疾走で逃げる職員達に声を掛けます。
上空にいる私に気付いた社蓄共は、一斉に騒ぎ始めました。
「てめーっ! やっぱりこれ、てめえの仕業か!」
「なんつうもん連れて来てやがんだ! 殺す気か!」
「つうか、俺もそれに乗せてください、マジで!」
皆さん楽しんでくれているようで何よりです。
なお、今回のコースですが、ほぼすべて崖道、もしくは谷底の道です。
地滑り・崖崩れの心配はなく、道幅自体もそれなりにありますが、ゴールまでの全行程において逃げ道なし。余すことなくこのスリルを味わい尽くせる仕様となっています。
――おや? そうこうしている内に最初のチェックポイントが見えてきましたね。
チェックポイント付近は、まだクイズに正解できていない百名近い社蓄共でごった返しています。
その端にいる羅刹さん数名が、視界の片隅にティラノサウルスの姿を捉えました。
「うぉ! 何だあれ、ティラノサウルス?」
「お、おい、やべえぞ! さっさと問題解かねえと――リアルに食われる!」
「ちくしょう! シンデレラは一体何を城に落としていったんだ!」
皆さん、クイズに苦労しているみたいですね。
あいつら、職場をシンデレラ城に改装したくせに、何で元ネタの童話を知らないのでしょう……。
ただ、この集団に子鬼さん達の姿は見受けられません。皆さん、無事に正解したようですね。
あの愛くるしく素直な子鬼さん達がいないなら、残りはどうなろうと知ったことではありません。良かった、良かった。
「ちょっ! 宏美君、何てものコースに放ってるの! ――ていうか、もしかしなくても儂が一番ピンチ!」
職員達に交じって、チェックポイントの監視員である閻魔様も何か喚いていますね。
全員が通過しないと監視員は撤収できませんから、ある意味当然ですけど。
「閻魔様、ファイト~」
「うわっ! 心にもない応援!」
なお、チェックポイントの前には特殊な装置が設置されていて、クイズを正解せずに通ろうとすると、高圧電流が流れる仕掛けとなっています。
これもメイド・イン・兼定さんです。どういう仕掛けか聞いたら何やらオーバーテクノロジーじみたことを言っていましたが、あの変態がすることですから今更驚きません。
「おい、全員で手分けして正解を探すぞ!」
「おう! じゃあ俺は一ページを読む!」
「なら、オレは二ページだ」
「いや! もうこの際だから、儂が正解を教え――ぎゃああああああああああ!」
ウフフ。閻魔様ったら、ダメですよ。ズルをしようとしたら、装置から監視員の腕章に雷が落ちてしまいますからね。
「あった! みんな、五十六ページだ!」
「よくやった、同士よ! ――では諸君、いくぞ! せーの……」
「「「ガラスの靴!」」」
「せ……正解……」
真っ黒こげになった閻魔様が、這う這うの体で丸印のプラカードを上げます。
にしても、野太い声で『ガラスの靴』と合唱する鬼達って、シュールですね~。
「よし! 全員、全速前進!」
「「「オーッ!」」」
「ぎゃああああああああああ! 儂を踏んでいくな~!」
鬼達に踏まれて蹴られて、ズタボロのボロ雑巾になった閻魔様がコースに転がります。
私、リアルに踏んだり蹴ったりな人、初めて見ました。
――ん? おやおや?
「閻魔様~、後ろ、危ないですよ」
「へ? ――ほぎゃ!」
私の忠告を聞いた閻魔様が、音速の壁を越えて後退ります。
直後、閻魔様が元いた場所をティラノサウルスの牙が通り過ぎました。
「お~た~す~け~!」
「閻魔様~、頑張って~」
閻魔様って、ブタみたいに肥えている割には素早いですよね。ティラノサウルス達の牙を機敏に躱しています。
まあ、この分なら食われることはないでしょう。
筋斗雲の上からハッスルする上司へエールを送り、私は先を急ぐことにします。
「ちょっ! 宏美君、儂も乗せてよ! ――うぉ! 牙かすった!」
「ダイエットですよ~、閻魔様。では、私達は先を急ぎますので~」
「この人でなしーっ! ――うぎゃああああああああああ! た~べ~ら~れ~る~っ!!」
ティラノサウルスとじゃれる閻魔様を微笑ましく見守りつつ、私達は筋斗雲のスピードを上げました。
「さて、それでは彼らを追いかけるとしましょう。皆さん、準備は良いですか?」
「ししょー、きんとうん、おーるぐりーん!」
「いつでもとべる~!」
「ご~、ご~!」
「わかりました。では、いきましょうか」
用意してあった筋斗雲(中国天国仙人公司製、輸入品)に乗り込み、すぐに離陸。もはや地平線の彼方へ走り去った職員達とゲストを追います。
それにしても快適な乗り物ですね、これ。
静かで揺れず、何より速い。最高です。
さて、飛び立ってしばらくすると、このような声が聞こえてきました。
「何だ、この地響きは!」
「お、おい! 後ろを見ろ!」
「あ……あれは……」
どうやらゲストが社蓄達の下位グループを捉えたようです。
ドスンドスンと地鳴りを起こしながら近づいてくる二頭のゲストを目に留め、社蓄共がまるでギャグマンガのように目を見開き、顎を落としました。
