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カイゼル髭最強伝説
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「こちらが私がお仕えするお屋敷です」
「うわ~、でっけ~」
俺は万桜号のフロントガラス越しに小高い丘の上に立つ屋敷を見つめ、感嘆の声を漏らした。
屋敷は見たところ石造りの三階建て。何部屋あるんだろうなって考えたくなるくらいの横幅があるな。ついでに風光明媚な景色の中に溶け込む意匠は、金掛けてんな~の一言だ。
つうかあれ、屋敷というより小さな城だろ。
なんか大きさは別として、昔写真で見たバッキンガム宮殿やヴェルサイユ宮殿に通じるものを感じるぞ。
貴族か王様か? ここのご主人。
「いえ、旦那様は爵位などをお持ちでありません。ただ、旦那様は貿易を生業としておりまして、一代でこの富を築いた、ここら一帯では並ぶ者のいない名士なのです」
そりゃそうでしょうね。街の面積の1/3近くを占めるこの丘全部と、さらにその後ろに見える山々が、すべて所有地って言うんだから。
まったくどんだけ稼いでんだろうね、アイラさんのご主人様。
とまあ、そんなことはさておき、万桜号を走らせてえんやこらと丘を登る。
屋敷に近づいていくと、さらにその大きさがよくわかるな。改造マイクロバスである万桜号が、軽くミニカーに思えてくる。
「ヨシマサさん、今日は送っていただき、本当にありがとうございました」
「いやいや、これくらいお安い御用です。旅は道連れ世は情けと言いますからね」
ペコリと頭を下げるアイラさんに軽く手を振る。
なんかもう、アイラさんに手を出そうって気は完全に失せました。
ナーシアさんの時もそうだが、涼しい顔で車並の馬力出しちゃう女子は、さすがに俺の手に余ります。
最悪、人間同士なのに交通事故ですよ。
命がいくつあっても足りない……。
というわけで、そろそろお暇しようかな~なんて思っていた、その時だ。
「――おや、アイラ。今日は少し早かったようだね」
「あ、旦那様」
屋敷の方から聞こえてきた落ち着いた声に、アイラさんが振り返る。
つられて俺もそっちを見てみれば、初老のオッサンがこっちに向かって歩いてきていた。
ふむ。
カイゼル髭が似合う、なかなかダンディなオッサンだ。
オマケに超マッチョ。
腕なんて丸太くらいあるし、胸板でスーツはち切れそうだし……。
つうか、この世界にもスーツあるんだな。
ともあれ、さすがは一代で富を築いた実業家。色んな意味ですごそうだ。
「それで、こちらの方々は?」
「はい。お使いの帰りにお会いした旅の方々です。親切にも、ここまで送ってくださったのですよ」
「ほう……。それはそれは……」
事情を聞いたおっさんが、俺たちの前にやって来る。
なぜだろう。
近寄られただけで気温が上がった気がする。
超暑苦しい。
「はじめまして、私はカイゼルと申します。この度はうちのものが大変お世話になりました。主として、感謝いたします」
無茶苦茶礼儀正しくお礼されました。
多分に暑苦しいが、そこはさすが社長。ちゃんと礼儀というものを弁えているようだな。感心感心。(←なぜかとっても上から目線)
てか、名前がカイゼルかよ、このオッサン。名は体を表すって言うけど、ここまでガチガチに表したやつ見るのは初めてだわ。
――と、それはおいといて。
相手が礼を尽くしているのだ。
ここは俺も、真面目モードで応じざるを得ないだろう。
というわけで、顔をキリッと男前にして……。
「ハハハ。いえ、お気になさらずに。これも紳士の嗜みですので」
「おいヨシマサ、紳士の前に『変態』を付け忘れておるぞ」
黙らっしゃい!
親切に間違いを教えるフリして、俺を貶めようとするな。
「これから街道に戻られてはすぐに夜になってしまうでしょう。せめてものお礼に、本日は我が屋敷に逗留なさってください」
「それは有り難い。では、お言葉に甘えさせていただきます」
ハハハ、と白い歯を見せて笑うカイゼル氏と握手を交わす。
――ギリギリギリ……。
ちょっ!
