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冷蔵庫
しおりを挟むある晩、私はひとりで家にいました。時刻は既に深夜過ぎ、街の喧騒は静まり返っていました。気が付くと、私は腹が減っていたので、冷蔵庫を覗いて食べ物を探しました。
冷蔵庫の扉を開けると、中にはいくつかの食材と冷凍食品が入っていました。しかし、一番奥にある一つの小さな袋に目が留まりました。それは、私が全く覚えがないような古びた紙に包まれた冷凍食品でした。
不思議に思いつつも、私はその袋を手に取り、紙を解いてみると、そこには古びた手紙が現れました。手紙を開くと、中にはぼやけた文字で次のように書かれていました。
「君へ。これを見ているときには、私はもうこの世にいないかもしれない。私の唯一の願いは、私の過去を知ってもらうこと。この冷凍食品には、私の幸せだった頃の記憶が詰まっている。君にはこれを食べて、私の過去を体験してほしい。どうか、私の思いを受け取ってくれ。」
手紙の内容に戸惑いながらも、私はなぜか不思議な気持ちになりました。そして、何故かその冷凍食品を食べることに決めました。
食べる前に、私は周囲を確認してから一口食べました。すると、突然に部屋が明るくなり、私は自分が知らない場所にいるような感覚に襲われました。
そこは私の家ではなく、古びた家具が並ぶ部屋でした。そして、そこには私とは別の人物がいました。彼は幸せそうに微笑んでいて、私の知らない幸せな過去の一場面が目の前に広がりました。
その人物の姿を見つめるうちに、私は彼が過去の私の親であることに気付きました。彼の傍らには幼い私の姿があり、家族みんなが笑顔で幸せに暮らしている様子が映し出されました。
しかし、喜びと同時に、私の心には不安もよぎりました。何故、こんな幸せな過去を知らなかったのか? なぜ、こんな記憶を封印してしまったのか?
次第に、映像は暗転し、再び私の部屋に戻りました。私はその場にただ立ち尽くし、考え込むばかりでした。
冷蔵庫の中にしまっておくべきだった過去とは、果たしてどのようなものだったのか。そして、あの手紙を書いた人物は、一体誰だったのか。
それ以降、私は冷蔵庫を開けることが怖くなりました。そこには自分の知らない過去が詰まっているかもしれないという不安が常に胸をよぎりました。しかし、一度知ってしまった過去の一部は、永遠に私の心に刻まれたままでした。
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