REM-夢を渡る少女-

しぃ

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第3話

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4章 
 綾瀬正義は善人であった。正しくは善人であろうとしていたというのだろうか。
 彼を認識してまだ2日程度だが、それでも私は彼を善人と認識していた。
 まるで病的なそれは見ていて不愉快ですらあった。そう思えるほどに彼は善意を振りまいていた。それはもう半額バーゲンセールなんてものではなく訪問販売のようで善意の押し売りと言っても差し支えは無いだろう。
 やらない善よりやる偽善と言う言葉を耳にしたことがあるが、それは程度にもよるのだと実感した。現に私は彼の一挙手一投足が鼻につき、ストレスの許容値が限界を迎えようとしていた。

私たちは学校近くの公園で今晩、成田和也の夢に入り込むことを約束し、駅へと向かって歩き出した。最後まで協力するかはまだ決めていないが、実際今晩私はどうなるのかということは気になっていた。
公園の外灯が点き始めたことで、私はあたりが暗くなりかけていることに気付いた。 
 太陽が沈み、夜はあたりを黒に染めた。月は雲に呑まれ外灯の明かりだけが私たちの行く先を知らせてくれた。もともと都会に住んでいたので引っ越してきて、私は田舎の夜に驚いた。外灯が少なく非常に暗いのだ。駅までの道は流石に整備されており、真っ暗なところはないが、私も一応は女子なので夜に暗い道を歩くことには心細さを感じる。はずなのだが、私の中は不快感でいっぱいで心細さなど皆無だった。目の前を歩く男がポイ捨てされたタバコや空き缶を目に付く限り拾ったり、落し物をわざわざ交番に届けたりと、見せ付けるように善人ぶるのである。
「少し冷えてきたな。寒くないか。」
 などと細やかな気配りまでされ、逆に背筋がゾクゾクした。
 まるで漫画の主人公のように善良な少年を演じようとしていて気持ちが悪かった。
「ねぇ。それどうにかならないの。」
「病気みたいなもんなんだ。気にしないでくれ。」
 自覚症状はあるのか。それはそれでやっかいだなと思いつつ、彼の善行をどうにかする術は無いかと思案していた。
 彼が自分で病気と言ったことから何らかの信念があり、それに従っていることは理解できた。むしろ彼は病気と言う言葉を使い自分を卑下することで言外にそうさせたのだろう。綾瀬正義と言う人間は実は私が思っているよりも聡い人間なのかもしれない。
 彼がどうして人助けやその他多くの善行を始めたのかはわからない。他人に指摘されても曲げない信念ということは彼もまた何らかのトラウマを抱えているのだろう。まぁ他人のトラウマなんて知りたくも無いけど。他人の秘密なんてもう懲り懲りだ。
 あくまで想像ではあるが、そこまで理解できたとて私のイライラはどうすることもできない。だってもう限界超えそうだし。なんなら超えてるといっても過言ではないだろう。なのに絶えているのは私がひと回り人間として成長しているからではないだろうか。ご褒美にコンビニでプリンを買って帰ろう。そして早く帰って美味しいご飯を食べて寝よう。まあ寝るとまたコイツと夢で顔を合わせることになるんですけど。なんなの?ねぇなんなのこれ?
もやもやとしていると彼が問いを投げてきた。
「一之瀬。お前は人助けについてどう思う。」
それは直球ではなく見せ球であろう変化球だった。その問いへの返答次第で次の一手を決めかねていると考えられた。場合によっては長い長い自分語りが始まる恐れもある。そんなのには付き合ってられない。だってプリンが待ってるからね。まだ買ってないけども。などと考えつつ見せ球を見送ると、まだバッターボックスで構えてもいないのに二投目を投げてきやがった。
「ちょっと聞いて欲しいことがあるんだ。俺が中学生だったときにクラスでいじめがあったんだけどさ。」
「ターイム。」
 口を開けたままあほ面になっている彼に私は笑顔で答えてあげた。
「興味なし。」
 今回の笑顔には120点をつけてもいいだろう。私もかなり愛想が良くなったものだ。こんなに笑顔を安売りして大丈夫だろうか。彼の善意と違って私の笑顔はプレミアがついてもおかしくないのだ。そもそも非売品である。学校で笑ったことないし。学校でももっと笑った方がいいのかしらと考えていると、
「そうか。悪かったな。また今度にするよ。じゃあまた夢で。」

 と別れの挨拶のつもりだろうか。他人が聞くとなんだこのバカップルはと思われるような恥ずかしい台詞を吐いて先に改札へと駆けて行った。改札を通る彼の姿が見えなくなるまで見送り、一緒の電車になりたくないので近くの書店へと向かうことにした。また今度ってなんだよ。勘弁してください。お願いします。
気になっていた本を購入し満足して帰宅した私だが、食後のプリンを買い忘れ悲しい気分のままベッドに入ることとなった。プリン食べたい・・・。
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