カ、カイゼル氏、握力強すぎ。
俺の右手、白魚のように繊細なので、できれば宝石を扱うように扱ってください。
「情けないのう。握手くらいでワタワタしおって」
「んじゃあ、てめえもやってみろ!」
右手が解放されたところですかさずセシリアの右手を掴み、カイゼル氏の手の中に滑り込ませる。
「ハハハ、麗しのレディよ。どうぞよろしく」
「あだだだだだ! 放さんかバカモノ!」
即涙目になってカイゼル氏の割れたあごを蹴り上げるセシリア。
やっべ、どうしよう……、と思ったが、どういう鍛え方をしているのかカイゼル氏はビクともしない。
逆にセシリアがつま先を押さえてうずくまった。
「ハハハ。元気のいいお嬢さんですな。やはり子供はこうでなくては!」
俺の肩をバンバンと叩きながら豪快に笑うカイゼル氏。
すみません。肩の関節が外れそうなんですが……。
とりあえず、医者を呼んでもらってもいいでしょうか。
「うわ~、でっけ~」
俺は万桜号のフロントガラス越しに小高い丘の上に立つ屋敷を見つめ、感嘆の声を漏らした。
屋敷は見たところ石造りの三階建て。何部屋あるんだろうなって考えたくなるくらいの横幅があるな。ついでに風光明媚な景色の中に溶け込む意匠は、金掛けてんな~の一言だ。
つうかあれ、屋敷というより小さな城だろ。
なんか大きさは別として、昔写真で見たバッキンガム宮殿やヴェルサイユ宮殿に通じるものを感じるぞ。
貴族か王様か? ここのご主人。
「いえ、旦那様は爵位などをお持ちでありません。ただ、旦那様は貿易を生業としておりまして、一代でこの富を築いた、ここら一帯では並ぶ者のいない名士なのです」
そりゃそうでしょうね。街の面積の1/3近くを占めるこの丘全部と、さらにその後ろに見える山々が、すべて所有地って言うんだから。
まったくどんだけ稼いでんだろうね、アイラさんのご主人様。
とまあ、そんなことはさておき、万桜号を走らせてえんやこらと丘を登る。
屋敷に近づいていくと、さらにその大きさがよくわかるな。改造マイクロバスである万桜号が、軽くミニカーに思えてくる。
「ヨシマサさん、今日は送っていただき、本当にありがとうございました」
「いやいや、これくらいお安い御用です。旅は道連れ世は情けと言いますからね」
ペコリと頭を下げるアイラさんに軽く手を振る。
なんかもう、アイラさんに手を出そうって気は完全に失せました。
ナーシアさんの時もそうだが、涼しい顔で車並の馬力出しちゃう女子は、さすがに俺の手に余ります。
最悪、人間同士なのに交通事故ですよ。
命がいくつあっても足りない……。
というわけで、そろそろお暇しようかな~なんて思っていた、その時だ。
「――おや、アイラ。今日は少し早かったようだね」
「あ、旦那様」
屋敷の方から聞こえてきた落ち着いた声に、アイラさんが振り返る。
つられて俺もそっちを見てみれば、初老のオッサンがこっちに向かって歩いてきていた。
ふむ。
カイゼル髭が似合う、なかなかダンディなオッサンだ。
オマケに超マッチョ。
腕なんて丸太くらいあるし、胸板でスーツはち切れそうだし……。
つうか、この世界にもスーツあるんだな。
ともあれ、さすがは一代で富を築いた実業家。色んな意味ですごそうだ。
「それで、こちらの方々は?」
「はい。お使いの帰りにお会いした旅の方々です。親切にも、ここまで送ってくださったのですよ」
「ほう……。それはそれは……」
事情を聞いたおっさんが、俺たちの前にやって来る。
なぜだろう。
近寄られただけで気温が上がった気がする。
超暑苦しい。
「はじめまして、私はカイゼルと申します。この度はうちのものが大変お世話になりました。主として、感謝いたします」
無茶苦茶礼儀正しくお礼されました。
多分に暑苦しいが、そこはさすが社長。ちゃんと礼儀というものを弁えているようだな。感心感心。(←なぜかとっても上から目線)
てか、名前がカイゼルかよ、このオッサン。名は体を表すって言うけど、ここまでガチガチに表したやつ見るのは初めてだわ。
――と、それはおいといて。
相手が礼を尽くしているのだ。
ここは俺も、真面目モードで応じざるを得ないだろう。
というわけで、顔をキリッと男前にして……。
「ハハハ。いえ、お気になさらずに。これも紳士の嗜みですので」
「おいヨシマサ、紳士の前に『変態』を付け忘れておるぞ」
黙らっしゃい!
親切に間違いを教えるフリして、俺を貶めようとするな。
「これから街道に戻られてはすぐに夜になってしまうでしょう。せめてものお礼に、本日は我が屋敷に逗留なさってください」
「それは有り難い。では、お言葉に甘えさせていただきます」
ハハハ、と白い歯を見せて笑うカイゼル氏と握手を交わす。
――ギリギリギリ……。
ちょっ!
カ、カイゼル氏、握力強すぎ。
俺の右手、白魚のように繊細なので、できれば宝石を扱うように扱ってください。
「情けないのう。握手くらいでワタワタしおって」
「んじゃあ、てめえもやってみろ!」
右手が解放されたところですかさずセシリアの右手を掴み、カイゼル氏の手の中に滑り込ませる。
「ハハハ、麗しのレディよ。どうぞよろしく」
「あだだだだだ! 放さんかバカモノ!」
即涙目になってカイゼル氏の割れたあごを蹴り上げるセシリア。
やっべ、どうしよう……、と思ったが、どういう鍛え方をしているのかカイゼル氏はビクともしない。
逆にセシリアがつま先を押さえてうずくまった。
「ハハハ。元気のいいお嬢さんですな。やはり子供はこうでなくては!」
俺の肩をバンバンと叩きながら豪快に笑うカイゼル氏。
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