「「グルルルルルルァッ!」」
「「「ティラノサウルスだーっ!」」」
諸手を上げ、全力疾走で逃げ出す社蓄共。
彼らを後ろから、歓喜の雄叫びを上げて追いかけるティラノサウルス。
アハハ。愉快、愉快。
「いや~、驚いてる、驚いてる」
追いかけっこを筋斗雲の上から眺め、私は『ドッキリ大成功!』のプラカードを掲げながらほくそ笑みました。
そう。これこそが、私の仕掛けたサプライズ。皆さんに大ハッスルしてもらうために画策した、スリル満点の粋な計らいというやつです。
まあ、油断するとガチで食われますが……。
「皆さーん、驚いてくれましたかー?」
持参した拡声器を使い、全力疾走で逃げる職員達に声を掛けます。
上空にいる私に気付いた社蓄共は、一斉に騒ぎ始めました。
「てめーっ! やっぱりこれ、てめえの仕業か!」
「なんつうもん連れて来てやがんだ! 殺す気か!」
「つうか、俺もそれに乗せてください、マジで!」
皆さん楽しんでくれているようで何よりです。
なお、今回のコースですが、ほぼすべて崖道、もしくは谷底の道です。
地滑り・崖崩れの心配はなく、道幅自体もそれなりにありますが、ゴールまでの全行程において逃げ道なし。余すことなくこのスリルを味わい尽くせる仕様となっています。
――おや? そうこうしている内に最初のチェックポイントが見えてきましたね。
チェックポイント付近は、まだクイズに正解できていない百名近い社蓄共でごった返しています。
その端にいる羅刹さん数名が、視界の片隅にティラノサウルスの姿を捉えました。
「うぉ! 何だあれ、ティラノサウルス?」
「お、おい、やべえぞ! さっさと問題解かねえと――リアルに食われる!」
「ちくしょう! シンデレラは一体何を城に落としていったんだ!」
皆さん、クイズに苦労しているみたいですね。
あいつら、職場をシンデレラ城に改装したくせに、何で元ネタの童話を知らないのでしょう……。
ただ、この集団に子鬼さん達の姿は見受けられません。皆さん、無事に正解したようですね。
あの愛くるしく素直な子鬼さん達がいないなら、残りはどうなろうと知ったことではありません。良かった、良かった。
「ちょっ! 宏美君、何てものコースに放ってるの! ――ていうか、もしかしなくても儂が一番ピンチ!」
職員達に交じって、チェックポイントの監視員である閻魔様も何か喚いていますね。
全員が通過しないと監視員は撤収できませんから、ある意味当然ですけど。
「閻魔様、ファイト~」
「うわっ! 心にもない応援!」
なお、チェックポイントの前には特殊な装置が設置されていて、クイズを正解せずに通ろうとすると、高圧電流が流れる仕掛けとなっています。
これもメイド・イン・兼定さんです。どういう仕掛けか聞いたら何やらオーバーテクノロジーじみたことを言っていましたが、あの変態がすることですから今更驚きません。
「おい、全員で手分けして正解を探すぞ!」
「おう! じゃあ俺は一ページを読む!」
「なら、オレは二ページだ」
「いや! もうこの際だから、儂が正解を教え――ぎゃああああああああああ!」
ウフフ。閻魔様ったら、ダメですよ。ズルをしようとしたら、装置から監視員の腕章に雷が落ちてしまいますからね。
「あった! みんな、五十六ページだ!」
「よくやった、同士よ! ――では諸君、いくぞ! せーの……」
「「「ガラスの靴!」」」
「せ……正解……」
真っ黒こげになった閻魔様が、這う這うの体で丸印のプラカードを上げます。
にしても、野太い声で『ガラスの靴』と合唱する鬼達って、シュールですね~。
「よし! 全員、全速前進!」
「「「オーッ!」」」
「ぎゃああああああああああ! 儂を踏んでいくな~!」
鬼達に踏まれて蹴られて、ズタボロのボロ雑巾になった閻魔様がコースに転がります。
私、リアルに踏んだり蹴ったりな人、初めて見ました。
――ん? おやおや?
「閻魔様~、後ろ、危ないですよ」
「へ? ――ほぎゃ!」
私の忠告を聞いた閻魔様が、音速の壁を越えて後退ります。
直後、閻魔様が元いた場所をティラノサウルスの牙が通り過ぎました。
「お~た~す~け~!」
「閻魔様~、頑張って~」
閻魔様って、ブタみたいに肥えている割には素早いですよね。ティラノサウルス達の牙を機敏に躱しています。
まあ、この分なら食われることはないでしょう。
筋斗雲の上からハッスルする上司へエールを送り、私は先を急ぐことにします。
「ちょっ! 宏美君、儂も乗せてよ! ――うぉ! 牙かすった!」
「ダイエットですよ~、閻魔様。では、私達は先を急ぎますので~」
「この人でなしーっ! ――うぎゃああああああああああ! た~べ~ら~れ~る~っ!!」
ティラノサウルスとじゃれる閻魔様を微笑ましく見守りつつ、私達は筋斗雲のスピードを上げました。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる