はい、こちら黄泉国立図書館地獄分館です。

日野 祐希

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最終話 ~冬~ え? 神様方が地獄分館を取り潰そうとしている? ウフフ……。ならば私が、彼らに身の程というものを教えてあげるとしましょう。

勝利宣言です。

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「じゃが、この一問で負けを認めれば、勝負自体の負けにつながる。地獄分館の閉鎖と宏美達の解雇も取り消しじゃ。久延毘古、それでもよいのじゃな?」

「私も納得の上で受けた勝負です。仕方ありません。この娘を司書として置き続けるなど誠に業腹ではありますが……今回の勝負は私の負けです」

 久延毘古くえびこ氏の言葉に、伊邪那美いざなみ様も納得した様子で再び頷きます。
 ウフフ。これで私の勝ちが確定♪
 地獄分館は閉鎖されず、私達も解雇されません。
 めでたし、めでたし、というわけですね。

 ――と思ったら……。

「お……お待ちください。そうは言いましても伊邪那美様、来年度の予算は地獄分館をないものとして組み立てています。それをどうするおつもりですか?」

 勝敗に納得できなかったのか、商議員の一人が食い下がりました。
 チッ! 腰巾着の分際で往生際の悪い。手下は手下らしく、ボス猿の決定に大人しく従えばいいものを……。

「あん? 何じゃ、いいところで水を差しおってからに」

 ただ、そこはお気楽極楽主義の伊邪那美様です。何のことはないという口調であっさり切り返します。

「そんなもん、金森を数日徹夜させて組み直させれば良かろう。あの仕事の虫なら、『また武勇伝ができる!』と喜んでやるじゃろうよ。ついでに特別ボーナスでも出してやればバッチリじゃ」

「で、では、アメリカ天国議会図書館へはどのように筋を立てるおつもりですか? さすがにこの娘を処分せずに収まるものではありませんよ!」

「そうじゃのう……。――おい、道真と閻魔! お主ら、ちょっとアメリカへ飛んで頭下げて来い。ジャパニーズ土下座の恐ろしさを見せてやれ」

「ハハハ。いいでしょう。アメリカで日本の心を見せてきます」

 土下座して来いという伊邪那美様の無茶苦茶な要求を、道真館長は朗らかに笑って即快諾してくださいました。
 超かっこいいですね、この館長。これぞ正に館長の鏡、ミラー・オブ・館長です。痺れます、憧れます。私なら絶対にやりませんが。

(さすがの私も館長に頭を下げさせることには若干の罪悪感を覚えますが……。これも致し方ないことですね。すべては私がこの図書館に居続けるためです。館長には、ちょっと一肌脱いでもらいましょう。道真館長、ファイトです!)

 良い上司の手本のような姿を見せてくれる館長に、心からの応援を送ります。

 ――それに比べて……。

「ええ! 儂もですか!?」

 うちのヒゲは、この期に及んで何を言っているのでしょうか。潔さの欠片も見当たりません。館長の漢気おとこぎを見た後だと、尚更かっこ悪いことこの上ない。

「あん? 何じゃ、閻魔。文句でもあるのか? 元はと言えば、お前んとこの問題じゃろうが。部下の不始末は上司の監督不行届きでもあるのじゃぞ」

「いや、確かにそうですが……」

「わかったらさっさとアメリカ天国へ行って、そのたるんだ腹でも掻っ捌いてこい」

「謝罪のグレードが上がった!」

 愕然とする閻魔様の前で、伊邪那美様が「ほい、決定!」と手を打ちました。 これでアメリカ天国議会図書館からのクレームの件は万事OKですね。
 何やら閻魔様が「宏美君がもう一人増えたみたい……」と、わけのわからないことをほざいていますけど、決定は決定です。男らしくアメリカでジャパニーズ・ハラキリを披露してきてもらいましょう。きっと大ウケですね。

「――というわけじゃ。これで、会計もアメリカの苦情もスッキリ解決。もはや何の問題もあるまい」

「ぐっ……。…………はい」

 伊邪那美様がにんまり笑って異議を出した商議員を見ると、彼も他に反論材料がないのか、すごすごと引き下がります。これで異論を挟む者はいなくなったと判断したのか、伊邪那美様は改めて大会議室内にいる全員を見回しました。

 そして……。

「ふむ。他に反論はないようじゃな。では改めて……。――今回の勝負は一勝二引き分けで地獄分館側の勝ちじゃ! よって、取り決めに従い、地獄分館の閉鎖と職員の解雇は白紙。本件について宏美達の責任は問わないものとする!」

 伊邪那美様が遂に、私達の勝利を宣言しました。
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